東アジア環境市民会議
韓国の環境問題と市民環境運動
徐 注源(環境運動連合 事務局長)
1.最近の韓国の環境運動
市民社会と政府や企業とは、基本的に緊張関係に置かれざるを得ないが、新自由主義(ネオリベラル)的な経済秩序の再編期にある韓国では、市場主義原則による開発主義が本格化すると、市民環境団体との緊張が一段と高まった。セマングム事業の強行で、各種協力関係のための委員会からの撤収をきっかけに、友好的な態度を見せるだろうという、政府に対する期待を捨てるようになった。また企業に対する各種の規制緩和措置によって、企業と市民社会の直接的な対立関係が形成された。
最近の韓国社会において、市民環境運動は、大きく新自由主義に立脚した環境政策に対応して、既存の環境媒体別に懸案事業を中心に消極的に抵抗してきたことから脱却し、国土環境政策のような、根本的な問題提起と代案を提示するというように変わりはじめた。さらに地球環境問題の解決のための、国際的な流れにも沿う努力をしていると同時に、緑の政策実現のため、地方自治選挙に政党の形でも、無所属韓国緑の党候補の形でも参加した。 (1)新自由主義的な開発独裁に抵抗
金大中大統領政府は、IMF危機を克服しなければならないという課題を抱えて発足、新自由主義の経済原理による国際資本の統制を受けざるを得ないという制約を持っていたが、徹底的に市場競争原理と新自由主義に立脚する国政運営を行い、その結果、開発による経済優先主義が、全体的な基調になった。市場の活性化のための各種開発事業の意欲的な推進と、自由な企業活動の保障のため、環境管理に必要な各種環境管理規制の緩和措置へとつながった。
経済特区の設定、グリーンベルトの解除、公企業の民営化、セマングム干拓事業、大型ダム建設事業の推進等の開発事業と、各種認可事項および、大気汚染の主犯であるディーゼル車両に対する規制緩和等が、規制改革委員会を通して成された。これは環境部門においてのみならず、労働、教育、医療等、社会各分野に及び、達成されたため、様々な社会運動勢力が、反グローバリズム、新自由主義体制反対の旗幟の下で結束しながら、政府と企業へ対する戦線を形成していった。IMF危機の翌年に結成されたソウル国際民衆会議、また2000年のASEM(アジア欧州会合)に対する、労働組合、農民団体と市民社会団体の共同対応がなされた。さらには、民衆運動と市民社会運動は、新自由主義のグローバリズムがもたらした、否定的な問題のひとつとして環境問題を共に認識しながら、反グローバリズムの流れに乗る環境論を共有し始めた。 (2)国土利用計画等、根本的な問題提起
この間、韓国の環境運動は、環境汚染や環境被害事例のような懸案問題に対し、問題提起をし、対策を要求するなど、事業を撤回させる事後的で受動的な運動が中心をなしてきた。しかし最近、ダム政策、グリーンベルト問題、乱開発、4大江特別法、国立公園、セマングム干拓事業、白頭大幹とDMZ(非武装地帯)問題等、国土利用の持続可能性を念頭においた問題提起と、代案提示が活発に成されている。
生活様式自体を親環境的に変化させ、都市を環境親和的空間に再編する試みがなされ、各種開発事業へ環境面を優先するようにする等、開発と成長優先主義から新しいパラダイムに立脚した国土利用を要求するなど、より持続可能な発展のための根本的な運動が活発になっている。 (3)新たな試み・緑の政策
環境問題解決のための過程で、自ずと現実的な政治への参加を考えざるを得なくなってくるが、現代の文明様式を根本的に変化させる緑の政策は、一方では地方自治選挙に積極介入する形であらわれ、もう一方では、緑の政党を創設する動きとしてあらわれた。地方自治選挙へ参加した多数の緑の政党候補は、15名の地方議員当選となったが、緑の政党設立は社会的撹乱から合意に達することができなかった。 (4)地球環境問題解決のための国際連帯の強化
南アフリカ共和国のヨハネスブルグで開かれたWSSD(持続可能な開発に関する世界首脳会議)に、韓国のほぼ全ての部門の社会運動勢力が民間委員会を組織して積極的に参加した。中国の黄砂問題解決のための努力、UNEP(国連環境計画)と共同の豆満江(トゥマンガン)プロジェクト遂行、ODAの資金で遂行されるフィリピンのラグナ湖の大型ダム反対運動での国際協力活動等、アジア地域での環境運動は活発に進行された。このような変化の結果、来年からはNGOアジアセンターを東南アジア地域に設置することが推進中であり、他国のNGOとの相互交流がなされる見通しである。 2.韓国の代表的な環境問題
(1)大規模干拓事業―セマングム干潟干拓
・世界5大干潟の1つであるセマングム地域等の干潟干拓が進行中または計画中である。
・韓国西海岸セマングム干潟に、農地造成と食料確保のためという大義名分で、世界最長の長さ33kmの防潮堤を建設、20,800ha規模の干潟を干拓している。
・現在、米自給率100%を超え、1,000万トン以上の備蓄量があり、米増産政策を諦めているが、遊休農地が多く農地の他用途転換を推進する状況でも、農地造成用干拓事業が進行されている。
・市民環境団体および、宗教界の反対運動で、国民の83%が干拓事業に反対する国民的世論が形成されたが、2001年5月、政治的論理により事業の強行が決定した。 (2)大型ダム建設事業―28基 新規ダム建設
・2000年6月5日環境の日、大統領が、江原道(カンウォンド)・東江(トンガン)ダム建設の白紙化を決定、ダム建設より生態系を保障しようという環境団体と国民の支持により、政府主導の大規模国策事業、最初の撤回。
・2001年、再び全国12ヶ所に新規ダム建設推進/2001年まで28基のダム建設推進予定。
・政府の計画にもかかわらず、ダム建設予定地の住民の反対運動は続けられており、特に、漢灘江(ハンダンカン)ダム周辺地域住民は、1万人以上が反対集会に結集し、建設されたダムの被害を受けたトアンダム周辺地域の住民は、ダム解体運動を展開している。 (3)大規模な核団地化推進―原子力発電所追加建設および核廃棄場建設
・韓国は、16基の原子力発電所が稼動中(世界6位)、4基建設中。2030年までに総計36基の原子力発電所建設予定。
・80年代後半にはじめられた、原子力発電所に対する反対運動の広がりで、原子力発電所の候補地選定が難しくなると、政府は既存の原子力発電所稼動地域近隣に敷地を確保、ひとつの地域に10~14基以上の原子力発電所を建設するなど、核団地化計画推進。
・近年、核廃棄場予定地として、霊光(ヨンガン)、高敞(コチャン)、珍島(チンド)地域が発表され、核廃棄場反対運動が展開されているが、すでに各種核施設がある地域での原子力発電所追加建設反対運動は、住民運動が組織化されず、反核運動は困難に直面している。 (4)駐韓米軍 環境汚染―96ヶ所米軍基地の環境破壊、災難的水準
・米軍が駐屯して以来犯した犯罪行為は、10万件を超えている。全国96ヶ所の米軍基地は、ソウル市の半分、仁川(インチョン)市の1.5倍の広さの土地を占めており、この50年間、梅香里(メヒャンニ)の住民が受けた精神的、身体的、経済的被害からわかるように、米軍が韓国国民と環境に及ぼす被害は災難的水準。
・龍山(ヨンサン)、原州(ウォンジュ)、儀旺(イウォン)等、全国の米軍部隊から長期間にわたりガソリン、廃油が流出され、周辺地域を汚染。毎日3,000トン余りの汚染排水を無断で放流した群山(クンサン)の米空軍基地。建築廃棄物・排水を不法埋め立て、放流した平沢(ピョンテク)烏山(オサン)基地。このような駐韓米軍の環境破壊行為がここ数年間、住民と市民環境団体の活動により知られるようになったと同時に、韓国社会の主要な課題となっている。
・梅香里(メヒャンニ)の米軍爆撃機による騒音被害を住民の訴訟へ繋げたなどの進展はあるが、SOFA(韓米地位協定)環境条項で米軍基地は今だに治外法権地域であり、米軍基地に対し刑事権と、米軍の環境汚染行為等への国内法適用を妨げている、韓米相互防衛条約、韓米駐屯国地位協定等の、根本的な課題を解決しなければならないことが、運動の主要課題である。 (5)生活の環境汚染―食品安全、有害廃棄物、化学物質汚染
・輸入農産物及び食品について、ダイオキシン、重金属、農薬汚染等に無防備な状態であることが明らかになったことの他に、輸入農産物検疫体系等、食品の安全面が確保されていない。
・韓国はOECD(経済協力開発機構)加盟国中、有害廃棄物発生量が、メキシコ、スペインの3倍の水準で、ドイツに続き2番目である程、有害廃棄物が問題かつ深刻だが、管理体系が不十分。
・国民の環境に対する意識の成長にもかかわらず、公害問題と生活の環境問題は、相変わらず改善されておらず、環境団体の運動も組織化・活性化していない。
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