エネルギー政策選択と環境アセスメントの役割

自然エネルギーを利用した地域おこし

NPO地域づくり工房(長野県大町市)は、くるくるエコプロジェクト(ミニ水力発電の普及)と菜の花エコプロジェクト(菜の花オイルとバイオ軽油の普及)を両輪に活動を展開し、これまでに4つのタイプのミニ水力発電所の設置・運営を経験し、バイオ軽油は年2万リットルを生産しています。加えて、天然冷蔵庫「風穴小屋」を復元・活用する活動を含め、自然エネルギーを利用した個性的な取り組みが評価され、全国各地からのエコツアーを受け入れてきました。

コヲミ平ミニ水力発電所

こうした地産地消型の自然エネルギーは、位置的・時間的制約が大きく、不効率で採算性に乏しいものです。それだけに、経済効率優先の社会の中では、かえって私たちの活動に発信力が与えられたのだと思います。それぞれに技術的・制度的な課題が山のようにあり、挫折を繰り返しながらの10年間でした 。

建設現場でも使われるバイオ軽油

■エネルギー政策選択の複雑さ

さて、福島原発事故は、エネルギー政策の大転換をもたらしました。「2030年代に原発ゼロ」をめざす政府のシナリオでは、火力・水力を増強ないし維持させつつ、自然エネルギーを含む再生可能エネルギーを飛躍的に成長させることで、エネルギーの安定供給を確保する計画です。

しかし、脱原発のためであれば、健康被害や地球温暖化の主役であった火力発電の増強、自然破壊の象徴である巨大ダムの維持、といった選択は容認されるべきなのでしょうか。自然エネルギーも、急激かつ大規模に推進された場合には、むしろ環境破壊や浪費につながることが懸念されます。

ヨーロッパでは、チェルノブイリ事故を教訓に、1980年代からエネルギー政策の転換を図る国々が見られました。しかし日本は、黒船や占領軍と同様に、災害という外発的な原因により国家の土台が揺らぎ、混迷のさなかにあります。確実なことは「原発ゼロ」を決めた政府が「近いうちに」崩壊することだけです。

■地域に根ざした市民らしい政策

日本のエネルギー事情は、消費の浪費的あり方とその大都市圏一極集中、そして生産の植民地的あり方に特徴があります。その根本を変えない場合は、せっかく地域で掘り起こされた自然エネルギーも効率化が進む送配電線網への接続を通じて、中央へ吸い上げられることになります。本来、食料の自給をめざして再生されるべき農地にも、太陽光パネルが敷き詰められてしまうのでしょう。それは私たちがめざす国土の将来像なのでしょうか。

エネルギーは社会のある姿を実現するための手段です。どのような社会をめざすのかという根本的な議論が本来は必要です。そうした議論の担い手として、既成の枠組みにとらわれない市民活動が、今こそ本領を発揮すべきです。

市民の政策が、独自性と説得力を持つためには、参加型調査学習活動の裏付けが必要です。広範な市民の参加を組織しながら進める調査により、地域の中から情報を引き出し、それに基づく対話と学習により、提言や実践のための計画をまとめていく作業です。エネルギー問題もその現場は地域社会にあります。自然エネルギーは、地域性が強いので、このことは特に重要です。

■市民から広げる政策アセス

さて、エネルギー政策のような根幹的で、長期に安定した方針が必要な分野でさえ、政治の混迷が影響して、展望を見出すことが難しくなっています。好き嫌いによる多数決ではない、論理的な合意の積み重ねが重要です。

そのためにも、アセス(環境影響評価)という科学性と民主性を二本柱とするプロセスが、こうした政策選択においても導入される必要があるのです。

残念ながら、日本では政策段階でのアセスは実現しておらず、昨年の法改正でようやく計画段階でのアセスの要素が一部取り入れられたという状況です。

エネルギー政策選択をテーマとしたアセスの実現が、多くの市民活動によって共有される獲得目標となり、その実施方法についても市民活動のイニシアティブにより活発に議論されることを期待します。

また、政府や自治体による政策アセスの実施を待つのではなく、市民活動の側も参加型調査学習活動とそれにもとづくワークショップ(作業が伴う会議の方法)によって、この分野での「市民からのアセス」を実践し、自分たちの政策を世論の中に広げていく努力が求められています。

【筆者】傘木 宏夫 (KASAGI, Hiroo)/NPO地域づくり工房/あおぞら財団機関紙『りべら』2013年1月号掲載記事より/[J13040501J]

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