岐阜県の揚水型発電ダム計画が中止に

板取川源流をつぶすダム建設が中止になった。予定地は清流を登らなければ入れない人の住まない源流部分で、その美しさは筆舌に尽くし難い。

岐阜 岐阜(ぎふ)県関(せき)市を流れる板取(いたどり)川の源流をつぶすことになっていたダムの建設計画が中止されることが、2月2日に明らかになった。建設予定だったダムは、原発が日本中に造られるようになった70年代になって造られ始めた「揚水型発電ダム」と言われるものだ。山間部の上下に2つのダムを造り、電気の余る夜間に10の電気を受け取って下ダムの水を上ダムに揚げ、電気が必要になる日中に、上ダムから下ダムに水を落として7だけ発電するしくみで、電気を「発」しない単なるバッテリーだ。

 夜間に電力が余るなら発電しなければいいのだが、国の電力生産の主力となっている原子力発電所は24時間100パーセントの出力で動かさないと危険なため、原発を補佐するために、出力の調整のきくこのダムが必要になったのだ。

 ダムの建設予定地は、板取川のはるか上流に予定されていて、出力は130万kW。直接村を水没させるものではなかったため、反対の声も大きくはなかった。それどころか、大型公共事業として歓迎されていた。しかし、ダム建設が自然に影響を及ぼさないわけではない。揚水発電所から流される水は極めて汚れているため、魚の生息数が減り、川は死に始めてしまう危険性があった。

 ダムを建設していた中部電力が、建設中止を表明したのは2月2日。中止に追い込まれた理由として、第一に電力自由化が影響していると考えられる。ダムを建設する中部電力の管内では、電力の約半分をトヨタ自動車関連の企業が消費している。以前、そのトヨタ自動車が、当時全国で最も高かった中部電力の電力料金に対して、「関西電力から買ってもいい」と揺さぶりをかけたことがある。中部電力は急激に電力料金を下げたが、そのために過大な設備は造れなくなっている。第二の理由は、電力需要が伸びなくなったことだ。今後、人口減少で電力消費量は自然に減っていくし、電化製品の省エネ化が進んでいる。

 しかし、それでも原発の増設計画は止まっていないし、それゆえ揚水発電ダムも必要となってしまう。一方、オール電化住宅というエネルギー多消費型の住宅への注目度は高まっている。オール電化住宅は厳密に計算すると、省エネどころか二酸化炭素排出量を増やし、電気料金も安くなるとも限らない設備なのだが。

 今後、エネルギー低消費型社会にむけたプランを提示しなければ次の世代にツケと後始末ばかり残すことになるだろう。

参考:大釜クラブ http://www.geocities.jp/ogamaclub/

川浦渓谷ダム建設予定地だった西が洞(にしがほら)

川浦渓谷西が洞にある滝壺。通称「大釜」

【筆者】山﨑 求博(YAMAZAKI Motohiro) / 揚水発電ダム問題全国ネットワーク / 寄稿 /  [J06022401J]
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きれいな海辺を取り戻すために

越境漂着ごみ対策に日韓の市民と政府関係者がのりだした

日本全土 筆者は、2005年7月、富山で開催された「海辺の漂着物調査検討会」に出席し、海洋ごみ問題において、危機感を持つと同時に、一刻も早く打開策を見出すべき課題であるとの問題意識を抱いた。日本海沿岸を中心とした海ごみ問題の処理に対して重い腰を上げない関係省庁と、地域で苦しむ市民団体側とのギャップを痛感したものである。今回2月17日開催の「第3回 きれいな海辺アクトフォーラム」では、全国規模の全体構想策定とローカルレベルへの展開実現に向けた、次への進展を期待して臨んだ。

 韓国や中国などを主な発生起因とする東アジア海域の漂着ごみ(プラスチック容器や漁具など)問題に苦しむ、長崎県・対馬(つしま)市・壱岐(いき)市・五島市・新上五島(しんかみごとう)町が、2005年11月、国の責任を糾す上で、漂着ごみの処理を国の責任で行うとする構造改革特区(注)の申請という窮余の策を打って出た。実際の特区実現は見送られたものの、政府は環境、国土交通、農林水産など関係省庁による局長級の対策会議の設置を決めるに至った。(初会合は3月開催予定。)

 対策会議では、ごみの漂着が多い地域の自治体が負担する処理費用を減らすため、循環型社会の理念には則さないものの、屋外での焼却を認めるなど、ごみ処理方法の指針を示すことや、自治体を財政面で支援できないかを検討する見込み。

 今回のアクトフォーラムをはじめ、フォーラム主催者であるクリーンアップ全国事務局や関係団体・省庁等相互の議論の積み重ねもあって、ようやくこうした動きが見えてきた訳で、今回のフォーラムの開催は、正に時宜を得たものであったと言える。

 これまでのアクトフォーラムの主要論点であった、海洋ごみ問題の「プラットフォーム」構想を如何に具現化するかが今回の議論の柱。省庁の動きも見えてきたことで、対策を進めるための場としてのプラットフォームの重要性が増した観がある。しかしながら、全国からの参加者の願いもむなしく、やはり省庁間の縦割りの側面が影響したか、具体策への糸口はなかなか見えてこなかった。(ワークショップでの討議では、それぞれの取り組みが分断されていることが明らかになった、との評も出た。策はあっても、有機的な動きになっていなかったと言えなくもない。)

 河川法に遅れること2年、海岸法でも「海岸環境の整備と保全」が1999年に主目的に加わる形となったが、本フォーラムにおいて、当該問題の打開策に即した具体的な提案が、参加した省庁の担当者から示されなかったことは、残念であり、局長クラスと実際の担当者との間に温度差があることも感じざるを得なかった。トップダウン型になって、はじめて担当者が動ける、とするなら担当者間での議論は何とも徒労である。(省庁担当者が及び腰にならないよう、市民側が助けるところにプラットフォームの意義が見出せるかも知れない。)

 韓国からのゲストスピーカーである、海洋救助団のHong Sun Wookさんからは、韓国ではここ7年の取り組みに対して、日本ではすでに15年。行政が協力するのに、これだけの時間がかかってしまっていることに歯がゆさを覚える、といったコメントがあった。

 対策会議の成否もカギだが、現場においては、プラットフォーム構想が物を言う。引き続き、市民をはじめとする関係者の努力・協働によって、構想や対策が具現化され、きれいな海辺が取り戻していけたら、と願う。

(注)構造改革特区
民間事業者や自治体が、国に申請し、地域振興などをはかるために、地域の特性に応じた規制の特例措置を導入する特別な地区を設ける政策。

アクトフォーラムで発表する、Hongさん

対馬 志多浦(したのうら)での漂着ごみの様子

【筆者】糸岡 栄博(ITOOKA, Eihaku) / 荒川クリーンエイド・フォーラム / 寄稿 /  [J06022402J]
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コミュニティにおける環境保護と生活の結合が実現

イギリスの南ウェールズで見た循環再生プロジェクト―Track 2000。これは80年代末に2人の男性トニーとテリーが作り上げた回収システムである

世界 コミュニティは環境保護と生活の結合を実現した。

 少し前に、イギリスの南ウェールズ、ガーディフ市で、私は1つの循環再生プロジェクトを見た――Track 2000。 これは80年代末に2人の男性トニーとテリーの作り上げたシステムである。“Track 2000は英語Training 訓練、 Resource 資源、Action 行動、 Community コミュニティ、Knowledge 知識の略語。

 15年前、トニーとテリーは市内で、まだ使える家具、洗濯機、冷蔵庫、コンピュータなどが大量にゴミとして捨てらているのを見て、人々に考えてもらう必要性を感じた。リサイクルにおけるメリットや、修理すれば貧困地域でリユースできるという事や、資源を節約しゴミを減らせば、コミュニ ティの発展にも繋がるという事を。そこで彼らは慈善団体を作り、回収、修理、訓練、貧困扶助するシステムを始めた。

 彼らはコミュニティ一軒一軒を回り、中古品を寄付してくれるよう働きかけ、人々にリサイクルの環境へのメリットを教えた。家庭から回収した廃棄物は、ボランティアによる修理の後、新品同様となって、貧困家庭に送られた。これにより、ゴミを減らし、資源が再利用されていることが次第に理解されて、効果的で有益な循環システムが形成された。

 トニーは次のように述べた。「私たちは訓練所を作り、ボランティアやコミュニティ内の失業者を訓練してコンピュータ、オーブン、冷蔵庫を分解、修理させました。 訓練所そのものが、ボランティアを集め、またコミュニティ内の貧困層に技術を学ぶ 機会を与えたのです。そして、仕事、訓練、学習の機会を恵まれない人々に与えました。」

 Track 2000の活動は、多くの人に利益を与え、様々な集団の中で環境保護と生活の結合を実現させた:例えば、貧しいシングルマザーは子供に車を買ってやれないが、Track 2000 によって与えられる。;若者達が飲む飲料の包装を回収し、娯楽施設を買 い入れて、活動センターを作れば、若者は喜び、環境保護の活動に参加する;老人は 回収を重視して、家庭の生活コストを減らすことができる。トニーは言う。「私たちが行ったことは、環境保護であり、人々に参加する機会を与えた活動ですが、その本当の意義は持続可能な経済と社会を作り上げたということです。もし、貧しいコミュニティの中でTrack2000の活動を行えば、恵まれない人々に希望を与え、自尊心、自信、向上心を持たせることができるのです。」

【筆者】宋慶華(SONG, Qinghua) / 東アジア環境情報所 / 寄稿 /  [C06022201J]
【翻訳】長瀬千夏]]>

ぽんぽこの丘が再びピンチ!?町田に廃プラ施設

東京都町田市で、廃プラスチック中間処理施設の建設計画が問題となっている

東京 タヌキが自然破壊に反対して人間に対抗するアニメ『平成狸合戦ぽんぽこ』の舞台にもなった多摩丘陵。その西側にある町田市小山ヶ丘に、廃プラスチック中間処理施設の建設計画が持ち上がっている。小山ヶ丘への建設が決定されたのは2005年6月のことだが、計画の策定過程が不透明で秘密裏に進められていたという印象があり、周辺住民などの反発を招いている。昨年11月に八王子南大沢で行われた反対集会には5000人(主催者=町田市廃プラ施設問題を考える八王子・相模原・町田市民の会発表)の市民が集まった。12月には8万筆以上の「廃プラ施設建設計画凍結」の請願が町田市議会に提出されている。

 運動が盛り上がる一方で、行政側の“だんまり作戦”もある程度、功を奏しているようだ。実際、町田市民に尋ねてみると、「小山ヶ丘ってどこだっけって感じ」「そんな施設があるらしい、ぐらいしか知らない←(間違い。まだ無い)」と正しい情報が伝わっていない。建設予定地のすぐ裏の遊歩道を散歩中の若夫婦は「え、この裏なの?そりゃ反対しなきゃ」と言い、隣接する町田テクノパークで働く会社員は「杉並病かなんかでヤバイやつが来るって噂は聞いてたけど、隣かよ!」と話す。

 町田市では2月26日に市長選と市議選が予定されており、市長選には6人が立候補を表明している。今回、そのうちの2人に話を伺うことが出来た。A氏は「マイバックへのポイント付加など消費者が環境を意識することによってメリットがあるように企業に働きかけていく」と言う。「極論すれば大規模な中間処理施設はどこにもいらない」と大胆な提言をする候補者もいる。彼は「市民を信頼して、ゴミが最初に出る過程で、分別を徹底すれば総量も減る」と話した。なお「廃プラは重要な戦術なので、選挙前に公表してしまうと他候補に取られてしまうおそれがあるので答えられない」とする候補者もいた。

 廃プラ施設が環境や人体に与える影響についてはまだはっきりしていない。近隣住民の1人として気になるところだ。

(注記)公職選挙法により文中ではインタビューに答えていただいた候補者の実名を控えました。

(補記)文中でインタビューに答えていただいたのは順に、さみぞ裕子氏、石阪丈一氏です。掲載時は告示前のため、実名を伏せさせていただきました。

現場は郊外型店舗が並ぶ一画

予定地には住宅が密接している

建設現場の看板と候補者のポスター類

【筆者】高橋 徹志(TAKAHASHI, Tetsushi) / 東アジア環境情報発伝所(East Asia Environmental Information Express Messenger) / 寄稿 /  [J06021703J]
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京都議定書の発効1年を記念して

日本では、京都議定書発効1周年を記念するイベントがいくつも開催された

日本全土 2月16日は、京都議定書の発効から1周年の日だった。京都や東京では市民や研究者、自治体などが主催して発効を記念するイベントが複数開催された。日本では、京都議定書の発効は、温暖化防止の取り組みの進展を祝福すべき日なのだ。

 では、中国や韓国でも京都議定書発効を祝うイベントは開催されただろうか――。京都議定書に関する受け止め方は、日本と中国・韓国の間では政府のみならず市民の間でも温度差がありそうだ。先進国が取り組むものだから我々には関係ないという立場が中国・韓国にはあるだろう。しかし、京都議定書は本来、世界が直面する地球温暖化問題を解決するためのグローバルな仕組みである。

 現在は2008~2012年の先進国の削減義務のみだが、続く2013年からは、CO2の排出量増加が大きい中国や韓国にも削減努力が当然求められてくる。そうしなければ、気候変動が深刻化して地球が持たないからだ。しかし、中国や韓国からは京都議定書への積極的な評価や削減行動への意欲的な声があまり聞こえてこない。また、温暖化の国際交渉も南北対立がはげく、心配材料だ。

 韓国は、京都議定書の義務を課されていないが、CO2排出は大幅に増加しており、次のステップでは日本などと一緒に削減を進めるべき立場にあるはずだ。また中国も、先進国と同じやり方ではないにせよ、国際的に協調して排出抑制をしなければならない。世界全体でCO2削減に取り組んでいかなければ、人類や生態系が適応できないレベルの気候変動を招いてしまう。

 CO2削減を進めるために日々活動を展開している私たち日本のNGOは、16日の京都議定書の発効を祝しつつ、温暖化対策に一層の弾みをつけたいと気持ちを新たにした。大量エネルギー消費社会を転換することは容易ではないが、だからこそ市民の後押しが必要だと思っている。また、これから重要な役割を担う中国と韓国の両国に温暖化防止戦略を共有する市民のパートナーシップを得て、協力して活動を展開したいと願っている。

東京で開催された「気候の危機シンポジウム」(提供:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA))

【筆者】平田 仁子(HIRATA, Kimiko) / 気候ネットワーク(KIKO Network) / 寄稿 /  [J06021701J]
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危険、ムダ、不経済なウラン再処理~六ヶ所再処理工場で最終試験運転が始まる

利用のめどが立っていないプルトニウムが「リサイクル」の名目で生産され、放射能の被害や巨額の税金の支出が始まろうとしている

青森 青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場では、今年1月に劣化ウランおよそ53トンを使ったウラン試験が終了し、今年の春にも、原発の使用済み核燃料を用いるアクティブ試験が開始される予定である。ここは、国内では初めての大規模な商業再処理施設であり、本格的に稼働すれば、約8トンものプルトニウム(核弾頭およそ1000個分にも相当)が毎年取り出される。

 試験運転とは言え、来年7月までに4トンのプルトニウムが生成される計画になっている。また、再処理の過程では大量の放射能が発生し、その一部が排気筒と放出口を通じて海や空へ垂れ流しにされる。海へ流される放射能は、海流に乗って日本の太平洋沿岸へと拡がり、大気中へ放出された放射能は風に乗って日本中へ、そして地球全体へと飛散して大地を汚染する。

 このような規模での放射能放出は日本で初めてであり、その影響についての懸念が拡がりつつある。環境NGOのグリーンピース・ジャパンでは昨年12月、青森県の「再処理工場について勉強する農業者の会(哘清悦代表)」の呼びかけに応じて、ウェブサイトを通じて全国の消費者を対象にしたアンケート調査に協力した。

 この「食品の安全性に関する消費者アンケート」には、インターネットを通じて504名の消費者が、自由回答を含めた5つの設問に回答した。これらの参加者の89%が青森県産品を購入したことがあると答え、そのうち90%以上が放射能の残留を含めた表示を義務づけるべきだと回答している。2月末にグリーンピース・ジャパンと農業者の会は、アンケート結果を青森県へ提出すると共に、アクティブ試験の中止を求める要請を行う予定である。

★グリーンピース・ジャパンは、2月19日に東京ウィメンズプラザ(表参道)で「ストップ再処理!シンポジウム~こんなものいらない!」を開催する。シンポジウムへの参加は、グリーンピース・ジャパンのホームページ(http://www.greenpeace.or.jp)から申し込むことができる。

(参考URL)
・「食品の安全性に関する消費者アンケート」結果
 http://www.greenpeace.or.jp/campaign/nuclear/plutonium/rokkasho/qn/results_html

© Greenpeace

着々と進められつつある六ヶ所村核再処理施設 グリーンピース・サンプリング凧からの撮影(2002/11/21)©Greenpeace/Gavin Newman

【筆者】野川 温子(NOGAWA, Atsuko) / 特定非営利活動法人 グリーンピース・ジャパン(Green Peace Japan) / 寄稿 /  [J06021702J]
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地球と共に生きる―大家族での小消費

過去、中国では四世代に及ぶ大家族が同居していた

北京市 過去、中国では四世代に及ぶ大家族が同居していた。このような生活は家庭的な雰囲気が濃厚になるだけではなく、環境保護にも役立っていた。なぜなら、このような大家族での生活では、消費が少なくなるからだ。しかし、現在では社会の発展に伴い、中国の特に都市部では一組の夫婦に一人の子供という家庭が日増しに増加している。単親家庭や独身の一人暮らしも多くなり、家庭の数が増加し、環境保護の大敵となっている。

 小家族の増加は、住宅の絶え間ない増加を引き起こす。より多くの住宅の建造には、より多くの土地が必要になり、より多くの木材・石材・ガラス・セメント及びその他の建築資材を消費することになる。このような建築資材の生産過程では、大量の資源を消費し、同時に環境破壊と汚染を引き起こす。

 さらに住宅内部では、四世代が同居する大家族と、三人家族が使用している家電製品の数と消費するエネルギーにはほとんど差がない。十何人もの大家族でも、通常たった一台の冷蔵庫、一台のテレビ、一台の洗濯機を使っているからである。このような大家族が3~4つの小家族に分かれることにより、使用する家電製品の数は4倍になり、目に見えないところで電力の消費が増加し、環境を汚染することになる。大家族での生活を提唱するのは、ただ単に家族の絆を深めるためではなく、地球の汚染を減少させるためなのである。

【筆者】宋慶華(SONG, Qinghua) / ENVIROASIA中国チーム(ENVIROASIA China) / 寄稿 /  [C06021502J]
【翻訳】中文日訳チームC班 富川玲子]]>

北京の爆竹がもたらした環境汚染を憂う

北京市で十数年間禁止されていた爆竹が、今年の春節に解禁。市民は盛り上がりを見せたが、一方で様々な汚染を引き起こした。

北京市 北京市で十数年間禁止されていた爆竹が今年の春節に解禁、北京の人々はたいへんな盛り上がりを見せた。しかし一方で、大気汚染や騒音、ゴミ、そして爆竹による市民の負傷など様々な弊害を生んでいる。

 春節に花火をあげ爆竹を鳴らすのは、いわずと知れた中国の伝統である。花火は春節を彩り、爆竹は厄をはらい幸せを呼ぶ。 そしてあの爆竹の硝煙のにおいがさらに正月気分を盛り上げるのである。

 しかし、一方で一部の北京市民が心配している問題がある。広範囲に渡って花火や爆竹が集中して鳴らされると、二酸化硫黄が一箇所に充満してしまうのである。

 花火や爆竹は火をつけると、二酸化硫黄・一酸化窒素などの毒性ガスが発生する。この形のない “殺人鬼 ” は呼吸器疾患の原因となり、神経器官や血管を駄目にする。また目に対する刺激も非常に強い。

 騒音も大きな弊害である。北京市の環境保護観測部門のデータでは、1994年北京市が爆竹禁止の措置をとる以前は、年越しの瞬間騒音は、最大で102.5~125デシベルに達し、夜間の騒音基準45デシベルをゆうに越していた。現在では、北京家屋の四合院は高層アパートに取って代わられ、高層アパート内での爆竹の音は特にうるさく、赤ちゃんやお年寄り、病人のいる家庭を苦しめている。

 このほか、ゴミの量が増えることも問題で、爆竹の生産から点火までに使われる紙や水、電気、人件費、秩序管理のためのコスト等を合わせると、相当な浪費である。しかも、毎年花火工場では事故がおこり、死傷者がでているのである。

 一部の市民は、政府が市民のために安全に春節の気分を盛り上げるのは当然のことと考え、市内のいくつかの広場では、政府主催で爆竹が鳴らされる。市民による爆竹も、広い場所だけに制限すべきであり、住宅地区では鳴らしてはならない。そのほか、政府は爆竹の研究に力を入れ、新たに安全な環境保全型の爆竹を作るべきだという意見もある。

【筆者】康 雪(KANG, Xue) / ENVIROASIA中国チーム(ENVIROASIA China) / 寄稿 /  [C06021501J]
【翻訳】中文翻訳B班 こみや ]]>

渡り鳥の飛来地に巨大ウィンドファーム

国内最大の風力発電基地「宗谷岬ウィンドファーム」が稼働を開始したが…

北海道 2005年12月、北海道稚内(わっかない)市の宗谷(そうや)丘陵にできた国内最大となる風力発電基地「宗谷岬ウィンドファーム」が稼働を始めた。だが、そこは渡り鳥の飛来地でもあった。

 このウィンドファームを建設したのは、東京電力と総合商社トーメンが出資するユーラスエナジーホールディングス(東京)。約1500ヘクタールの敷地に57基の発電用風車が立ち並ぶ。風車の羽根は直径62メートル、鉄塔の高さは68メートルある。総事業費120億円にもおよぶ。総発電容量5万7000kWは、岩手県の釜石広域ウインドファームの4万2900kWを抜き、風力発電基地として国内最大だ。年間平均稼働率を33%前後と見込む場合の総発電量は一般家庭4万1000世帯分と、稚内市の全消費電力の6割に当たる。 経済不況にあえぐ北海道にとって、こうした発電施設ができることは大きく、稚内市も新しいまちづくりにプラスになると期待を寄せている。

 ところが、稚内は国の天然記念物オジロワシやオオワシなどの渡り鳥の中継地。こうした渡り鳥が風車の羽根に衝突する『バードストライク』を心配する声もあり、この建設計画がもちあがってすぐの2003年11月には、懸念した鳥類研究者ら十数名が任意検討委員会を立ち上げた。2004年2月には、北海道苫前(とままえ)町で風車に衝突して死んだと見られるオジロワシの死体が発見されたが、会社側が提出した環境影響評価調査では、鳥が天候や時間帯によって飛行高度を変えることが考慮されないまま、年1基当り2~3羽程度に過ぎないとして建設計画が進められていたことがわかった。

 このため、2004年4月、日本野鳥の会が稚内の環境影響評価調査のやり直しとそれまでの工事着工中止、調査の結果、渡り鳥に重大な影響を与える場合は計画の変更・中止を求める要望書を提出するに至ったのである。

 その結果、ウィンドファームの建設にあたって、風車は渡り鳥が集まる海岸側を避け内陸側に配置されるとともに、月2度の巡回で影響調査を続け、白鳥がやってくる3~5月、9~11月頃には夜間ライトアップをして衝突を防ぐなどの対策を講じている。成果が出るか、注視したいところである。

 バードストライクの可能性を指摘した任意検討委員会の一人は、1)風力発電先進国ドイツでは風力発電によるトラブル回避の方策として、4段階に区分した風力発電規制マップをいくつかの州で作成している。2)ドイツの規制地図にならって「風力発電危険度マップ」(仮称)のようなものを全国ネットワークで作成する段階に来ているのではないか、としている。

 風力発電に代表される再生可能エネルギーは、本来環境への負荷を小さくするためにあるはずだ。それが、こうした環境を損ねかねない事態になるのはなぜだろうか? それは、このウィンドファームが大企業によって建設された大規模施設だからだ。企業の論理では、一度計画が始まったら、環境への影響にかまわず止められないというのがまかり通る。だがこれでは、これまでダム建設によって森が破壊されてきた図式と何ら変わりがない。

 もし、稚内の市民が出資して風力発電を建設するならば、地元の環境を考えて計画するだろうし、規模も小さいので変更も容易になる。せっかくの再生可能エネルギーも、電力会社の買い取り価格の低さから採算性を保つのは厳しく、大規模設備に頼るとなると、大手企業しか参入できないのが実状になってしまう。建設地適性の明確化、小規模発電での採算性向上など、次の課題が見えてきた。風力発電事業は新たな局面を迎えているのかも知れない。

(参考URL)
・ユーラスエナジーホールディングス
 http://www.eurus-energy.com
・日本野鳥の会要望書「宗谷岬ウィンドファーム計画について」
 http://www.wbsj.org/nature/hogo/law/youbou04/040401.html


(イメージ画像)被害が懸念されるオオワシ Photo by (c)Tomo.Yun  http://www.yunphoto.net

【筆者】山﨑 求博(YAMAZAKI, Motohiro) / 足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ / 寄稿 /  [J06020802J]
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アジアの空を舞うヘラサギよ、いつまでも!

2006香港ヘラサギ国際シンポジウムを終えて

東アジア 「いつまでも流れる河・東江(江原道)を、みんなで見守ろう!」これは、1990年代末に最終的には白紙化されたが、東江ダム建設反対運動の時に我々が掲げたスローガンである。何年も前のスローガンを今こうして再び取りあげたのには訳がある。それは、去る1月に香港で開催された「ヘラサギ国際シンポジウム」のテーマを、どのように訳せば適切な言葉で伝えられるか悩んでいた時に、このスローガンが頭に浮んだからである。

Keeping Asia’s Spoonbills Airborne
いつまでも、アジアの空を舞うヘラサギを、みんなで見守ろう!

 ヘラサギは、世界的に見ても東アジアに約1,400羽しか生き残っておらず、絶滅の危機に瀕している。南北の境界線でもある黄海の非武装地帯の無人島で主に繁殖し、冬になると日本、台湾、マカオ、ベトナム、フィリピンなどに渡っていく。国際的な保全団体であるバードライフ・インターナショナル(BirdLife International)は、絶滅危機鳥類の分類基準を、地球上での個体総数が2,000羽以下と定めている。

「2006香港ヘラサギ国際シンポジウム」に韓国・北朝鮮及びそれぞれの越冬地から約100人が集結

 「いつまでも、アジアの空を舞うヘラサギを、みんなで見守ろう!(Keeping Asia’s Spoonbills Airborne)」というテーマで、ヘラサギの保全と研究のための「国際シンポジウム」が香港野鳥会(Hong Kong Bird Watching Society, 1957年に設立)主管のもと、1月16日(月)から18日(水)にかけて香港で開催された。この席には、ヘラサギの繁殖地である朝鮮半島だけでなく、日本、台湾、香港、マカオ、ベトナムそして福建省、広東、海南など中国東南部海岸のヘラサギ越冬地からも、絶滅の危機に瀕しているヘラサギを保全するために活動している環境団体の活動家、研究者、関連分野の専門家やヘラサギを愛する市民を含め約100人あまりが集まった。2000年以降、繁殖地である韓国で環境連合主管のもと「ヘラサギ国際シンポジウム」(2001年、2004年、2005年)が三度ほど開かれたものの、越冬地で開かれた国際会議としては、最も大きい規模の会議となった。

個体総数1,681羽を記録した「2006国際ヘラサギ同時センサス」

 シンポジウム期間中の17日(火)には、1月6日(金)から8日(日)にかけて、東アジアのヘラサギ越冬地において同時に開催されていた「2006国際ヘラサギ同時センサス」の結果が発表された。現在、南北の境界線に位置するヘラサギの繁殖地への立ち入りが困難なため、毎年1月の越冬地を中心に進められている「国際ヘラサギ同時センサス」は、絶滅危機にあるヘラサギの全体個体群を把握できる唯一の方法である。今回は1,681羽のヘラサギが記録された。

 昨年の1,475羽から、さらに今年は206羽が増え、2000年以降毎年東アジアで記録されるヘラサギの数は確実に増えている。その原因として様々な意見はあるものの、確かなことは積極的な保全活動により市民の関心が高まり、その眼差しが増えたことによって新たな越冬地が発見されているためである。そして、繁殖地において、実際にその繁殖個体数が増えているのではないかとする注意深い予測も出ているのである。

ヘラサギは我々の仲間なのに?開発と保全との狭間で揺れ動く棲息地

 ヘラサギの存在が初めて報告された1990年代前半、その数は300羽余りに過ぎなかった。2006年現在、その個体数は1,700羽余りに迫っており、この15年間、なんと5倍を越す数に増えたのである。しかし、数の増加だけではアジアにおけるヘラサギの未来はまだまだ楽観視することはできない。その棲息地である干潟を埋め立てカジノやホテルを建てているマカオ、海岸を埋め立てて乱開発を推し進めている中国東南部、ヘラサギの棲息地がある漢江の河口で開発が集中する朝鮮半島など、東アジアのヘラサギ棲息地が日増しに開発と保全の狭間で揺れ動いている。その渦中に、ヘラサギが置かれている。ヘラサギは我々の仲間ではないのか?我々は果たして、ヘラサギを時間と空間を共に分かち合う仲間として認め、生きているだろうか?この選択が我々の姿勢を物語っている。

次回は6月のソウル、ヘラサギの繁殖地国際合同調査へ

 ヘラサギが国際的な絶滅の危機を脱し末永くアジアの空を羽ばたくためには、朝鮮半島の棲息地だけでなく東アジアのそれぞれの棲息地に対しても充分な調査と研究が必要である。潜在的な棲息地においても、生態系の大切さやその特徴が確認される前から土地利用への転換や開発・埋め立て等が行われるようなことがあってはならない。そして、このような調査や研究の結果に基づいた長期的な保全対策を立てるべきである。保全運動の活力は市民によって、もたらされるものだけに、東アジア各国でヘラサギに関する認識の強化及び教育活動もまた引き続き行うべきである。

 「2006年香港国際シンポジウム」に出席したアジア各国の保全研究家と活動家たちは、その棲息地についての国際合同調査を今年の6月にソウルで実施すると決定した。黄海の南北の境界線にあたるヘラサギの繁殖地は、分断によって劇的に生じたヘラサギの天国であるが、その棲息地が朝鮮半島だけでなく東アジアの生態系がもつ重要性を明らかにし、この地域に対する東アジア共同体としての保全維持を明確にするものである。2004年から環境連合主管のもとに始まった「ヘラサギ繁殖地国際合同調査」は、すでにヘラサギの保全のための東アジア共同行動へと位置づけられている。

 今回の「香港国際シンポジウム」は、個人的にも生涯心に残る有意義な時間であった。それは、在日朝鮮鳥類学者であるチョン・ジョンニョル博士の韓国語での発表を、私が通訳させて頂いたことにある。当初、チョン博士は日本語で発表なさる予定だったが、私のつたない英語力を信頼して韓国語で発表されたのである。ヘラサギ保全を通じて、チョン・ジョンニョル博士と知り合いご一緒できたことは、私にとって今後つらい時でも初心に戻れる心の支えになることだろう。第三国ではなくヘラサギの繁殖地である朝鮮半島で、チョン博士と再会できる日を楽しみにしながら……。

▲香港ヘラサギ国際シンポジウム会場ⓒ環境連合パク・ジョンハク

▲空を舞うヘラサギⓒ台湾ハッピーファミリー ワン・ヂョンチ

▲2006香港ヘラサギ国際シンポジウム参加者全員の様子ⓒ香港野鳥会

【筆者】湿地海洋保全チーム ソニョン(Sunyoung) / 環境運動連合(KFEM) / 寄稿 /  [K06020801J]
【翻訳】全美恵]]>