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←会議日程(目次)に戻る 第4回 東アジア環境市民会議

第4回 東アジア環境市民会議
〈第2部〉「東アジアの水汚染解決に向けて」

2日目(10/12)

報告「韓半島大運河白紙化のための市民社会の活動」

韓国環境運動連合(KFEM)水・河川センター  李 喆宰

 

 2006年の西安会議では、2000年以降の韓国の市民社会によって行われた水汚染防止活動についてお話いたしました。そのポイントは、韓国社会が、直接的な対応より根本的な問題解決を志向していること、また河川保護においても、世界的なトレンドに合う人工的な復元ではなく、自然による復元を推進しているということでした。
 当時の韓国の状況は時代のトレンドに合うものでしたが、ここ2年間に韓国で起きたことは、不幸にも時代遅れの状況が再び発生しており、本当に残念に思っております。
 今日は、水汚染以外に韓国の民主主義、また国内世論の関心の高い韓半島大運河についてお話したいと思います。
 韓半島大運河問題は、去年の総選挙前後に急速に議論されるようになりました。韓国の進歩的な市民社会であれ、保守的な陣営であれ、大運河だけは必ず中止しなければという連帯が形成され、関連の活動も積極的かつ強力的に行われてきました。
 京釜運河の概要韓半島運河は、韓国の運河12個、長さ2100kmと、まだ統一もされていない北朝鮮の運河5個、長さ1000kmを結ぶ、運河17個、総長さ3100kmにおよぶ構想です。最初は、内陸運河という名称を使っていましたが、ソウルと釜山をつなぐ京釜運河、また地域が変わるにつれ湖南運河(ヨンガン山地域)、金剛運河、北朝鮮運河などを結んだ総体が韓半島運河になります。
 推進側は、韓半島運河が国運隆盛の道だと主張しています。具体的なデータが公表されているのが京釜運河です。主運水路が540km、水中ダムが16カ所、それから運行船舶の規模は5000~25000t、540kmの運河を4年で完成させるといっています。
 漢江と洛東江を結ぶためには、白頭大幹という山脈を通さなければなりません。川と川を結ぶ方法には、山脈を貫くトンネル方式と、山脈の間に水槽を作って船を浮かべるリフト方式の二つがあります。
 しかし、両方とも問題点があります。工学的には両方とも可能だといわれているのですが、両方とも莫大な経費が必要で、従ってすさまじい環境破壊が起こると専門家たちは指摘しています。

 

  • 京釜運河の争点

 京釜運河の争点をまとめてみると推進側は、1)経済発展、運河の建設により4年間で30万人の雇用を創出できる、2)国土の均衡的な発展――現在は沿岸地域を主に都市が発展してきたが、運河ができたら内陸の都市も発展できる、3)物流コストを画期的に削減できる、4)水を貯めておけるの水資源が確保できる、5)観光産業も発展できると主張しています。
 しかし、反対側によると、1)莫大な建設費用がかかる――賛成側は14兆ウォンを見積もっているが、実際には40兆~60兆ウォンの工事費がかかると予測しています、2)環境破壊――韓半島運河が建設されたら絶滅する韓国固有種もいます、3)経済性については、100ウォンを投入して24ウォンの利益が出るという非常に利益率の低い事業だと結論されています。また、推進側の経済性分析は意図的な歪曲があって経済性を高く見えるようにしたことが、明らかになっています。
 アフリカのスエズ運河は、ヨーロッパからアジアへいたる距離を、アフリカ南端にある喜望峰を通る必要がなくなったということで、相当な短縮効果を生み出しました。パナマ運河も同様で、南アメリカ大陸の最南端を遠回りする必要がなくなりました。しかし、韓国の京釜運河は、ソウルとプサンを縦に結ぶという構想で、まるで海がすぐそばにあるチリに内陸運河を作るのとまったく同じで、何の短縮効果もありません。
 またソウルとプサンの間には、以前にも貨物輸送用の海路がありましたが、現在では廃止されています。貨物トラックとの競争で、貨物船はスピードで負けるので、この以上経済性がないというのが、貨物業者と輸送業者の共通な結論でした。このように韓半島での運河に経済性がないことは以前から確認されていたわけです。

 

  • 大運河の問題点

 運河の問題点を整理してみますと、まず韓国の進歩的な団体は、運河を破綻運河と呼んでいます。現在の李明博韓国大統領のニックネームが破綻社長、破綻市長だったものをもじったものです。建設業界出身の大統領は、韓半島運河や京釜運河構想を進めるなかで、国民の世論や社会団体及び専門家の意見は反映させず、強行だけを主張しました。こうした国民との意思疎通ができていない状況を表す意味でも、破綻運河と呼んでいるのです。
 次は、経済性についてです。推進側は100ウォンを投資して240ウォンのリターンガあると言っていますが、それは意図的なデータの改ざんと歪曲による経済性評価で、実際には100ウォンを投資してせいぜい24ウォンのリターンしかない非常に経済性の低い状況です。韓国の国土は三面が海で、一銭もかからない海路があるのに、内陸で土を掘って運河を建設することは、まったく経済性がないと判断するしかありません。
 韓国だけではなく中国や日本も、川を中心にたくさんの歴史文化が形成されていると思います。
 2008年1月に、韓国では、国保1号の崇禮門(南大門)が火災で全焼した事件がありました。その時、国民は非常に悲しい思いをしましたが、運河工事が進むと、流域にある現在発掘されている文化財だけでなく、発掘されていない文化財も一緒に破壊されてしまいます。崇禮門は一つですが、運河ができたら数たくさんの文化財がなくなるしかないことで、協力に反対している状況です。
 続いて、飲料水の水源の汚染についてです。世界どこに行っても、飲料水の水源となる流域に貨物船を浮かべて汚染を起こすという国はないでしょう。これは本当に非常識だと思います。韓国の場合は、飲料水の90%以上を川から取水しています。2007年に北漢江で起きた採取船の沈没による油流出事件のように、船舶による大型事故が発生すれば、取水中止、飲料水混乱などの大きな問題が起こるのは明らかです。
 運河の運営の歴史の長いドイツでさえ、毎年数百回も発生する事故が水質に影響を与えていることが確認されています。
 また生態系の破壊については、あらためて述べるまでもないでしょう。

 

  • 運河の白紙化のための活動

 市民社会団体は、ソウルだけではなく全国各地の団体と連帯して活動を行ってきました。全国500以上の団体と「運河ハクシ靴国民行動」を結成していますが、環境団体、女性団体、民主運動団体や社会団体などが参加しております。
 連帯活動は、緊急事件にもするどい反応を見せました。記者会見や強力なアクションなどを通じて、運河に問題があることを市民に強く伝えてきました。また、漫画をつかった広報物を配布したり、運河はダメというメッセージを伝えるシャツやハンカチなど、またイベントでは大型掛けスクリーンを通じて、国民に対しての広報も積極的に行ってきました。各界の著名人が、自発的に韓半島運河や京釜運河はダメという宣言を行い、専門家たちとの連帯活動も同時に行ってきました。
 2007年9月に環境運動連合の活動家約30名がソウルの漢江の蚕室水門でチェーンでお互いを縛って京釜運河の中止を呼びかけるキャンペーンを行いました。韓国でもこのような危険なアクションは違法ですが、韓国運動連合だけではなく韓国の運動家は、違法でも韓半島運河だけは必ず中止しなければという強い意志をもって、あえてアクションを起こしたのです。
 また、李明博大統領当選後、政権引継ぎ委員会が作られ、その中に運河を推進するチームが組織されました。この事に抗議し運河を進める前に国民と一緒に検証できる国民検証機構を作ることを要求する記者会見とキャンペーンを行いました。このキャンペーンには、全国から100人以上の市民が一緒に参加してくれました。京釜運河阻止を求める2500人の市民や有識者が一緒に京釜運河OUT、京釜運河退場を求める記者会見も行いました。
 面白いキャンペーンとして、洛東江付近で耕運機に乗ってキャンペーンを行いました。耕運機を使った理由は、耕運機の平均速度が12km/hに比べ、運河を通行する船舶の平均速度が9km/hだからです。速度が命である物流業界において耕運機より遅い運河貨物船はまったく競争力がなく、古い遺物と同じであることを伝えたのです。
 2008年3月22日には、水の日を記念して、漢江で市民2000人が参加した韓半島運河白紙化市民一堂イベントも行いました。
 5月中旬になると、韓国ではろうそく集会が非常に大規模かつ活発に行われるようになりました。そこでろうそく文化祭の会場などで、BSE牛肉問題だけではなく、運河問題も一緒に知らせるろ宣伝材料も配布しました。ろうそく文化祭は、非常に大きな成果をあげました。6月12日には、全国から100万名も集まって、BSE牛肉問題と韓半島運河問題など、政策面における問題について集中的に指摘したため、結果として大統領は少し一歩譲る姿勢ですが、依然として運河を進めようとしています。
 続いて、全国の大学教授が集まって「韓半島運河はダメ」という組織を作りました。韓国で1987年ごろに民主化運動が活発的に行われた際に全国教授の集会が結成されたこともあり、この全国の大学教授の集まりは、大きな意味を持ってあります。全国教授集会は様々な活動を行いましたが、一番大きな活動が韓半島運河活動でした。
 この教授集会には、進歩的な教授だけではなく、保守的な教授も一緒に参加したことが、運河白紙化運動に非常に大きな意義を与え、今後の国民の世論形成にも大きな影響を与えたと思います。
 この他、法曹界をはじめ各界の有識者たちも引き続き運河に反対するという記者会見や反対理由などを具体的書いた書籍を出版するなど、運河反対世論の形成に大きな後ろ盾となりました。
 また、キリスト教や仏教などの聖職者による「命の川を守る人々の巡礼」が2月から100日間、韓国の主な川を直接歩きながら、地域の市民や有識者と会い「川は命を抱き育む、川を守ろう!」というメッセージを伝える活動を行いました。この巡礼の終着点となったソウルでは、300~400人の市民が参加し、命の川を一緒に守ることの意味を改めて考える機会になりました。

 

  • おわりに

 李明博大統領は、選挙前に運河は国運隆盛の道、国民世論が低い時には、選挙後に国内外専門家によって検証する、当選後は、自分の大統領当選がイコール運河賛成の民意の反映だというように、運河に対する立場をコロコロ変えてきました。
 しかし2008年3月、4月になって、運河の支持率が2割を割り、反対が8割をこえると、6月19日の大統領特別記者会見で、国民が反対ならば運河はやめると発言しました。仮定法を使っての言い方ですが、この間の活動の大きな成果だと判断できます。
 しかしながら、最近一部の政治家が再び韓半島運河を進める動きを見せ始めています。韓半島運河財団を設立して、さらに積極的に広報に取り組んでいます。また、言論を利用して、運河は必ず必要であることを引き続き強調しているのです。よって、私たち市民社会は引き続きそうした動きに対して反対の声を上げ続けていきます。
 韓国には「船が山に行く」ということわざがあります。これは、人との意見が合わない時や、物事がうまくいかない時に使う表現です。韓半島運河は文字通り、船を山に引っ張るような事業なので、これ以上進めることをやめて、国民の意思にあわせるほうがいいという、静かながらも非常に強いメッセージを伝えようと、版画家のイチェルス先生が作品をつくってくれました。この作品を運河白紙化活動のロゴやシンボルとして利用してきました。韓半島運河事業は、単純に環境、水質、生態という問題ではなく、韓国での民主主義を守るための一つの巨大な闘争だと考えています。
 河川保護における韓国社会の動きは、韓半島運河論争を経験して、世界をリードする立場から、何十年も後退してしまったようです。これは、民主主義の危機とも考えられるので、進歩派も保守派も協力して韓半島運河だけはダメだという運動を続けてきました。
 再び運河構想を進めようとしている人びとは、政権の核に属す人びとです。たとえ推進派がどのような動きを見せても、必ず止めるというのが私たちの基本的な意志です。韓半島運河が韓国の未来が非常に不幸になると考えるからです。経済は破綻寸前に陥り、これまで成熟した市民の意識によって進めてきた環境に対する努力が一瞬にして崩壊するからです。
 2008年末から2009年はじめに、運河を推進する活動が再び本格化すると考えられます。その際には、アジアでこんなくだらない事業は恥ずかしいということで、中国と日本のみなさんにもぜひ協力をお願いしたいと思います。


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