温暖化防止に向けた取り組み

山﨑 求博(足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ 事務局長)

  私は、東京の江戸川という地区で環境NPOの活動をしております。私たちのNPOは、地球温暖化について市民が主体的に地域でどのように取り組めるかを考え、行動しています。中でも地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出源がエネルギーの生産・消費にあるということでエネルギーの問題に取り組んでおり、市民による発電やエネルギー消費の節減に向けたワークショップや装置の開発などを行っています。そこで、ここでは地球温暖化問題、その中でも重要なエネルギー問題に対する国と市民側の取り組みについていくつか取り上げてみたいと思います。

1.中央政府の動き

 1997年に気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)で京都議定書を成立させた日本政府でしたが、地球温暖化問題に対する政府の取り組みは、原子力発電所の増設と国民生活の見直しが大きな柱となっています。

 政府は3月に首相を本部長とする地球温暖化対策推進本部が京都議定書の目標を達成するための新しい地球温暖化対策推進大綱を決めましたが、家庭用対策では、シャワーを家族全員が1日1分減らして温室効果ガスをCO2換算で93万トン減らすなど9項目にわたる脱温暖化生活の取り組みを列挙しました。その一方で、二酸化炭素を排出しない原発10~13基の新設を盛り込んでいます。

  しかし、頼みの綱の原発新設も、8月に東京電力が原子力発電所の自主点検で不正を行っていた疑惑が発覚したことで一気に国民や地方政府の不信が高まり、建設地域の住民運動もあり新設が難しくなりつつあります。中央政府は有効な対策を示せないまま、「地球温暖化防止行動計画」で掲げた目標を達成できないことが明らかになりました。中央政府の対策は手詰まりの状況にあります。

2.市民の動き

(1) 自然エネルギー促進法と市民共同発電所
 再生可能エネルギーの推進は地球温暖化対策として有効ですが、中央政府は再生可能エネルギー推進に消極的です。環境NPOが中心となって議員立法をめざした「自然エネルギー促進法」は再生可能エネルギーを高値買い取らせることで促進させようとしたものでしたが、逆に政府は市場原理に基づく「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法案」を成立させました。ダイオキシン排出が心配される廃棄物発電を容認し、市場原理に基づく手法ではまだまだ脆弱な再生可能エネルギーは全く省みられることはないでしょう。また、抽象的な理念法ながらエネルギーの安定供給や地球温暖化防止と称して原発の推進が意図されていると指摘されるエネルギー政策基本法も成立しています。

 こうした政策の一方で市民独自の動きが出てきています。日本は、再生可能エネルギー特に太陽光発電については民家に設置されてきました。これは、公共施設に設置する欧米とは異なる特徴です。そして、政府が進める原発政策に不安や反発を持つ市民や環境NPOが、民家の屋根に共同で資金を出資して太陽光発電などを設置する「市民共同発電所」の動きが広がっています。現在、全国に30カ所が設立されています。地方政府の中には、こうした動きに注目して支援する所も出てきています。

(2) 環境によいものを選ぼうキャンペーン
 再生可能エネルギーと並んで有力なエネルギー問題解決の手段は、エネルギー消費の節減です。近年の技術革新は機器のエネルギー消費を大幅に低減させ、数年前の1/4というような機種も登場しています。こうした製品を選んでいけば、市民自らが努力をしなくともエネルギー消費を減らすことができます。環境NPO「気候ネットワーク」では「環境によいものを選ぼうキャンペーン」の展開を始めました。また、地方政府の中には東京都のように、エネルギー消費の節減レベルや購入後に支払う電気料金を表示したラベルを店頭に並ぶ家電製品に貼付することで、消費者がエネルギー消費の少ない製品を選びやすくする「少エネルギーキャンペーン」を展開したり、石川県羽咋市のように「地域省エネルギービジョン」を策定する所も現れています。

(3) NPOの声を求め始めた政府
 地球温暖化対策では、動きの鈍い中央政府に対してNPOや地方政府の方が独自の施策を活発に展開しています。中央政府では、こうした動きに呼応して地球温暖化対策推進法を改正しました。改正法では都道府県に設置される「地球温暖化防止活動推進センター」の担い手としてNPOを指定対象に加えると共に、地方政府や事業者、市民・NPOらで構成する「地球温暖化対策地域協議会」が設置できる、ことになりました。

 また、環境省では毎年、企業やNPOから政策提言を受け付け優秀な事案を表彰する制度を設けていますが、2002年度は私たちが「地方政府自らのエネルギー節約で節減できた光熱費予算を使って地域の地球温暖化対策に充てる気候保全基金の立ち上げ」を提案して優秀提案に選ばれました。

地方政府でも市民やNPOの声を積極的に取り入れるところが出てきました。滋賀県新旭町のように新エネルギービジョンづくりの策定委員に市民やNPOメンバーを入れたり、千葉県市川市では市民主導で環境保全計画を作りつつあります。

3.最後に

 以上のように、地球温暖化対策やエネルギー問題について市民やNPOの動きは活発であり、地方政府がそうした動きを自らの環境政策づくりに取り入れ、そうした動きを対策で手詰まりとなった中央政府が後押しするというのが日本の状況です。しかし、政策提案能力のある市民やNPOは数が限られており、地方政府との信頼関係構築は難しいのが現状です。市民やNPOの側はもっと政策立案能力を高めていかなければなりませんし、彼らがそれに力を注げるような支援策が求められます。

 海外に目を向けると、8月に開催されたヨハネスブルグ・サミットでは持続可能な社会づくりよりも貿易自由化に話題が集中してしまいました。日本の産業界もグローバル化を叫びながら、環境問題や労働問題を取り上げることはグローバル化の敵のように見ています。しかし、現在世界中で起きているテロと戦争の原因は、そのグローバル化によって引き起こされたものであり、アフガニスタンやイラクは石油を支配しようとするアメリカに狙われたのです。化石燃料に頼らない再生可能エネルギーの開発と利用は、こうした戦争とテロから人々を解放し、地域を豊かにする手段として有効です。

 私たち3カ国には、再生可能エネルギーに必要な日照も風も水もあり、技術的なポテンシャルもあります。この東アジアでは、再生可能エネルギーによって戦争もテロもない豊かな社会を構築すべく、国や政府の枠を越えて、市民や環境NPOが協力していくことを熱望してやみません。

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