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←会議日程(目次)に戻る 第4回 東アジア環境市民会議

第4回 東アジア環境市民会議
〈第2部〉「東アジアの水汚染解決に向けて」

2日目(10/12)

提案「中国における水汚染を防ぐために」

東アジア環境情報発伝所 運営委員/鳥取環境大学 准教授  相川 泰

 

 今回の会議は、新潟水俣病、特に被害者・救済支援者の立場からとしては初の国際会議と聞いています。新潟に限らず、中国の水汚染その他の環境汚染の深刻な状況が伝わるに従い、日本の公害被害地域や被害者・支援者の人たちが、中国に向けて公害経験の情報を発信し、国際交流、協力を進めていこうとする動きが、次第に活発になってきています。直接の経験者だけでなく、そうした経験を受け継ぎながら伝えていこうという人たちも、こうした動きの担い手に加わってきていますが、なおその数は少なく、十分ではありません。
 恐らく韓国も同じだと思いますが、日本の私たちが、中国の水汚染を防ぎ、被害救済に積極的に関わっていかなければならないのは、単に、日本に同じような問題に苦しみ、克服してきた経験があるからだけではありません。今回も中国からの複数の報告の中で、中国の環境汚染の直接・間接の原因として日本企業が関わっている事例が報告されました。中国の水汚染の原因の一部に、日本の経済活動があるのです。それだけでなく、経済のグローバル化と地球規模の生態系の営みによって、中国の水汚染の原因にせよ影響にせよ――正確な把握は困難かもしれませんが――、日本にも韓国にも様々な形で関係していることは否定できません。
 とはいえ、日本・中国・韓国を問わず、一般市民が直接的に「中国における水汚染を防ぐ」のは易しいことではありません。拙著『中国汚染』(ソフトバンク新書)では最後の方で、中国で水汚染を排出している企業の製品を買わないようにして下さい、という、中国のある環境NGO代表による日本の消費者に向けた伝言を紹介しました。それは、「中国製」なら何でもだめ(チャイナ・フリー)といった感情的な運動とは一線を画しながら、直接に「中国における水汚染を防ぐ」可能性がある方法だと考えたからです。しかし、中国の水汚染の原因企業は何千という単位で存在しています。しかも、現在、生産や流通が国際的に非常に複雑になっています。例えばお店である商品を買うときに、その商品の製造に関わった全ての企業を、その名前に限っても、店頭で知ることは不可能なことがほとんどです。仮に店頭でその商品の製造に関わった企業の名前が全てわかったとして、それを何千もある中国の水汚染企業リストと照らし合わせ、確かに汚染企業が関係していない商品だと確認しなければいけない、としたら大変です。ごくたまに、僅かな商品を買うだけで生活できるならばいいでしょう。しかし、そうではない多くの人々は、全ての買い物のたびに、全ての商品についてこんな確認をせよといわれても、途方にくれるだけでしょう。このような方法が、そのまま現実的な運動にできるとは考えられません。
 日本でも、四大公害をはじめ、深刻な環境汚染その他の企業災害をもたらした企業のことを考えると、原材料の一次加工業者など、消費者が直接その製品を購入することはまずない企業がほとんどでした。その結果、公害反対運動は不買運動とは違う形をとりました。そうした中には、例えば原因企業の株を買って、株主総会に出席して発言する、という「一株運動」もありました。現在、環境運動の一部に消費や投資を活用するものも存在しますが、汚染抑止の手段ともできるでしょう。
 しかし、こうした運動も、消費や投資の判断材料となる情報が偽装されていたら、本来の目的を果たせません。中国のみならず、日本国内でも、さまざまな製品の安全性とともに、関連する偽装が今も問題になっています。2008年の早春には、製紙業界の「環境偽装」も問題になり、「環境」もまた企業の「偽装」の対象となっていることが明らかになりました。こうした「偽装」の存在は、消費者が商品を買うときの正確な判断をますます難しくしています。
 この状況下で私たちは何ができるのでしょうか。自給自足や、顔の見える範囲内、せいぜい安全で汚染がないことが確実に保証される取引ルートの範囲内に物資の調達を限定しての生活、といった代替的な方法を模索するという選択肢もありうるのかも知れません。しかし、現にある複雑に入り組んだ経済社会を前提とするならば、そこに改善を求めていくことが必要でしょう。
 そこで国内でも国際的にも求めていかなければならないのは、消費者が的確に判断するための材料となる、正しい情報がきちんと企業から公開されることでしょう。それも、膨大な情報の洪水を作らせることではなく、簡潔で要点がわかり、その中で確かに安全や環境の面で問題がないことが確認できるような情報の公開です。その情報を通して、私たちが正しく必要な情報を得ることができ、それによって判断を下すことができれば、それがめぐりめぐって中国の水汚染も、他の環境破壊も防ぐことになっていくはずです。それはまた、単に企業に新規の負担を強いるのではなく、正当な努力を怠っている企業は淘汰されるかも知れないにせよ、正当な努力をしている企業はそれが評価され、一層の発展を促すことにもなると考えられます。
 以上のことも含め、2日間にわたった会議の議論を踏まえ、日本、中国、韓国に暮らす私たちが引き続き協力しあっていくために、この会議の成果として、「東アジアの水汚染解消と被害救済に向けた新潟宣言」を出すことを提案いたします。いまの説明と順番は同じではなく、また詳しく説明したものとほとんど触れなかったものとがありますが、下記5点の要点にまとめられます。

・公害・環境汚染のこれ以上の再発の防止と、既に起きた被害の解消・救済
・中国の水汚染克服に向けた取り組みへの協力
・企業に対する、安全や環境の面での問題の有無を判断するための情報公開の要求
・新潟水俣病の経験に学び続けていくこと
・公害・環境汚染の被害者と救済支援者の経験を受け継いでいくこと

 ご検討、適宜ご修正のうえ、ご賛同をいただければ幸いです。


(参考)ENVIROASIA記事より

東アジアの水汚染解消と被害救済に向けた新潟宣言」(後日確定)

宣言文の趣旨採択に向けた討論の様子など


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