水なくして未来なし―中国の水資源循環経済

 陳 琨(中国持続可能発展研究会)

  “水なくして、未来なし(No Water No Future)”。水資源、その中でも淡水資源は、人々の生命、健康及び生存するための生態系統に至るまで重要な関わりがある。国家の発展にとっても、水資源は最も基本的な条件のひとつであり、水を欠いた発展は不可能であり、未来はない。

 終了したばかりのヨハネスブルグ・サミット(WSSD)では、水問題は会議の中心的な議題であった。サミットでは、特別に水展覧センター(WATER DOME)や、数多くの水フォーラム(Water Forum)が開催された。サミットの今後の実施計画の議論において、アナン事務総長は、飲用水・エネルギー・健康・農業・生物多様性などの問題に特に関心を持つ必要があると述べた。英語ではWEHAB(Water、Energy、Health、Agriculture and Biodiversity)と称し、この5つの領域の中で、水が最優先であり、その他の領域もそれぞれ水と密接な関係がある。

 現在、地球は非常に厳しい水資源の危機に瀕している。世界銀行の調査報告によると、現在世界の80カ国、地球全体の40%を占める人々が水資源の危機にある。水不足は人類の生存を脅かし、経済と社会の持続可能な発展を制約し、衝突と戦争をも招かざるを得ない。人々が故郷を離れる要因は、もはや戦争ではなく、水不足であり、水不足が人間の生存にとって最も重要な要因だと考える人もいる。現在、これまでの定義による難民は2200万人だが、水不足によって発生する‘環境難民’や‘生態難民’はすでに2500万人に達しており、2025年までに水不足による難民は1億人に達すると予測されている。

1.中国水資源の特徴

(1)一人あたりの水資源の欠乏
 中国は世界で最も人口の多い発展途上国で、年間平均総量27,115億㎥の降水量があり、水資源総量は世界第6位に並んでいるが、一人あたりの平均占有量は世界平均のわずか25%であり、すでに統計された149カ国で121位に並び、一人あたりの水資源が乏しい国で、全世界の水資源が最も貧しい13か国の一つである。

(2)水資源時空分布の不均等
 中国水資源の時空分布は非常に不均等で、人口・耕地・鉱物資源分布状況との協調性がなく、社会経済発展の需給にも適合せず、特に水資源の需給の矛盾が突出している。時期的には、中国の年間降水量の70~90%は夏季に集中しており、冬季は降水量が非常に少なく、その上、降水量の年次推移は非常に大きい。空間的には、水資源の分布は東南が多く、西北が少ない。長江流域およびそれ以南の地域が全国の水資源の80%以上を占めている。また、淮河流域およびそれ以北の乾燥地域の水資源占有率は全国の20%にも満たない。水資源の時空分布不均等および年次降水量の変化の大きさが干ばつ災害の発生を加速させている。

(3)水汚染の深刻さ
 2001年の中国環境状況報告によると、程度の差こそあるものの、全国の七大河川はすべて汚染されており、半数以上は水質レベル五類と劣五類に属する。都市およびその付近の川の汚染はさらにひどい。全国の湖とダムは全体的に汚染されており、滇池、太湖と巣湖の三つの富栄養化問題が突出している。

 地下水汚染の汚染面は50%に達し、海河、遼河と淮河の河流域内の多くの都市や農村の地下水が、すべて程度の異なる汚染を受けている。水汚染は、もともと十分に緊迫している水資源不足の状況を加速させた。水汚染は都市や農村に住む人々の飲み水の安全を脅かし、同時に土壌・食品の汚染を引き起こし、さらに人々の健康をも脅かしている。
 

(4)長年の地下水の超過採取、埋蔵量不足
 水の使用量の絶えない増加によって、地表の水不足や汚染がますますひどくなっており、ある地方では地下水の大量採取のみで工業や農業と生活の需要を満たさなければならない。現在、すでに全国の多くの地域の地下水は長年にわたり超過採取されている。ある沿海地域での地下水の層はすでに海水の浸入を受けていて、進入面積が1500k㎡を越えている地域もある。地下水の採りすぎは、都市で地盤沈下、地盤陥没や地面の亀裂を引き起こしている。西北の内陸のある地区で、地下水位の絶えない下降によって荒漠化や砂漠化の面積が年々拡大し、直接的にこれらの地域の基本的な水供給と住民の生存に影響を与えている。

(5)水資源と相関する自然災害の深刻さ
 水資源は中国の重大な自然災害の発生に影響を与えるため、特に水資源と関係の深い三大自然災害が顕著である。すなわち、干ばつ災害・洪水災害・水土の流出である。

 古来より、干ばつと洪水は中国人の悩みであった。新中国成立後は、農地の水利用の基本建設を強め、干ばつと洪水の予防能力を大幅に高めた。しかし、地球全体の気候変化など多種多様な要因によって、干ばつは依然として頻繁に発生している。中国で起きる自然災害の中で、干ばつは中国の食糧生産に影響を与える主要因である。

 中国は世界中でも、洪水が頻繁に起こる国のひとつであり、毎年程度の違う洪水が起こり、特に雨季には突発的な大範囲の豪雨が山の洪水・水位の膨張・河の堤防の決壊を起こし、生命財産など重大な損失を招く。中国は世界で水と土の流出が最もひどい国のひとつである。全国全ての省(自治区・直轄地)は程度の差こそあるものの、みな水土流失があり、特に長江の上流や黄河の中流が最もひどい。

2.中国水資源の循環経済

 中国水資源の特徴は、情勢を厳しいものにするということである。21世紀の数多い中国の環境問題の中で、水資源問題が一番の悩みである。現在、全国の一人平均の水資源占有量は下降の一途をたどっている。水資源使用と管理の面で、水資源不足と水の浪費の並存、災害と生態バランス崩壊の並存、水環境の汚染と水管理の不良が並存するなどの矛盾がある。中国は今後長期にわたって、引き続き人口の増加、都市化の圧力に直面し、水資源の需要がますます大きくなるだろう。人口・社会・経済・環境の協調的な発展と、長期にわたる安定的な水資源の供給を保証するため、水資源を開発利用する上で効果的な突破口が必要である。水資源の一体化管理を強め、循環経済を創出し、水資源の経済的な循環利用を実現させることは、すでに中国の社会経済が発展するための最も鍵となる問題のひとつになっている。

(1)水立法と水資源循環経済の管理規制の強化
国連持続可能な発展サミットは、多くの国の水資源は依然として脆く壊れやすく、その多くは資源管理不良によるもので、実際の水不足ではないと指摘した。このことから、水立法と水資源循環経済の管理規制の強化は、水循環経済実現の前提であると言える。

 中国政府の関係部門は、すでに水資源に対する総合企画と合理的配置の実施を決定し、水資源の現状を更に詳しく調査している。水資源の負担能力の分析を基礎に、天然水資源の合理的開発・利用効果の拡大・分配・全面的な節約・保護・総合的治水などを考慮に入れ、科学管理局の法案を制定する。今後、一定期間内での水資源の開発利用と管理活動を根拠基準として、水資源循環経済を実現し、水資源の持続可能な利用によって経済社会の持続可能な発展を支えていく。

(2)節水社会の建立、水の有効利用率の引き上げ
 今年10月、中国は新しい水に関する法律を実施した。新しい法律は、特に節水優先を強調し、節水型工業・節水型農業・節水型サービス業を発展させ、初めて節水社会の建設に力を入れることを提唱し、水の節約、節水型社会の建立及び水資源の保護を、中国の基本的政策にすることを決定した。

 中国は農業大国であり、農業用水は総用水量の73.4%を占める。(農村の生活用水も加えると81.7%。)長い間、中国は大まかな農業灌漑方式を採用しており、水の利用効率は非常に低かった。現在の灌漑用水量は、合理的な灌漑用水量の倍以上であるとの報告もある。中国の農業灌漑における節水の潜在能力はかなり大きい。政府関係部門は、節水灌漑と節水農業を積極的に推進している。各種の農業節水措置の採用により、直ちに農業灌漑水の有効利用係数を0.5まで引き上げる予定である。
都市と町の節水は水の循環利用を強め、水の浪費を克服し、都市の配水管ネットワークと用水器具の水漏れ損失を減少させるだろう。

(3)クリーナープロダクション、処理済工業排水の循環利用経済の推進
 90年代以降、世界各国はクリーナープロダクションに力を入れ、広く処理済工業排水の循環利用を採用してきた。この措置を採用したため、20年来、日本とドイツの工業水量は増加していない。現在、アメリカの鉄鋼業は1トンの鉄鋼に必要な280トンの水のうち、14トンだけが新たな注入水で、残りはすべて循環水としている。

 中国は1993年からクリーナープロダクションを開始した。今年は《クリーナープロダクション促進法》を公布した。2000年までに、中国の工業廃水の再利用率は70%以上に達しているが、世界先進レベルの90-95%には、まだ大きな差がある。現在の中国工業用水効率の予測によると、2030年の工業年用水量は1100億m3から2000億m3に増加し、用水の量が約2倍になる。中国は今後もクリーナープロダクションを大きく推進し、プロセスの改善、循環用水の再利用と用水効率を高めることをめざしていくと思われる。

(4)都市での‘中水’使用の積極的な推進
 ‘中水’の利用は水循環経済の重要な部分である。現在、世界には水の再利用率が75%以上に達している都市もある。中国では、北京・天津・大連・青島などでの水資源再利用率が70%に達するのを除いて、大部分の都市の水資源再利用率はわずか30~50%である。更に低い都市もある。

 現在、中国は都市部で水資源の再利用を強化し始めた。特に水不足が比較的深刻な都市では、すでに‘中水’の実質的応用を試験的に始めている。建設した‘中水’再利用システムにより、処理済の生活・生産汚水を再利用中水にし、トイレ用水、草木用水、道路掃除用水、洗車あるいは基礎工事用水、冷却水、工業用水や、その水質基準を受け入れることのできる用途に用いている。

(5)水資源の再開発
①雨水の貯蔵
 自然的要因などによって、中国の西北地区、特に黄土高原地域は極度の水不足地域である。これらの地区の年間降水量はわずか300~400mmであるにもかかわらず、蒸発量は1500~2000mm以上に達する。現地の一人平均の水資源使用量はわずか110m3で、全国の一人平均使用量750m3の15.3%であり、世界一人平均使用量2970m3の3.7%である。現在、中国西部地域の1000万人近くが飲用水確保の極度な困難に直面しており、ここは生活が最も貧しい地域のひとつでもある。

 長期に渡る水不足に苦しむ農民は、雨水を集める豊富な経験があるが、貧困により雨水舎修理の資金が不足している。これら貧困地域住民の生活用水問題の解決を助けるため、特に水不足地域の母子に注意を注ぎ、中国婦女発展基金は、「大地の愛―母に水舎を建設する活動―」を実施し、社会的な支援を得た。2000年から西部15の省区60万の民衆がすでに益を受け、これがもっとも有効な方法であるという実践証明がなされた。

 

 都市における雨水利用において、中国はまだ初期段階である。10年前、日本はすでに10あまりの都市で雨水の総合利用を推し進め、専門の雨水庫による水供給を行っていた。東京では8.3%の歩道に透水性のアスファルトが採用されており、雨が地下に浸透し、蓄積されたのちに利用されている。

  オーストラリアのある都市では2つの集水システムがある。1つは生活汚水、もう一つは雨水を蓄積するものである。中国はこれらの経験を見習う必要があるだろう。

②劣質の水の利用
 中国はイスラエルでの劣質水の利用の成果に注目した。イスラエルは大量の大型汚水処理場の建設を通して、劣水の再利用を実現した。報道によると、イスラエルは汚水の利用と処理水の提供量は、すでに2000年に総水量の30%を占め、6億m3に達しているという。処理後の汚水の清潔度は非常に高く、飲用水の標準に近いものの、現段階ではまだ主に灌漑用水に利用している。

 中国西部と海水が進入する沿海地区は、現在1億あまりの人が、苦く塩辛い水を飲用している。近年、中国は劣質水の開発を進め、劣質水の応用研究を展開している。一定の塩分が含まれる地下水・都市の生活汚水と工業排水を処理した後、灌漑・消防・トイレ用水に利用している。1999年以来、中国沿海の山東省の苦く塩辛い水の地区には、20セット程の塩水淡水化装置が備えつけられ、地元7.2万の特に困っている人々の生活用水問題を解決し、中国劣質水の大規模使用のための経験を積んでいる。

③海水利用と淡水化
 中国には1万8千キロあまりの海岸線と300平方メートルあまりの海洋管轄区があり、海水利用とその淡水化は、淡水不足の問題解決に有効な手段である。推計によると、中国の都市用水の約80%は工業用水で、工業用水の中で約80%は工業冷却水である。もし、海水を今の工業冷却用淡水総量30%に代替させることができれば、沿海都市は20%近くの淡水資源を節約でき、同時に冷却水による環境汚染も減少できる。

 中国の海水淡水化の技術研究は60年代に始まり、現在、世界で通用する二大淡水化技術―蒸留と逆浸透―を誇り、技術はすでに比較的成熟している。現在、主に海水淡水化の産業化により、海水淡水化の高コストの問題解決に取り組んでいる。報道によると、現在海水淡水化1トンにかかるコストは、すでに70年代の20元前後から5.5元に下がった。天津では、海水淡水化のコストは水道水に比べわずか20%を越すくらいである。海水利用と淡水化は中国で明るい前途があるだろう。

(6)流域をまたぐ治水
 中国水資源の総量は少なくない。時空分布の不均等の特徴は、全国的に流域をまたぐ治水により、水資源の再配置を合理的にし、中国北方地区の資源型水不足の問題を解決する条件を備えている。多年の研究を経て、中国政府はすでに南の水を北に供給する戦略的プロジェクトの計画を打ち出した。

 このプロジェクトは、東・中・西3本の調水パイプを通して、長江・黄河・淮河と海河の相互連結によって、‘四横三縦’の水資源の全体配置を形成し、南北と東西の水資源の自由な調整の実現を計画している。3本の調水パイプの年間調水総量は380億から480億m3に達する予定で、このプロジェクトが完成すれば、北部の黄河・淮河・海河地区の危機的な水資源不足を根本的に改善することができる。

 現在、中国政府の関係部門は、南の水を北に調整するための戦略プロジェクト計画に関して最大の総合的な効果を得るため、討論を続けている。水資源の持続可能な利用と‘三先三後’の原則(先に節水し後に調水、先に汚水を治め後に水を通す、先に環境保護し後に水を用いる、という原則)に沿って、調水量をさらに科学的に確定し、細部にわたって、プロジェクト・資金調達・管理体制の建設・水値政策などを再検討している。

3.結論

6Rで中国の水循環経済を建設する。

1.水立法と水資源循環経済の管理規制の強化
Regulating the Using of Water
2.節水型社会の建設、水の有効利用率の引き上げ
Reducing Using of the Water
3.クリーナープロダクション、処理済工業排水の循環利用経済の推進
Recycling Using of the Water
4.都市での‘中水’使用の積極的な推進
Reusing the Used Water
5.水資源の再開発
Redeveloping Water Resources
6.流域をまたぐ治水
Redistributing Water Resources

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