中国における生物多様性の保全状況と民間組織の実践活動

 周 玲(緑色北京)

 中国は、世界で最も生物の多様性に富んだ国のひとつである。類が豊富で、珍しい属が見られ、種も非常に多い。系統発生の起源は古く、栽培植物や家畜動物およびその野生近種も多く、また生態系は多種多彩であるなどの特徴が挙げられる。

  1992年に「生物多様性条約」に加入して以来、中国政府は、積極的に本条約履行のための活動に携わってきた。すなわち、生物の多様性の構成要素を保全し、持続可能に利用するための一連の政策を制定・完備し、また、自然保護区の建設や管理を徹底的に重視してきたのである。2001年末までに、全国で作られた自然保護区は、全部で1551地区あり(うち国家規模のものは171地区)、国土面積の12.9%を占める。全国版の保護区ネットシステムも誕生した。中国の自然保護区が世界に及ぼす影響もだんだん大きくなり、全国ですでに21地区の自然保護区が「国際重要湿地リスト」に登録され、3地区が「世界自然遺産リスト」に登録されている。

  現在、中国の70%の陸地生態系統類型と80%の野生動物及び60%の高等植物が、特に国家重点保全対象となる希少絶滅危惧動植物に指定されており、そのほとんどが自然保護区で良好に保全されている。しかしながら、気候変化等の自然要因や、過去の歴史上行われた人為破壊によって、現在の自然生態系環境状態は依然として厳しく、中国政府はすでに生物多様性を保全回復させるための多くの措置を講じているが、直面している生物多様性を保全するための責務は未だなお、重く大きい。

 森林、草原、湿地、河川、湖沼などにおける野生動植物の生息環境が悪化し、被害を蒙ることで、中国の野生動植物の数は絶え間なく減少を続けている。「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」に登録されている640種に及ぶ絶滅危惧種のうち、156種が中国に生息しており、全体の約4分の1を占める。担当者の説明によると、現在政府は、1993年施行の「中国生物多様性行動計画」」改訂に取り組んでおり、生物の安全、外来種、遺伝資源の利用と共存共益、生物多様性の開発や環境に及ぼす影響を評価するなどの内容について、補完および修訂を行っている。

 また、政府は西部資源開発と経済建設および国家各部門のプロジェクトに、生物多様性の保全項目を取り込むよう、推し進めている。同時に、優先して重点地区に保全実施を行い、投資を拡大し、公共教育を展開するなどの措置を施し、生物多様性が受けた破壊行為を押しとどめるための法律を立法化する準備をすすめている。

  生物多様性の保全は多方面に関連する。その中で野生動植物の保護については、中国の多くの民間組織が自ら取り組んでおり、その代表的な活動として、チルー(チベットアンテロープ、中型レイヨウの一種)の保護活動が挙げられる。チルーは、中国チベット高原のみに分布し、国家一級保護動物に指定されており、「ワシントン条約」でも国際取引が厳しく規制されている絶滅危惧動物である。しかし、欧米の「貴族」階級の人間が、チルーの毛で織られた最高級ショール「シャトゥーシュ」を手に入れようとするため、チベット高原で繰り広げられるチルー惨殺の悲劇は後を絶たない。

 この美しい動物を保護するため、現地の幹部や民衆が自発的に「野生ヤク救出チーム」を組織し、密猟防止に努めている。また、「自然の友」、「緑色北京」などの民間環境保護団体のバックアップを得て、ある環境保護活動家が資財を投じて現地に保護施設をつくり、現在もなお活動している。私たち緑色北京は、2000年より「チルー救済」関連活動を始め、4月、「チルー救済同盟ネットワーク」を作った。始めに、中国のいくつかの主要関連サイトがこのキャンペーンに参加し、現在すでに150あまりのサイトが参加するに至っている。その後、私たちの有志が自ら企画してキャンペーン用パネルやシャツ、ポスターなど一連の宣伝ツールを制作し、首都30ヶ所の大学を巡って、展覧会、チャリティーショー、バザー、講演活動などを大々的に繰り広げた。また、多くの新聞、テレビなどマスメディアを通して報道をさらに推し進め、社会にチルー保護活動の高まりを引き起こした。

 現在では、北京以外の有志が、これらキャンペーン用ツールを借りてそれぞれの地で宣伝活動を行っている。10月には、有志たちはチルー救済関係者のために、最初のネット用歌曲「天国炎上」を創作した。今年初め、私たちと国際動物愛護基金およびチルーネットワークが協力して、「チルー救済ネットチャリティーオークション」活動を展開し、2万元あまりの募金を集め、全額チルー保護活動に充てようとしている。現在、有志の手によるチルーをテーマとした映画の脚本はすでに完成しており、現在製作段階の話が進められている。これらの活動はまさにチルーの将来に関心を寄せる人々のたゆまぬ努力の賜物であり、チルー保護活動の条件はかなり改善されて今日に至っている。また、保護活動自体も順調に進んでいる。

  昨年末、私たちは、「草原保護」プロジェクトを始動させ、今年7月中旬から内モンゴル自治区の錫林郭勒草原および呼倫貝爾草原において、半月間の実地調査を実施した。草原問題の専門家や学者がチームを組み、中国北方地区の草原の現状について踏みこんだ調査を行ったのである。また、環境汚染の疑いがある企業に対し、この調査での重点項目のひとつでもある徹底調査が行われた。

 草原は、その独特の地質構造と経済構成によって、一度退化の道を辿ると、生態系および人工システムが被害を受けることは避けられない運命にある。草原における生物多様性を保全することはすなわち、草原で育まれた遊牧文化を保全することと同義であり、この両者を二人三脚で進めなければならない。

  この実地調査中、私たちと現地の遊牧民、幹部は広範囲にわたって接触し、調査重点項目について徹底的な調査を実施し、事実に基づいた信頼できる貴重なデータを数多く収集した。同時に、私たちが調査した数社の環境汚染企業が違法に遊牧民の土地を占有している問題に対し、遊牧民は起訴準備を進めているため、調査のおりに法律関係の書籍やレーザーディスクなどを現地の住民に提供するなど、各方面で協力している。つまり、環境汚染の被害者が法律家と連絡を取り、法的手段を取る手続きを手伝ったのである。

  このプロジェクトのもうひとつの重点項目は、阿巴嘎旗地区にある渾善達克砂漠の生態調査で、こちらもかなり順調に進行している。遊牧民に取材し、いくつかの調査対象地区を見て歩き、砂塵が激しく舞い起こる砂漠と称される渾善達克砂漠の実情を確認し、専門家の提案により、管理規則原案も完成した。

 実地調査後、同行した専門家が調査報告書を取りまとめ、調査中に収集した膨大な録音、画像、図面、文字資料も有志が分類整理を行い、さらに一歩踏み込んだ一般大衆向け宣伝材料が整った。現在、私たちの手による調査報告書が既に政府関連部門に提出され、政府関連部門もその報告書を重視している。

  生物多様性を保全し、自分達の生存を託す環境を保護することは、当然、現地の農民の生存権や、発展する権利を脅かすはずがない。中国にはまだ貧しい後進地区が多数存在するが、単にその地区の住民を救済するだけでは問題の解決にはならない。中国の古い諺に、「人に魚を与えることは、魚を摂る方法を教えることには及ばない」というものがある。異なる地区の実情を統合して、現地の人々のために、環境と調和が取れた、共存可能な道を探し出すことこそ、私たちが今後努力して進んでいくべき方向である。このような未開発地区において、環境保護活動や教育活動を展開すると同時に、現地の住民に書籍や資料を提供し、科学・法律関連の知識普及を進める。同じように、大学や社会団体が関連活動を行う際に援助を請われた時には、彼らに上述したような提案をすることも可能である。

 環境問題は、経済・教育などの社会問題と密接に関わっており、切っても切り離せない。だから、一旦現地の人々が自分たちの考え方を変えれば、彼らの環境保護意識は高まり、それによって現地の資源を一方的に利用したり破壊したりする一部の人たちを、環境保全を監督したり保護する側に変えることができる。現地の生態系保護活動において、現地住民は無くてはならない存在である。

 もうひとつ見落としてはならないことは、多くの未開発地区の人々が動物を乱獲したり、資源を濫用したり、環境を破壊する根本原因は、少数の富裕層が消費に対して過度な欲求を持っているという事実である。経済面での利益を追求する力は、どのような行政法令よりも力が大きい。生物多様性の減少や、野生動植物資源の破壊、生態環境の悪化に関するニュースを見たり聞いたりするたびに、私たちはまず自分自身を振り返る必要がある。この中で、私たちが果たすべき役割はどんなものであるのか?この心痛む事件で、私たちは事を荒立てて足を引っ張っているだけではないか?

 消費者の立場から言えば、消費に対する考え方を変え、適度の消費生活様式を提唱し自ずからそれを実行し、未開発地区の人々が持続可能な生産と生活の活路を探し出すのを積極的に支援することで、人類と自然が調和をもって共存し、引き続きそれぞれが発展していくための基礎と源が完成するのである。

  私たちが共有するかけがえのない地球、この地球上で人類は生物多様性を構成する一分子にすぎない。環境に対して負うべき責任とそれを保護し管理する義務から、人類は絶対に逃れられない。皆が一致団結して、共通する未来への発展に続く路を探し求めなければならない。

 

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