頑張る都市近郊農業~横浜市の取り組み

日韓市民社会フォーラム2010の参加者が、横浜市青葉区における農業の実践の取り組みを学んだ。

神奈川 2010年10月2~3日の2日間にわたり、日韓市民社会フォーラム2010が東京と横浜で開催された。日韓市民社会フォーラムは、2002年に始まり、韓国と日本を交互に訪問しながら、両国の市民社会が直面する共通の課題について議論を深めてきた。

 10月2日に開催された分科会の一つ、「地域づくり」をテーマにした分科会では、日韓約30名の市民が、横浜市青葉区の市民農園や水田保存奨励事業、そして、障がい者と共に農作業を行う「グリーン農園」などを訪問し、日本における都市近郊農業の最前線を学んだ。

 43,000haの広さをもつ横浜市では、現在3,231haが農地となっており、年間100億円の農業生産がある。横浜市は、1965年に2,530haの農村地域に30万人が暮らすニュータウンを建設する「港北ニュータウン構想」をスタートさせた。戦後20年で農地が半分にまで減少したことを受けてのものだが、この構想を進めるにあたり、(1)乱開発の防止、(2)計画的都市農業の確立、(3)市民参加のまちづくりを理念とし、230haが農業専用地区に指定された。

 そのため、港北ニュータウンでは、大都市でありながら農地と隣接した住環境が残ることとなっている。東京の多摩ニュータウンが、農地を残さずに住宅を建設したために、現在は農地のまったくない地域になっているのとは対照的である。

 また、都市農業を維持させていくために、市民が農家から農地を借りて野菜作りを楽しみながら農家の農業経営の支援にもなる市民農園事業を横浜市では始めている。「栽培収穫体験ファーム」と言って、全国に先駆け1993年にスタートさせたものだが、2009年3月現在で、市内に92農園(12.6ha)開設されている。その一つ、今回訪れた「がしゃぽん農園」でも、親子で和気あいあいと農作業にいそしむ姿を見ることができた。正に都市近郊農業である。

 農業の担い手は全国的に減少する一方だが、こうした取り組みが歯止めになる可能性は大きい。栽培収穫体験ファームに集った人びとが新たなコミュニティをつくり、援農者を育てることにつながっているという。大都市における農業の新たな挑戦を垣間見ることができ、参加者にとっては有意義な一日となったようだ。

【筆者】廣瀬稔也(HIROSE, Toshiya) / 東アジア環境情報発伝所 / 寄稿 /  [J10100801J]
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地域のために(2)~山形県寒河江市での農法

土耕栽培へのこだわりと成果

山形 農業もまた他の産業と同じように、技術は日進月歩である。その中で自分なりのこだわりと技術を持つ人は多い。今回、学校の研修で山形県の寒河江地域に行った。そこでバラ農園を経営するHさんは、まさにこだわりを持つ農家の一人である。

 水耕栽培という農法をご存じだろうか。土を使わず溶液を根の部分に直接流し、栽培する農法のことである。資材費がかかるが、土壌の地力に頼ることなく栽培を行うことができる。イチゴの観光農園やバラ栽培で拡大中の農法であり、現在ではバラ栽培総面積の半分近くがこの農法による。

 しかし、Hさんはあえて「土耕栽培」にこだわる。ひとえに消費者のために、である。土耕栽培で育てたバラは水上りが良く、日持ちがいい。消費者の声に耳を傾けた結果、土耕栽培を選んだのだ。ハウス内の環境は手探りで少しずつ研究を行い、今ようやく自分が理想とする環境にたどり着けたとHさんはいう。そして、そんなHさんを支える人がいる。

 Hさんは2代目の農家経営者である。お父さんから農地を引き継ぎ、今では一人の経営者となっている。そのお父さんは、私たちが見学している前でも元気に仕事をしていた。経営を早い段階から息子に譲り、ずっとHさんを支えてきたのだ。農業は経営手腕、そして技術が必要な職業である。後継者の育成には必然、時間がかかる。早い段階から責任と義務感を負わせ、それを影から支える人が必要なのだ。

 日本では戦後から『農家の農地は次の代の子供が受け継ぐ』という習慣が形作られ、法律の整備も進んできた。しかし、結果として日本の農家はほとんどが零細企業となっている。近年では、農業の「法人化」が進むように環境が整えられつつあるが、まだまだハードルは高い。

 これからの農業の発展には新しいアイディアとセンス、そしてこだわりを持った担い手が必要だ。昨今の農業を見直す動きから、私の学ぶ大学校でも多くの人材が育っている。その一人ひとりが思い思いの農家経営をできる環境、法整備が進んでいくことを願っている。

バラ栽培のハウスの様子

【筆者】山口 究(YAMAGUCHI, Kiwamu) / 新潟県農業大学校 園芸経営科 果樹専攻 / 寄稿 /  [J10080602J]
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日本のごみ事情(2)

生ごみリサイクルの取り組み事例について

栃木 日本における生ごみの排出量は、年間およそ2,000万トン。そのうち、家庭から出る分は半分の約1,000万トンと推定されている。生ごみをいかに減らすかは、昔から国民的な課題だが、地域を挙げて生ごみを減らす取り組みが増えているのも事実だ。

 今回はNPO法人有機農産物普及・堆肥化推進協会により作成されたビデオ「生ごみ堆肥で地産地消」から、栃木県の3つの町での生ごみリサイクル活動を紹介する。

1.栃木県高根沢(たかねざわ)町―土づくりセンターが街づくりの要

 高根沢町の人口は3万人で、生ごみ排出量は3トン/日、年間で約900トンに上る。

 堆肥の専用施設「土づくりセンター」での堆肥原料は、生ごみに畜糞尿(5,100トン/年)、もみがら(1,200トン/年)を加えたもので、年間2,550トンの堆肥製品を生産している。

 消費者、土づくりセンター、農業者の三者の循環を大事にした取り組みが特徴で、例えば、施設は散布車も用意して、農家からの希望があれば堆肥の散布まで手伝う。堆肥を使って栽培された農家の野菜は、地域の拠点型店舗「たんたんプラザ」で販売される。また、学校給食で地産の野菜を食べている子どもたちは、土づくりのレベルから食べ物を理解するとともに、おいしい野菜が生ごみからできたことを学んでいる。

2.栃木県芳賀(はが)町―地産地消の取り組み

 芳賀町の人口は17,000人で、生ごみ排出量は3トン/日、年間で約900トンである。

 堆肥施設「ドンカメ堆肥センター」で原料としているのは、生ごみ、畜糞(1,500トン/年)、おかくず(300トン/年)、戻し堆肥(600トン/年)で、年間1,200トンの堆肥製品が生産できる。

 学校の生ごみ→堆肥→農家の栽培、収穫→町の食育推進センター→商業組合などのルートを経て、学校で給食として出されるという資源の循環と食の循環を推進している。堆肥で栽培された野菜が給食で使われるようになってから、味がよくなったと好評で、食べ残しは一人10グラム以下になったそうだ。

3.栃木県茂木(もてぎ)町―地域資源を堆肥に変え、安全でおいしい農産物を栽培

 茂木町の人口は16,000人。上記2町と同じく生ごみ排出量は3トン/日、年間で約900トンになる。

 茂木町堆肥施設「美土里館」(みどりかん)で原料としているのは、生ごみ、牛糞、落ち葉、モミガラ、おかぐずの5種類で、年間1,350トンの堆肥製品を生産している。茂木町の山には間伐材や落ち葉がたくさんあるが、落ち葉は1袋(15~20kg)を400円で美土里館が買い取り、資源循環が進むとともに、農家にとっては副収入になっている。

 落ち葉は発酵菌をたくさん含んでいるので堆肥の発酵を促進することができ、またおかぐずは水を吸収する役割を果たす。堆肥づくりは、農家が使いやすい物になるよう心がけ、地域の資源循環システム化を目指して取り組んでいる。施設運営は2,000万円ぐらいの赤字になることもあるが、生ごみを焼却しないことで1,800万円を削減でき、さらに山がきれいになる、農家はおいしい野菜が作られる、もみがらを回収するのでまた助かる、などのメリットがあるそうだ。

参照リンク)

・NPO法人 有機農産物普及・堆肥化推進協会
 http://www.taihika-kyokai.or.jp/

・高根沢町びれっじセンター(土づくりセンター)
 http://www.birejji.org/

・茂木町美土里館
 http://www.town.motegi.tochigi.jp/motegi/nextpage.php?cd=17&syurui=0&lev=1&hidchangemoji=2

・食品リサイクルの現状(環境省)
 http://www.env.go.jp/recycle/food/02_current.html

【筆者】朴 梅花(Piao, Meihua) / 東アジア環境情報発伝所 / 寄稿 /  [J10072301J]
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地域のために(1)~新潟県柏崎市高柳での実践

自分ひとりだけが潤えば良いとするのではなく、地域全体のためを考える、という理念

新潟 高柳地区の冬は雪に覆われ、年間で農作業を行えるのはごく短い期間に限られています。また山間地という地域性から、単品目を大量に作る農法は向いていません。

 農業をするには環境が厳しい高柳ですが、20年ほど前から地域づくりをはじめ、環境教育にも力を入れています。首都圏からIターンし、自分の店を構える人も少なくありません。今回の研修ではSさんのもとで、地域のための活動とは何かを学ばせていただきました。

 まず驚かされたのが、地元小学生たちの『食育』の環境です。子供達は事前に話し合い、どのような作物をどのように育てるかを計画します。そして計画に従い農業を実践した成果を発表する仕組みです。我々農業大学校の学生が行うことを、彼らは小学生のうちに経験しています。

 『自然体験活動』もあります。自然豊かな高柳に都会の子供たちが宿泊にやって来て現地を体験する、正に言葉通りの活動です。かやぶき屋根の家が彼らの宿泊場所。夜は民家に出向き、おじいちゃん、おばあちゃんの話に耳を傾けます。

 「お客さんが来たと思うと皆かたくなるけど、友達や仲間が来たと思えば気軽に出迎えられるでしょ」とSさんは言います。相手の学校と少しずつ作り上げていった信頼関係が、高柳の環境教育(エコツアー)を支えています。

 なぜこれだけ地域に密着した活動ができるのでしょうか? その答えはすぐにわかりました。Sさんの周囲にはとにかく人が多く、Sさんの経営するライスセンターには、たくさんの人が訪ねて来ます。逆に出かける先々でSさんはいろいろな場所に立ち寄ります。そこにいる一人ひとりの方との厚い信頼関係が感じられました。それが答えです。

 地域住民との信頼関係を根とし、さらにお客さんとの信頼関係を築く。それがやがて旅行で訪れる人々との友情に発展し、地域をより強くしていくのだと思います。

 私の地元も山間地にあり、今では過疎の進んだ土地となってしまいました。過疎化対策として、6年ほど前から環境教育旅行が企画され、町おこしが試みられています。高級リゾート地のようなホテルもプールもありません。けれど、自然の恵みと地元の人々の温かみがあります。高柳地区のように農村の良さが活きてくれば、訪れる人も増えていくでしょう。

 私は今回Sさんから、人間の輪を大事にすること、地域の特色を活かすことを学びました。自分ひとりだけが潤えば良いとするのではなく、地域全体のためを考える、という理念がそこにはあると思います。これからはそうした観点で農業を考えていきたいと感じました。

【筆者】山口 究(YAMAGUCHI, Kiwamu) / 新潟県農業大学校 園芸経営科 果樹専攻 / 寄稿 /  [J10070202J]
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未来の農業は都市型になるのか?

話題の「植物工場」、その利点と課題とは

日本全土 今年の日本は3~5月にかけて、日照が極端に少なく、天候不良が続いた。その結果、野菜の収穫が不安定になり、スーパーなどでは野菜の値段が高騰した。日本は島国であり、土地が狭く、天候の影響を受けやすい。台風などの自然災害、最近よく聞く冷夏や暖冬などは野菜に大きな影響を与える。また、日本は食料自給率が50%を切っており、野菜が不作になった場合、市場価格に敏感に反映し、庶民の生活に大きな影響を与える。

 野菜の安定供給のため、現在、日本政府は植物工場の普及・拡大をサポートしている。特に農林水産省はその普及に向けて、技術や資金面で様々な支援をしている。政策目標として2011年までに、植物工場の野菜重量当たりの生産コストを3割削減し、植物工場の数を100か所増やすなどの計画をしている。資金面でも「強い農業づくり交付金」では24,416百万円を出している。また経済産業省でも、植物工場を後押ししており、同省では今年6月26日から「先進的植物工場推進事業費補助金」の公募を開始する。

 植物工場は一体どういうものか。閉鎖または半閉鎖的な空間内において植物を計画的に生産するシステムである。植物工場は閉鎖的な空間で太陽光を使わない「完全人工光型」(現在日本全国34か所)と温室など半閉鎖的環境で野菜を栽培する「太陽光利用型」(現在日本全国15か所)との2種類に分けられる。その特徴は土壌を使わず、培養液で育成することにある。また二酸化炭素などを人工的に与えることによって、二酸化炭素飢餓を防ぐ効果もある。

 植物工場は天候に左右されないため、一年を通じて野菜などの安定供給が可能になる。価格、品質、生産量も一定にできる。雑菌が全くないに等しく、洗浄が要らない。当然、農薬も要らない。完全な有機農産物でもあって、単位面積当たりの生産量が非常に高い。露地栽培は平面上で栽培しているが、植物工場は立体的な栽培ができるため、単位面積生産量が飛躍的に伸びるという。24時間フル稼働により、短期間で育て上げることができるため、短期間の出荷も可能になる。さらに、(1)工場化により、新たな雇用が生まれ、(2)露地栽培の重労働から解放され、(3)完全自動化により、労働負担が劇的に減少でき、(4)土地などを取得しにくい会社、NPOなど異業種からの農業への参入が可能、などの利点もある。

 課題として最たるものは、施設設置費用と運用費用が莫大であることだ。植物工場の運営コストは1,860億円との試算もある。一般農家が参入するのには無理があるのだ。植物工場で生産できる野菜の品種がまだ非常に乏しく、現在は主にリーフレタスなどの葉菜類や、一部のハーブ類に限られている点も課題である。植物工場は完全閉鎖状態であり、作業員も半導体生産工場並みの防塵服を着て作業している。そのため、万が一雑菌が工場内の空気あるいは培養液に入った場合、連鎖感染により、全工場の植物が一気に全滅する可能性がある。太陽光の代わりにランプを使用するため、温度調整などで莫大な光熱費がかかることも難点である。LED導入で大幅にコストダウンできるようになってきたが、まだまだ高額である。

 日本公庫が行ったアンケート調査(後記)によると、植物工場で栽培される野菜の認知度は約7割で、通常の野菜と比べ「見た目」や「安全性」で優位、「おいしさ」などで劣るとの結果が出た、とされる。約6割は植物工場の野菜に割高感を感じていることもわかった。

 こうした結果や課題を踏まえ、植物工場のあり方と、未来の農業の本当の姿を考えなければならない。完全人工光型より、太陽光利用型の植物工場の方が割安という見方もある。今後の方向性として十分検討に値するだろう。

参考リンク)

・日本政策金融公庫(日本公庫)農林水産事業部門 各種アンケート
 http://www.afc.jfc.go.jp/information/investigate.html

・植物工場の普及・拡大に向けて(農林水産省)
 http://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/plant_factory/index.html

植物工場の例

ビル内でコメ作りをしている会社もある

【筆者】洪 石峰(Hong,Shifeng) / 東アジア環境情報発伝所 / 寄稿 /  [J10061802J]
【翻訳】]]>

中国の専門家が遺伝子組み換え作物推進の暫時停止を呼びかけた

3月10日、曹南燕、蒋高明、江暁原、劉兵ら科学者が「遺伝子組み換え作物の暫時停止の呼びかけ」を発表

中国全土 2009年11月27日、農業部の所属機関である国家農業遺伝子組み換え生物安全委員会が、2品種の遺伝子組み換えイネ、1品種の遺伝子組み換えトウモロコシの安全証書を発布した。これは、中国が将来、世界において遺伝子組み換え作物の商業化を進める国になるということを意味している。しかし、この安全証書は十分な論証を経て交付されたのではなく、もし、遺伝子組み換え作物の商業化を制止するという思い切った措置がとられなければ、我が国の食品安全と食料主権は大きな打撃を受ける。この懸念は、以下の考えによるものである。

 第一に、新しく批准される遺伝子組み換え作物について、中国は中核となる専売特許を擁していない。他の国の例をみると、一旦商業化されれば高額な権利費を要求される可能性があり、我が国の農業の多国籍企業への依存を引き起こすことになる。これは、我が国の食料主権に「時限爆弾」を埋めるようなものだ。

 第二に、遺伝子組み換え証明がない作物の生産量が増加する。食料生産量を決定する要素は複雑で、農業生産系統に影響する条件の中では、気候、土壌、肥料、灌漑、品種など多くの要素がある。品種はその中のひとつのポイントに過ぎない。現在中国の食料生産を制約している主な原因は人為的・生態的原因で、品種の問題だけではない。イネの害虫問題は通常の植物保護の方法によって解決できる。アメリカは遺伝子技術において最も早く、多くを掌握した国だが、耕地は中国より多いものの、アメリカの食料総生産量は中国には遠く及ばない。中国の農作物の単位面積産量も、アメリカより多い。遺伝子組み換え作物を広めることは、必ずしも中国の食料増産を保証するものではないのだ。

 第三に、遺伝子組み換え作物は人類の健康と、生態環境に対して潜在的危険がある。動物と人間の食用遺伝子組み換え作物の安全性問題は、専門家によって違った実験結果があり、未だ定説はなく、現在のところ危険がないと認定するのは時期尚早である。袁隆平院士※によると、遺伝子組み換えによる抗虫コメは試食してはじめて安心して食べられる。組み換え遺伝子は、自然に交配したものではなく、自然界にもともと存在しないもので、人間の意志によって合成された人工生物なのである。変化した遺伝子が自然界で拡散し、繁栄し、複製するかどうか、またこれによって後戻りできない結果を生み出すかどうかは、現在のところ予測できないのだ。

 第四に、食料問題は私たちの孫の代まで続く、国家経済と国民生活にかかわる問題で、私たちは当然それについてよく知る権利がある。現在おかしなことに、遺伝子組み換えイネの専門家と部局が、さまざまな数値を選択・利用して、国民に遺伝子組み換えイネの安全性を保証すると宣伝しており、また、遺伝子組み換えに反対するものは生物学知識がないと断言していることで、遺伝子組み換え食品に「恐怖症」が広がっている。しかし、遺伝子組み換え作物については巨大な利益共同体が形成されていて、その中にはいくつかの多国籍企業も含まれ、遺伝子研究の専門家も相当数いる。よって、遺伝子組み換え問題に関して、専門家は自分たちの観点が客観的で、公正であるとは保証できない。このような国民の重大な利益と生態系の危険にかかわる問題に対して、当事者達は国民に自分とこの問題に利益関係があるかどうかを明らかにすべきだ。

 私たちは政府部局に、国民が非遺伝子組み換え食品を求めることを十分に尊重するように求める。また、消費者の遺伝子組み換え作物に対する信頼が出来上がっておらず、専門家の間でも未だ高度な共通認識ができていないことから、遺伝子組み換え食品の推進を暫定的に猶予することを要求する。

 中国は勢いのある大国であり、農業政策は世界に大きな影響力を持っている。少しでも間違いがあれば、世界の農業がドミノ式に倒れる引き金となる可能性があり、隠れた危険性を持った遺伝子組み換え品種の批准と推進には慎重になるべきであり、生態系に大きな責任がある大国としての意識を持たなければいけない。

 科学的探索はもちろん重要だが、国民の食品安全と生態系の安全はさらに重要である。

※院士・・・中国科学院および中国工程院の会員。科学技術分野での最高の名誉称号。

【筆者】環境友好公益協会 / 環境友好公益協会 / 寄稿 /  [C10031601J]
【翻訳】中文和訳チームB班  久保 麻衣子]]>

国産大豆を守る運動と生物多様性の関係とは?

イネや大豆といった作物の遺伝子が失われ、海外の企業が開発した遺伝子組み換え作物に取って代わられたら…

山形 農作物に従来持っていなかった性質を獲得させるため他の生物の遺伝子を入れ込む遺伝子組み換え技術。その利用には健康被害や生物多様性への悪影響が懸念されている。国内自給率がわずか数%に過ぎない大豆を守ろうと、生産者と消費者がはじめた運動が今年13年目を迎えた。

 2010年2月20日午後に山形県新庄市で開かれた「第12回大豆畑トラスト全国交流集会」には、農家や食の安全などに関心のある市民ら約200人が参加した。

 日本では大豆は外国産や遺伝子組み換え作物が席巻しているが、国産大豆を守るため消費者が国産大豆を作る農家を支援する運動が「大豆畑トラスト」である。多くの場合、市販価格よりも高い国産大豆を買うことで消費者が生産者を支える形をとっている。この運動は新庄で1998年に始まったものだ。

 交流会の冒頭、交流会を主催した山形新庄大豆畑トラストの代表・高橋保廣(たかはし・やすひろ)氏が挨拶に立ち、「運動を始めたきっかけは、都会との交流の中で『大豆を作ってくれ』と言われたことだった。自給率の低さや遺伝子組み換え作物の流入という事態を知り、米に次いで重要な作物である大豆を守るため立ち上げた」と挨拶した。その後、講談師・宝井琴梅(たからい・きんばい)氏による農業講談「おらぁ日本のマンマが食いてぇ」、全国各地で大豆トラスト運動をしている方々活動報告のほか、環境ジャーナリスト・天笠啓祐(あまかさ・けいすけ)氏による講演が行われた。

 天笠氏は、世界では日本の面積の3倍にあたる耕地で遺伝子組み換え作物が栽培され、もっとも多く栽培されている大豆の7割がアメリカ・モンサント社の1品種であると現状について解説した。そのうえで、遺伝子組み換え作物がもたらす影響について、アレルギー、抵抗力の低下といった免疫システムへの影響、少産化、内臓障害などがあるとした。また、生物多様性への影響も指摘し、農作物は品種改良の中で、失われた遺伝子が多くあり、原生種と遺伝子組み換え作物が交配するとその種は永久に失われてしまうという。

 例えば、中国では遺伝子組み換えイネが作られようとしているが、中国・雲南省にあるイネ原生種が遺伝子組み換え作物と交配すると、生物種としてのイネが永久に失われる危険があると述べた。今年は名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれ、遺伝子組み換え生物の規制に向けたカルタヘナ議定書をめぐって議論が行われるとされており、遺伝子組み換え生物の規制強化に期待感を表明した。

 この大豆畑トラスト運動は、単に国産大豆を食べましょう、というものではない。イネや大豆といった作物の遺伝子が失われ、海外の企業が開発した遺伝子組み換え作物に取って代わられたら、それを作った企業に自国の食料が左右される危険がある。固有の遺伝子を守り続けることは、固有の資源を守ることと同じであると言える。

 政府は、こうした生産者と消費者の努力にもっと関心を払うべきではないだろうか。

(参考URL)

・新庄大豆畑トラスト
 http://daizubataketrust.sakura.ne.jp/

交流集会の様子

懇親会で出された地場の食材

【筆者】山崎求博(YAMAZAKI, Motohiro) / 足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ / 寄稿 /  [J10022601J]
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「大切にしたいくらし」~第3回国際有機農業映画祭

今回で3度目となる国際有機農業映画祭(11月27~28日)が東京で開かれた。

東京 11月27日、28日に国際有機農業映画祭が東京で開催され、2日間で合計約800人の観客が会場を訪れた。

 この映画祭は有機農業を広げるために、世界から有機農業関連のドキュメンタリー作品を集めて上映するイベントとして2007年に企画されたもので、今回で3度目の開催となった。今年のテーマは「大切にしたいくらし」で、有機農業を農業だけでなく、人々の暮らしにも焦点をあてた作品を中心に集められた。

 農業ジャーナリストで映画祭実行委員代表の大野和興氏は「世界では10億人を超える人々が食べ物にありつけないような状況で、環境が破壊され、『生命』にとって棲みづらい社会が広がっています。日本で約50年かけて作る人とそれを支える食べる人が作り上げてきた『有機農業』は、そうした課題に立ち向かう道具として考え直す時期に来ていると思います」と昨今の世界的な経済情勢の変化を生き抜くための手段として有機農業の力の大きさを開会式で述べた。

 1日目の岐阜県徳山村を舞台に撮影された「水になった村」は、ダムの建設予定地で暮らす村人を追ったドキュメンタリーだ。ダム建設で村民が近隣の移転地へと引っ越していく中で、何家族かの老人たちは村が沈むまで暮らし続けたいと街から戻り、山から山菜を、川から魚をとりながら生活していく様子が描かれている作品だ。映画祭当日には監督の大西暢夫氏が壇上に立ち「ダム反対という目線でなく、“暮らし”を基本に考えなければダムの問題は浸透していきません」と人々の暮らしを中心に考えることの重要性を訴えた。

 また上映会とは別に用意した新規就農者との交流会には大勢の観客が集まり、70人収容可能の会場は来場者で埋め尽くされた。参加者の一人で山形在住の養鶏家の男性は、「自分と同じような境遇にいる人とたくさん出会い、非常に刺激を受けました」と笑顔で語った。

 国際有機農業映画祭は第4回として、来年2010年も開催する予定。実行委員会ではすでに来年の作品の選定をしており、海外からの作品も常時募集している。

参考リンク)

 国際有機農業映画祭HP:http://blog.yuki-eiga.com/
 (問合せ先:info@yuki-eiga.com)

上映作品スチール(©2009 International Film Festival on Organic Farming)

【筆者】上垣 喜寛 (UEGAKI, Yoshihiro) / フリージャーナリスト / 寄稿 /  [J09120401J]
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北東アジアに緑色共同体を!――日韓市民社会フォーラム2009

2009年10月15日~17日、7回目となる日韓市民社会フォーラムが開催された。

全羅北道 「持続可能なまちづくりを通じた北東アジアの“緑色共同体”をメインテーマに、2009年10月15日~17日、全羅北道の鎮安郡と全州市で、日韓市民社会フォーラム2009が開催(主催:《日》日韓市民社会フォーラム実行委員会/《韓》韓日市民社会フォーラム組織委員会)された。

 市場原理主義に基づいたグローバリゼーションが大きな見直しを迫られる今、北東アジアの共通課題を解決するためには、人と人、人と自然がしっかりと結びついた“持続可能な地域”をつくりあげることが強く求められている。

 韓国の全羅北道に位置する鎮安郡は、“食と農”を中心にすえたむらづくりを進めており、韓国でも有数の地域を形成している。

 だが、鎮安郡のむらづくりは、決して安易な道のりではなかった。1966年に10万人いた人口も過疎化が進み、2001年に完成した韓国第5位の大きさの竜潭ダムによって多くの地域が水没したことで、現在は約2万4000人にまで人口は激減した。

 そこで“農村らしさの復元と強化”と“草の根が丈夫な地域社会づくり”をめざし、住民が中心となって行政と専門家の支援という三者の協力による村づくりが始まった。

 住民の相互学習に基づいたグリーンビレッジという小規模集落景観づくり事業や、UIターン者の知恵と経験を活用する「集落監事制度」の導入など外部人材の積極的な誘致に取り組んだ。こうした取り組みで約800名の住民が都市から新たに鎮安郡にやってきている。

 また、村全体をエコミュージアムとして、様々な伝統文化の再発見にも取り組んでいる。

 今回のフォーラムでは、①村と公共事業、②村と帰農帰村、③村と有機農業の3つの分科会が設けられた。私の参加した第1分科会の会場となった竜譚面臥竜(ワリョン)集落は、ダム建設で1996年に集団移住して新たに造成した人口48人の集落だ。ダム建設反対運動のリーダーだった臥竜集落委員長の姜ジュヒョンさんによると、村は水没してしまったが、移住団地の造成で現代式住宅や能率的な道路網を確保できたほか、移住住民の結束力が高まったそうだ。まさにピンチをチャンスに転換した事例といえよう。

 臥竜集落では、集落営農法人を設立して、各農家で生産した有機農産物を村で全量買取り、その農産物を加工した味噌類やごま油などの商品を開発。産直や常設売店の運営、ネット販売など多様な販売ルートを確立し、2009年現在の年間3億ウォンを売上げ、世帯あたり年間約600万ウォンの配当を出している。2011年には10億ウォンの売上げをめざしているという。

 その後、全州市の全北大学へ移動して開催された日韓市民社会フォーラムの全体会で、市場や国家主導の東アジア共同体とは異なる、環境、平和、福祉を重視した市民による“東アジア緑色共同体”が提起された。鎮安郡は宮崎県綾町との交流を続けているそうだが、東アジア各地の持続可能な地域が、国境を越えて相互につながりあうことは、市民による東アジア共同体づくりに重要である。集落ごとに独自の取り組みが展開されている鎮安郡は、訪れた参加者に持続可能な地域の確かな手ごたえと市民による東アジア共同体の可能性を感じさせてくれた。

分科会の様子

住民の相互学習の一例(2008年8月)

全体会の様子

【筆者】廣瀬稔也(HIROSE, Toshiya) / 東アジア環境情報発伝所 / 寄稿 /  [J09102302J]
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上海で広がる自然食品店チェーン「海客楽」

上海の自然食品店「海客楽」の紅口区臨平路の支店を訪ねた。

上海市 日本ではナチュラルハウス(1982年~)など、いろいろな自然食品店が展開され、国産の商品が多数店頭に並んでいる。一部の店では「当店の商品は原料段階を含めて中国産製品を一切使用しておりません」という表示すらされているが、その中国で自然食品が成り立たないのか言えばそうではない。上海には現に自然食品店が存在するのである。そこで、先日、E-wasteのプロジェクトで上海を訪れた際に、上海の自然食品店「海客楽(Hi Quality)」の瑞虹店を訪問。計画部マネージャーの方雲さんにお話をうかがった。

 「海客楽」は、2006年に設立された上海同脈食品有限会社が経営する自然食品店で、2007年6月に1号店がオープンしたのを皮切りに、現在では上海市内に15店舗を展開している。

 店舗を利用するには、無料の会員登録が必要で、現在の会員数は約1万人。会員は各店舗を利用できるほか、栄養講座、料理講座の受講や「海客楽」で販売している農作物の生産地を訪れるエコツアーなどにも参加できる。

 まず気になるのは値段だが、一般のスーパーの価格と比べて平均して2~3倍とかなり高価だ。ただ、陳列されている1点あたりの数量がそれほど多くないことから、ほとんど売れてしまうのだという。本当に安全な食材を提供することを心がけており、仕入れ商品の定期的な検査はもちろん、仕入先への定期的な検査も実施している。そうした検査結果は、店頭のレジで閲覧することができた。販売している主な野菜は、浙江省と上海郊外にある2つの直営農場で栽培されている。海外からの輸入商品は全体の2割程度だ。

 「海客楽」のおススメ商品は、虫を飼料とした平飼いのニワトリが産んだ卵と、同じく竹林で平飼いにしたニワトリの肉だ。国内生産での好例だが、それでも一番の課題は国内で安全な食材を見つけることだそうだ。チーズや豆腐については安全な食材をまだ調達できていないという。

 お話をうかがった方雲さんをはじめ、従業員はみな若く、環境や健康に興味を持っている人ばかりで、栄養士などの資格をもっている人も少なくない。15店舗すべてが直営で運営されており、さらには上海で安全な食を提供することにまず注力して、市外への展開は考えていないというからその気概の程がわかる。

 日本などでは、中国産というだけで安全性に疑問を感じる人が多くなってしまっている昨今、高価格で一部の富裕層しか利用できないという課題はあるものの、上海で始まった中国の市民に安全な食を!という「海客楽」の挑戦は海外からの疑問視を拭う上でも意味がある。今後も注目していきたい。

自然食品店「海客楽(Hi Quality)」瑞虹店

海客楽おススメの卵

お話をうかがった海客楽の方雲さん

【筆者】廣瀬稔也(HIROSE, Toshiya) / 東アジア環境情報発伝所 / 寄稿 /  [J09042402J]
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