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東アジア環境市民会議

日本の環境NGOの動向と課題、展望

 後藤 隆(環境NPO研究会 代表)

1.はじめに――日本の環境NGOの現状

 はじめに、日本の環境NGOの現状について説明する。なお、時間の都合上、環境NGOの定義付けや、生成に至った歴史・過程などは他に譲る。

  日本において、環境に限らずNGOの社会的な存在形態は、大きく2種類に分けられる。
 一つは、政府とは関係なく、自ら「NGO」または「NPO」「市民団体」などと名乗り活動するいわゆる「任意団体」である。その数は定かではないが、環境問題を対象とする団体に特化すると、目安としては、環境事業団は「2001年版環境NGO総覧」を編纂するにあたって、法人格を持つ団体も含めて14,000団体に調査表を発送していて(返送結果は任意団体・NPO法人含め4,132団体)、草の根レベルも合わせれば数万団体の存在がうかがえる。

  もう一つは、特定非営利活動促進法(1998年公布)に基づき政府(内閣府)及び全国47都道府県から「認証」を受けた「NPO法人」である。 内閣府によると、2002年9月30日時点での認証数は8,315法人で、2002年度中に10,000団体に迫る勢いである。このうち「環境の保全を図る活動」を行うものは、複数回答可で2,337団体、28.1%である。

 任意団体でなくNPO法人となることによるメリットは、現時点では法人格の有無による契約行為などの容易さ、社会的な信用度の向上、それらに伴う助成金取得の可能性増ーーなどにとどまり、アメリカの内国歳入法が規定する「ファイブ・オー・ワン・シー・スリー」のような税制上の優遇措置はほとんどなく、英国などの一部で見られる家賃補助などもない。

  「ほとんど」と言うのは、NPO法人がさらにパブリック・サポート・テストを通って国税庁の認定を受ける「認定NPO法人」になれば、寄付を受けた際の税制優遇が認められる特例があるためだが、この原稿執筆時点で認定されたのはわずか8団体に過ぎず、1000分の1と言う狭き門になっており、支援制度としての意味は無い。認証取得には人員・組織面での多くの規定をクリアし、取得後も行政への会計や活動報告が義務付けられるため、デメリットの方が多いと考える向きも多い。
※後藤氏の代わりに発表する廣瀬氏

  一方で、環境NGOを活動面から見ると、水や大気、廃棄物、土壌汚染、化学物質問題など公害や環境汚染の問題に取り組む団体、自然環境保全、トラスト団体、政策提言団体、公共事業の見直しを求める団体、まちづくり、消費者運動団体など、まさに多種多様であり、こうした環境市民団体のビジョン・ミッションを追っていけば、多様化・複雑化、そしてグロバライゼーションの影響を受けて国際化している日本の環境問題の様態の一端を知ることができるだろう。

  これらの団体がさらに、地球温暖化や水などのグローバルな問題と、特定の地域や個別の環境問題を対象とするローカルまたは専門団体に分かれ、それらの複合型も存在する。また、広義では公益法人や、政府や産業界の肝いりで設立された“GONGO”的団体なども含まれるだろうし、あり方から見ると、社会のさまざまな立場の人が集まるサロン型団体や、福祉など他の分野と同時に事業を行う多角経営型団体もある。さらに、政治・宗教団体と資金・人脈などの面で結びつきが深い団体も当然存在する。

  本稿では、前出の任意団体やNPO法人も含めた環境NGO/NPO/市民団体を、便宜上「環境NGO」と総称している。


2.市民の環境意識とNGO全般の認知度

 市民の環境意識に目をやると、経済発展に伴う環境・公害問題の深刻化、複雑化、多様化とその顕在化、そして被害の甚大さや対応の困難さを目の当たりにして、それは否が応でも高くなっている。

 環境省が消費者団体基本調査(内閣府、1998年)をもとに作成したデータによると、調査した4,594団体のうち、重複回答可ながら81.4%が「環境問題」を挙げていて、「食」や「高齢化」「教育」などを抑えてトップの関心事となっている。また、昨年の「国民生活モニター調査」(内閣府)では、回答者の3分の2が企業の社会的役割として「環境保護」を挙げている。さらに、グリーン購入への関心や実践のほか、炭素税などの環境税の導入を求める声も高いことが、民官のさまざまな調査から明らかにされている。

  こうした市民意識の変化に伴い、企業活動も変化しつつある。特に製造業では製品提供過程における工場でのゼロエミッション化が進んでいるほか、ISO認証取得などの環境マネジメントや環境報告書の作成・公表など環境パフォーマンス面での取り組み、グリーン調達なども盛んになっている。

  一方で、NGOへの関心や認知度も、この1年で大きく変化した。内閣府が2001年6月に、首都圏在住の20~70代の男女個人1,000人を対象に行った「市民活動団体の評価に関する調査」(有効回収数628人)では、NGOやNPOなどの市民団体の存在を知っている人は7割近くいることが分かったが、なんらかの形で活動に関わったことがある人は全体の約2割だった。

  しかし、国際NGOのフォスター・プランが2002年5月下旬から6月上旬に首都圏に住む10代から50代の男女を対象に行ったNGOの認知度、関心度に関する調査によると、「NGOという言葉を知っている」と「言葉も内容も知っている」を合わせた回答が9割を超えた。同調査ではまた、「NGOに興味がある」とした人が4割を超えたが、好感度や信頼度などのイメージでは肯定的な意見と否定的な意見がともに増えていた。NGOを知った理由としては「テレビなどのマスコミ」を挙げる人が77%に達し、2001年末からのアフガニスタン支援をめぐるNGO関連の動向や報道が大きいことが推測される。

  このように、市民の環境問題に対する意識と、環境NGOを含むNGOに冠する認知度は、ともに向上している。にもかかわらず、環境問題を改善していこうという市民の考えや思いが、環境NGOへの支援や参加につながっていかないことが、日本において市民主体の環境保全活動が活発化、発展してこなかった大きな原因となっている。特に、地球温暖化防止など重要な環境問題について、継続的かつ真摯な活動を続けてきた環境NGOを取り巻く社会・国際的な状況が悪化していることに、関係者として不安を隠せない。

3.環境NGO支援体制・ネットワークの確立を

 環境NGOに特化して、その本来的な使命である政策提言活動を充実しつつ、組織体、セクターとして発展、拡大し、成果を上げるための方策として、次の3点を提案する。

1)環境NGOへの一般市民からの支援や参加を促すための市民ベースのサポートシステムを構築し、支援の道筋をつける。

2)環境NGOを対象に資金、情報、人材など総合的な支援を行う市民ベースの第三者的なサポート組織を充実し、NGOの組織としての体制を確立する。

3)環境NGOを横断的につなぐ市民ベースの政策提言ネットワークを構築し、総合的な問題で連携し、専門分野で個別に活動する基盤をつくる。

 これまでも同様の構想や試みはあったが、市民側に行政と対峙できるだけの政策提言能力がなく、組織として持続的に継続的するための経済的基盤が弱く、情報や連携の機会も少なかったため、そのほとんどは成果を上げられずにきた。

  しかし、地球サミットやCOP3を始めとする国際会議を経て、日本の環境NGOの政策提言能力は飛躍的に向上し、ベテランと呼べるスタッフが多く育っている。また、前述した通り、市民団体を事業に注目して育てる社会的・制度的な土壌はでき、行政や政治の世界でもNGOとのパートナーシップを重視し始めている。

  さらに、インターネットの普及で市民は従来に比べてはるかに多くの情報を手にし、ネットワークは世界に広がっている。可能性は大きい。


4.おわりに――情報公開・市民参加の制度化が必要

 最後に、NGO活動の前提となる市民参加の課題について付言したい。
 2.で述べたように、市民の環境やNGOへの関心が高まっているのに社会全体の取り組みが弱いのは、行政が環境問題に限らず市民を政策に参画させずむしろ排除してきたため、市民参加が日本の社会に根付いていないことが大きいと思われる。環境意識の前段階である市民意識が極めて弱いのである。

  日本でも情報公開が2001年にようやく制度化されたが、一部の庁で開示請求者をリスト化して庁内で閲覧するなど人権を無視した行為が行われていたことが明るみに出て社会問題となった。また、90年代後半からパブリック・コメントが導入され、PIも始まっているが、行政手続上何の制度的な位置付けもなく、NGOを始めとする市民がいくら国などの政策や事業に意見を言っても影響力を持ち得ず、行政のアリバイ作りに堕しているのが現実である。

  これでは、NGOの数や参加者が増えても、政策提言など本来のミッションに基づいた事業のほとんどが徒労に終わる場合が多く、「芽は出る」が「育たない」ことの繰り返しになる。こうした問題を克服するためには、不完全な情報公開制度を正常なものとし、市民があらゆる情報にアクセスする権利を保障すること、そして、市民参加を制度上位置付けることをNGOセクターが一体となって先導し、国民的な運動にしていくことが必要であろう。


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