日本の状況
△自治体のエネルギーに関する取り組み
地域住民の自発的参加に向けた課題
地域通貨を利用した自然エネルギーの普及と地域活性化に向けた取り組み
長野県 飯田市 水道環境部 小林 敏昭氏
めざす「環境文化都市」そして「ムトス」
南アルプス・中央アルプスに囲まれ天竜川の両岸に広がる人口10万7千人の「山都」、飯田市。日本の真ん中、長野県の最南端にある飯田市は、1995年策定の基本構想で「人も自然も美しく、輝くまち~環境文化都市」をめざす都市像に掲げ、環境行政を展開してきた。同じ1995年に「21’いいだ環境プラン」を策定し、日々の生活から産業まで、すべての営みが自然と調和するまちづくりに先駆的に取り組む、地球市民としての行動がスタートした。「りんご並木と人形劇のまち」そのまちづくりの原点に「ムトス(=んとす、広辞苑の最末尾の語)」「まさに~しようとする」「自分たちのまちは自分たちでつくろう」という考え方がある。市民自らが、ごく自然に行政へ自律的・主体的に参加するという「飯田人」のDNAがある。
この理念の実現に向け、1999年、野洲町は「地域新エネルギービジョン」に着手した。策定体制は、住民の活動状況に照らして、太陽、森林、風力・水力、廃食油、省エネ、企業、普及促進の計七つからなる各種住民活動団体の部会と、その代表及び学識者からなる策定委員会で構成した。ビジョンのなかで特に重視したのが、自然エネルギー普及のための仕組みづくりである。
◆自然エネルギー利用、太陽光発電システムから
飯田市は、基本構想の中で、環境にやさしい都市として質の高い暮らしをしていくために、新エネルギーの活用を掲げている。新エネルギー導入促進基礎調査(1996年3月)で市としての方向付けをし、「新エネルギービジョン」で太陽光発電利用を重点事業として取り上げている。さらに「21’いいだ環境プラン」においても、太陽光発電システム設置の普及を循環型まちづくりのリーディング事業として位置づけ、2010年には、全世帯の30%の普及を目指している。
太陽光発電システムの導入を地域レベルで進めるため、設置する市民を対象にした市独自の無利子の融資制度を設けてきた。2001年に環境大臣賞を受賞した日本一の世帯あたりの普及率は、現在、1.63%である。さて、仕組みの概要は、NPO法人のもつ太陽光基金に対して住民などに、一口1万円の寄付を募る。そして、そのお礼に一口1万1千円分の地域通貨「smile」(商品、サービス割引券型)を発行する。NPO法人は、この寄付金が一定の額になれば、公共施設の屋根等に太陽光発電設備を設置し、それを行政に寄付する。発行された地域通貨「smile」は、地域通貨加盟店や一定の公共施設で利用でき(たとえば、取扱店の農園では、トマト1千円につき、1smile(1smile=百円)が使用可能。また、建築店では、工事一式につき110smileが使用可能。それぞれが独自に割引分を決める)、一回の使用または発効後半年の期限で消滅する。
◆温室効果ガスの10パーセント削減を
1997年からの太陽光発電システム導入の利子補給制度は、設置時に1kwあたり3万円(10万円限度)の補助金として2004年から再出発する。また、近年、多様な自然エネルギーの各種機器の技術開発の進展や市民意識の高揚等により、機器の導入気運が高まってきていることから、太陽光発電システムに加え、ペレットストーブ、薪ストーブ等の新たな自然エネルギー導入に対する補助を2004年度予算に盛り込むことになっている。
飯田市は、2010年までに市全体が排出する温室効果ガスの総排出量を1990年に対して10パーセント削減する目標を掲げており、新エネルギーの利用と省エネルギー施策により、温暖化防止活動を進めていくことになる。
◆「おひさま進歩」から市民発電NPO発足へ
2001年秋に開催した「おひさま進歩(太陽光シンポジウム)」では、太陽光発電システム設置者(432人)全員に通知し、実行委員を募り、4人が実行委員として取り組んだ。4人の実行委員とはいえ、環境問題への意識が高く、当時から市民発電を視野に入れた活動を模索し、2004年春には、市民発電NPO「南信州おひさま進歩」として発足する予定である。2年の歳月がかかったが、このまとまりが、飯田市の進める太陽光発電システムの設置推進にとどまることなく、今後飯田市が進める多様な新エネルギーの利用促進に大きく貢献することが期待される。
この概念を具体的な形にしていくためには、地域自らがその社会的仕組みを編み上げていく必要がある。どこの地域もまだまだ試行錯誤の段階であるが、大事なのは住民も行政も、地域のいろいろな実践行動を柔軟かつ多様に受け止め、地域自体が実験・創造の舞台となるよう「失敗しても当たり前」の土壌をつくっていく気構えがないと前に進むことができないと思う。
今回の地域通貨を利用したシステムも「地域の内発的な発展」また「住民の日常生活のなかにいかに溶け込ませていけるか」ということを基本に、地域社会全体にかかる仕組みのひとつとして、育てていきたいと考えているが、この他にも当NPO法人の「里山保全 野洲モデル」(活動報酬は山のめぐみで!)や他団体の動きもある。このような多彩な動きを検証しながら、融合・連携するなかで地域だからこそできるグリーン経済を創出していきたい。
◆ISO14001自己適合宣言への移行
飯田市は、「環境文化都市」実現の推進ツールとして2000年1月、ISO14001を認証取得した。マネジメントシステム的な考え方を導入することにより地方分権に向けた組織力の強化、職員の仕事の流れ・考え方への変化へのシフト、体質改善をめざしている。
そして、3年間の有効期限を機に審査機関による更新審査を受けず、2003年1月、日本の自治体で初めて審査登録から「自己適合宣言」へ移行した。システムの「透明性」と「客観性」を確保し、その有効性の説明責任をどのように果たしていくかが求められる。そのひとつの仕組みが内部監査に地域の企業や自治体といった外部の人を受け入れ、そして相手にも出向く「相互内部監査」である。
◆「点」から「面」へのボランタリーな研究会活動
25事業所が参加し、従業員数は7000人を超える「地域ぐるみ環境ISO研究会」は、1997年11月に6事業所で発足した民間主導の異業種のボランタリーな組織で、飯田市も当初から1メンバーとして参加している。事業所内に限定しがちな「点」としての環境改善活動を地域全体の大きな「面」の運動にする活動を続けている。
研究会は、ISO取得・維持運用という環境マネジメントシステム(EMS)のノウハウを支援という形で地域に還元・貢献している。これは、EMSを地域経営の活性化のツールとして生かそうとする、この地域の「環境」というまちづくりに他ならない。
◆地域独自のEMS「南信州いいむす21」
「南信州いいむす21(EMS21)」は、この地域1万事業所の大半を占めるISO認証取得が困難な中小・個人事業所に向け、2001年10月からスタートさせた地域独自のEMSである。「地域ぐるみ環境ISO研究会」が構築し、18市町村で構成する「南信州広域連合」と連携して、中小・個人事業所が行う取組宣言以来の3か月の環境改善活動実績を研究会が支援しながら現地審査し、結果を広域連合で判定し連合長が登録証を発行する。地域からの大きな期待を受け、150事業所で取り組まれ、うち44事業所が登録証の発行を受けている。
「南信州いいむす21」は、個別の事業所だけではなく、同種の業界、地域での企業の集まり、そしてこの地の高校や専門学校へと確実にその輪は広がり、さらに商栄会などでの取り組みの動きも出始めている。昨年末には、環境大臣賞を受けるなど、外の評価も大きくなっている。
◆それぞれの役割で裾野を拡げる
飯田市がめざす「環境文化都市」は、行政だけで実現できるものではなく、企業・市民・行政の協働によって実現しうるものである。研究会のようなISO14001認証取得民間企業が自分たちの生き残りのため、地域の環境をリードする。「南信州いいむす21」の普及により、ISO審査登録に耐えられない規模の小さな事業所の環境改善の自発的な意欲の受け皿とする。ただ、飯田市の「自己適合宣言」移行は、簡易なEMSの構築・運用であっても、それが進んだ最終的な形としての自己宣言という手段の提案なのである。
企業の従業員も、職場を離れれば市民となる。小さな事業所では、従業員イコール市民という意味合いが強い。様々な身の丈にあったEMSの運用により、取り組みの裾野を拡げ、地域全体の環境モードを高めたい。そして、市民からの自発的な活動の芽が次々生まれ、それを地域全体で無理なく支えていく風土が「環境文化都市」である。
企業・市民・行政がそれぞれの役割を担い、連携し合って「環境文化都市」を地域ぐるみで実現したい。
※上記の内容は、2004年2月に開催された日中韓ワークショップ「温暖化対策を進める地域の社会システムの構築を目指して」(主催:持続可能な都市のための20%クラブ)で発表されました。
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