日本環境NGOの内モンゴル植林活動

 B.セルゲレン(内モンゴル沙漠化防止植林の会 代表)

  環境破壊の深刻化と環境汚染の地球規模の広がりによって、近年多くの日本の環境NGOが海外を拠点に活動している。中国内モンゴルだけでも数十団体が実際に活動している。ここでは、沙漠化防止植林活動を行ういくつかの団体を紹介し、内モンゴルの沙漠化防止、黄沙対策問題の中で植林活動の役割を検討する。

1.内モンゴルの沙漠とその影響

 モンゴル高原は、農業に適しない乾燥した沙質の痩せた地域である。殆どの草原地帯は僅かな表土、表土が支える草の根によって維持されている。この僅かな表土が開墾によってさらされると忽ちその下部の沙が露出し、植生被覆のない裸地になってしまう。これらの裸地は11月~翌5月までの集中強風、夏7月、8月の集中雨によって表土が容易に流出し、毎年0.2~2cmの表土が失われていると報告されている。

  よって、沙漠による黄沙の多発、威力の増加、影響の拡大が東アジア諸国に被害を与えている。このような状況下、中国政府も2000年から「退耕還林」を、また2001年から「禁牧」政策を本格化するなど、植林を最重要課題の一つと位置づけて取り組んでいるが、広大な国土のために森林率など植物多様性、被覆率は遅々として向上しない。2008年のオリンピック準備もあり、2001年後半から黄沙の源とされる内モンゴル・コンシャンダック沙地に生態移民を実施している。囲封転移戦略である。
 
 また、このような土壌流出は、土地の肥沃度を低下させモンゴル高原の砂漠化に拍車をかけている。中国農村部の一人あたりの全国平均の純収入は2,161元(98年)であるが、内モンゴル地域の殆どの植林地域の住民一人あたりの平均純収入はそれよりも約50%低い。砂漠化防止植林と現地住民の生活水準向上が同時に重要視されなければならない。

2.植林団体の設立経緯と各団体の特徴

特 徴
1. 現地との関わりは個人を窓口とする傾向がある
2. 現地調査は少なく、学術論文を参考にするケースが多い
3. 団体間の相互交流は少ない
4. 内モンゴルにおける砂漠化防止共通認識を共用しない
5. 公に、全民的運動への発展に動員力に欠ける
6. 自分の理念を移植がちな側面がある
7. 資金は補助金などに頼る

3.砂漠化防止対策

  植林を行う環境NGOで内モンゴルに最初に進出したのは日本沙漠緑化実践協会(1991年設立、遠山正瑛鳥取大学名誉教授が会長)である。活動は80年代後半から調査を重ね、90年代に入って本格的な植林を行っている。その後もいくつかの団体が設立され、内モンゴル全土に活動を行っている。

  これらの団体は最初の砂漠化防止活動に、殆ど決まってボプラなどの喬木を用いている。その原因は様々だが、共通認識として活着した後の成長は早く、寒さに強い白樺が気候的に最適であると考えたからである。そして、もう一つの原因に、成長が早いため補助先への報告書に実績を明記出来るということである。

  しかし、近年になり、ボプラの地下水吸収問題が指摘され、連年の旱魃も重なり地下水位の低下が顕著され、植樹類を喬木から潅木へ変換させる動きがある。近年の連続旱魃による喬木の活着率の低下、潅木苗の栽培成功などがその背後にある。そのほかでは、杏の木と言った果樹園創生、草方格による流動砂丘の定着などの試みが出されている。

4.黄沙の脅威と対策

 資料に見られる写真は2000年4月6日、内モンゴル自治区で発生した黄沙が北京へ移動している映像である。次の日の7日にこの黄沙が中国の山東半島を退けて韓国と日本までに移動したことが報告されている。

 近年、中国では黄沙の発生頻度は50年代5回だったのを90年代に入り20回以上、2000年だけで12回も発生し、中国では既に黄沙天気予報まで出されるようになり、生活全体に大きな影響を及ぼしている。1993年5月5日、中国西北部で発生した一回の黒風(黄沙)で116人が死亡、264人がけがし、直接的な被害額は5億元を上るとされている。中国は沙漠化によってこの様に年間を通して540億元もの被害を受けている。

  黄沙の発生の増加原因に、近年の地球規模の異常気象も影響しているが、殆ど人為的な自然破壊が直接に影響していると関係者は見ている。黄沙の発生防止策として、発生源と考えられる地域の植物多様性を保護、維持すると同時に、黄沙が経過する地域の植生多様性の保存も行い、その勢いを弱体化し、減らすことは大事である。経過地域が平坦な沙地、植物多様性が破壊されている地域では黄沙の強度は増し、遠くまで影響する。逆に経過する地域の植物多様性が保持されている地域を経過すると黄沙の勢いは弱まり、自然に消えてしまう。したがって、黄沙を防止し、減少させるために植物多様性の保持、保存に寄与できる植林、自然保護活動は不可欠である。

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