東アジア環境市民会議
韓国の生物多様性保護のための努力
韓 尚勲(国立公園管理公団 ツキノワグマ管理チーム)
今年、2002年日韓のワールドカップの共催もあり、日本では韓国に対する注目が集まり、近くて遠い国ではなく、本当に近い国という認識が高まったと思います。また中国では、最近、韓国の若者文化の交流や、韓国のドラマが中国で紹介され、韓国文化の風が非常に吹き、韓国への関心が非常に高まっています。これから、韓国は非常に面白い国であり、ユニークな国であるということをこれから説明したいと思います。
生物多様性には、皆さんよくご存知のように、種と生態系、それから遺伝子があります。まず基本的に生態系がどういう構造になっているか、山岳とか森林とか干潟、海洋、いろいろな面での生態系の類型があります。その類型の構造のなかに、構成因としての種があります。種は、それぞれの地理的隔離とか環境によってそれぞれ固有の遺伝子をもつような構造になっています。朝鮮半島の一番北の方に韓国では白頭山という韓民族にとって一番神聖なる山があります。中国ではチャンカイ山と言います。韓国の山々は皆つながっており、一番南の智異山まで全ての山が一つのEcological Corridor(生態回廊)として生態ツールになっています。我々人間の脊髄と同じような形です。そこからまた横並びに、中国方向に山が、人間の肋骨のように、13の山脈が走っています。その山と山の間に川が流れていて、それが静脈のように流れています。韓半島の土地は我々人間と同じように考えるといいと思います。
そのなかで、南の韓国だけで約十万種の生物が記録されています。生物多様性の一部分である哺乳類では、虎とか豹といった大型の肉食類が韓国には生息しています。大型の食肉哺乳類がいるということは、その基盤になる、餌になる動物や、それらに食べられる、植生になる、植物性が裕福で多様であることを示唆しています。すなわち、韓国の生態系は非常に健康性が高い、自然性が高い土地であることを意味しています。
また鳥について、韓国はオーストラリアから北極圏に渡る鳥の重要な中継地として干潟があります。そして、韓国の周りには約4000の島があります。そのうち約340の島に人が住んでおり、3700ぐらいが無人島ですが、その無人島に、クロツガヘラサギとかシラサギというような、国際的な絶滅危惧種が繁殖しています。あと両生類、爬虫類は、それほど種は多くないのですが、だいたい北系統のものが多いです。また、魚の中でも特に淡水魚は地理的隔離で川がないと交流できないので、固有性が高く韓国の全種類の50%が固有種です。
このように、種というのは動物の分類区によって歴史が違うので、日本の場合は、約2000万年ぐらい韓半島と陸地的な交流がありましたが、島になってから固有性が高くなってきました。しかし、韓半島は中国と国境が陸続きになっていますので、今も動物は行き来しています。それぞれの移動能力によって固有性が高いものと、固有性が高くなく遺伝的交流が行われる分類群があります。生態系は韓半島全体が人間の体と同じように非常にユニークな構造をしています。それで、その山の自然性が高いので、周りの川、海の海産物も非常に豊かでした。しかし最近、山の森林伐採や林道建設、いろいろな開発によって、特に日本では日本海と呼ばれている方に、海の沙漠化、白化現象が起こって大変になっています。遺伝子の場合は、まだ詳しく調べられていないのですが、私が韓国の哺乳類の3割ぐらいを調べたところ、日本や中国と非常に近縁関係が高いということが分かりました。
次に、韓国は貴重な生物多様性を守るために、政府と民間でどのような活動をしているのか説明します。最近、韓国では政府の組織改革があり、野生動物、生物多様性に関する管理機関が一つにまとまり、環境部がその責任を果たしています。現在は、法的な部分の整備をしています。例えば野生動物保護及び鳥獣保護法律に関して今改訂を行っていますが、それを野生動物保護法に名前を変えてやっています。それに関わる農林庁、山林庁、それから文化財庁というところから非常に反発があり、なかなか法整備が進んでいません。
また、民間の場合は、国ができないことを、特に今回、韓国環境運動連合の場合、クロツラヘラサギの国際的な協力調査も行っています。また、まもなく中国では、クロツガヘラサギと関連のある国際会議も開かれる予定です。私のやっている野生動物連合では、特に日本と深く関わりがあるのですが、例えば、ツル類を守るために釧路市の民間団体と韓国の市と姉妹校流を行ったり、カワウソ復権のために日本のある市と韓国のクレ郡で姉妹校流を進めています。また、対馬山猫の問題を解決するために、韓国の山猫の調査も行っています。
中国との関係では、熊を守るために、日本、韓国、中国で共同調査も行っています。昨年と今年、中国と日本でフォーラムも開きました。ロシアの場合は、調査も手がけますが、ロシアの民間団体に少し資金的な支援をしています。このように韓国の場合、政府は、いろいろやろうとはしていますけれども、いろいろな機関を通してなかなかうまくコミュニケーションができずに難しい面がありますが、国ができない、国がまだ思いついていないところは、民間レベルで非常に活発にできることがあります。今回のフォーラムもそうだと思いますが、そういうように民間がもっと力を出し合って、また、国を越えた国際協力のなかでの活動は、生物多様性を守るためのこれからの課題だと思います。
笂単ark Jong Hak : 朴鐘鶴
【参考資料】韓国の生物多様性保護のための努力 1992年のリオ・地球サミット以後、韓国の生物多様性保全のための努力と活動は主に政府によって主導されてきた。韓国政府は1994年10月3日生物多様性条約に加入し、生物多様性保全のための国家戦略報告書を1997年に作成し、生物多様性条約事務局に提出して、1986年から10年単位(実際の事業遂行は5年単位)で施行されている自然環境全国基礎調査(別添、表1)は、現在第2次事業(1997-2001、2003年まで延期)が終盤に差し掛かっている。
第1次作業の主要成果は緑地自然図を作成し、開発による環境影響評価についての自然環境保存の基礎資料とした。現第2次作業の主な目標は自然生態地図の作成にある。自然生態地図は全国土を生態的自然性と優秀性によって5等級に分けて、持続可能な成長のための体系的な国土の自然環境を管理することにその目的がある。 現在の韓国において、環境部主導の生物多様性保護のための法的体制整備がなされているが、文化財庁、山林庁、建設交通部、産業資源部など、関係機関との摩擦が日に日に深刻となっており、基礎学問に対する政府と社会からの冷遇によって学術的研究基盤の環境が劣悪な中、未来は決して明るくない。これを克服するためには民間環境団体の生物多様性保全のための努力と活動が速やかに要求される。
1.生物多様性保全のための活動内訳(細部項目は別添参照)
(1)政府
1)自然環境全国基礎調査実施中(環境部)、研究支援拡充(環境部、科学技術部)
2)生物多様性情報化作業推進(環境部)、生物産業技術研究及び遺伝子バンク構築中(科学技術部、農林部)
3)管理部署設立(環境部国立環境研究院生物多様性部を新設)
4)制度的・法的体制整備中(環境部)
(2)民間レベル
学者、専門家中心の生物多様性協会が設立され、東南アジア及び東北アジア生物多様性保存ワークショップなどが開催されたが、全体的な活動は経済的困難により麻痺している。現在ユネスコ韓国委員会による人間と生物圏保全計画(MAB)のための活動が政府の支援下で活発に進行中にあるが、研究よりは行政及び会議参加水準にとどまっている。
(3)国内生物種の現況
約10万余種が知られている。
<表1
designtimesp=18304> 第1・2次自然環境全国基礎調査比較
| |
第1次全国基礎調査 |
第2次全国基礎調査 |
|
目的 |
全国自然環境現況の把握 |
全国自然環境現況の把握 |
| |
|
自然生態地図の作製 |
| 主要調査分野 |
動・植物の現況 植生図 緑地自然図 土壌及び水質 |
動・植物の現況、特定動・植物の分布 植生図 地形景観 湿地(海岸線)調査 |
| 事業期間 |
1986-1990 (5年間) |
1997-2001 (5年間) |
| 事業費 |
総計2,003百万ウォン |
総計15,282百万ウォン(案) |
| |
|
(97年予算、1,200百万ウォン確保) |
| 所要人員 |
約240余名/年 |
約450名/年 |
| 調査区域 |
行政区域別区分 |
生物・地理的圏域別区分 |
| |
郡単位を基準に区分 |
重点優先一般調査圏域区分 |
| 調査員 |
中央専門家中心(3人/分野別) |
現地専門家中心(2人/分野別) |
| 調査期間 |
一定期間調査 |
四季(を通した)調査が原則 |
| 調査日/年 |
約60日/年 |
約15日/年 |
| 調査手当 |
1万ウォン, 2万ウォン (89年以後)/日 |
5万ウォン/日 |
| 生態系調査団 |
修士・博士クラス (17名) |
博士・修士クラス(総計12人) |
| |
調査結果の編集 |
直接調査・調査結果の整理 |
<表2> 自然生態系優秀地域及び野生動植物関連保護区域
| 区分 |
法 律 |
担当部署 |
指定目的 |
| 自然生態系保全区域 |
自然環境保全法 |
環境部 |
生態系保全及び絶滅危機及び保護野生動植物保護・棲息地保全 |
| 特別生態系保全地域 |
自然環境保護法 |
環境部 |
野生動植物特別保護区域、自然生態系特別保護区域、海洋生態系特別保護区域に細分 |
| 鳥獣保護区域 |
鳥獣保護及び狩猟に関する法律 |
環境部 |
野生鳥獣の保護・繁殖 |
| 天然記念物保護区域 |
文化財保護法 |
文化財庁 |
天然記念物の保護 |
| 天然保護林 |
山林法 |
山林庁 |
生物の遺伝子と種または自然生態系などの保全 |
| 湿地保護区域 |
湿地保全法 |
環境部 |
自然生態養護地、珍種・絶滅危機種の渡来地及び棲息地、景観優秀地域の保全 |
| 特定島嶼 |
独島等島嶼地域の生態系保全に関する特別法 |
環境部 |
自然景観保全、絶滅危機種など固有生物種保護とその棲息地及び渡来地、自然生態系の保全 |
| 自然公園 |
自然公園法 |
環境部 |
自然景観の保全及び適切な利用を図る |
| 生物圏保全地域 |
ユネスコ人間と生物圏計画(MAB) |
環境部 |
生物多様性保全、地域社会の発展、文化価値の維持など |
< 表3> 環境部門及び環境部予算が政府部門で占める比重
|
区 分 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
| 政府予算(億ウォン) |
983,299 |
1,103,139 |
1,200,206 |
1,251,792 |
1,347,897 |
| 環境部門合計(億ウォン) |
27,747 |
28,121 |
27,636 |
30,581 |
33,318 |
| (政府予算対比%) |
2.49 |
2.33 |
2.09 |
2.32 |
2.36 |
| 環境部 |
10,802 |
11,131 |
11,536 |
13,023 |
14,143 |
| (政府予算対比%) |
1.10 |
1.01 |
0.96 |
1.04 |
1.05 |
資料: 環境部、2001、予算関連資料
<表4> 環境部所管予算部門別投資現況(単位:億ウォン)
|
区 分 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
| 計 |
10,802 |
11,131 |
11,536 |
13,023 |
14,143 |
| 上水道 |
2,727(25.2) |
2,171(19.5) |
2,416(20.9) |
2,442(18.8) |
2,836(20.1) |
| 水質保全 |
2,957(27.4) |
3,520(31.6) |
3,552(30.8) |
4,092(31.4) |
3,691(26.1) |
| 廃棄物管理 |
2,717(25.2) |
2,666(24.0) |
2,686(23.3) |
2,865(22.0) |
3,024(21.3) |
| 大気保全 |
89(0.8) |
74(0.7) |
95(0.8) |
465(3.6) |
615(4.4) |
| 自然保全 |
63(0.6) |
483(4.3) |
592(5.1) |
742(5.7) |
848(6.0) |
| 環境技術研究 |
1,335(12.4) |
1,184(10.6) |
1,140(9.9) |
1,267(9.7) |
1,875(13.3) |
|
その他 |
914(8.5) |
1,033(9.3) |
1,055(9.1) |
1,150(8.8) |
1,254(8.8) |
注)()は全体予算で占める比率、%資料:環境部、2001、予算関連資料
<表5> 自然環境保全分野の細部予算内訳(単位:百万ウォン)
|
事業名 |
'00予算(A) |
'01予算(B) |
増減(B-A) |
比率(%) |
備 考 |
| 自然環境部門小計 |
74,238 |
84,763 |
10,525 |
14.2 |
― |
| 野生動植物部門小計 |
3,009 |
3,044 |
35 |
1.16 |
― |
| 生態系優秀地域管理 |
1,154 |
1,181 |
27 |
2.3 |
湿地埋立、生態系保全施設管理等 |
| 野生動植物保護対策 |
881 |
280 |
△601 |
△68.2 |
絶滅危機種生態調査等 |
| 野生鳥獣密猟取引防止 |
598 |
1,193 |
595 |
99.5 |
密漁監視団支援、取締班運営など |
| 絶滅危機野生動植物保護 |
87 |
123 |
36 |
41.4 |
負傷した動物の治療、白鷺斃死マラリア調査等 |
| 野生鳥獣管理 |
289 |
267 |
△22 |
△7.6 |
野生鳥獣棲息実態調査 |
資料:環境部、2001、予算関連資料
|