日本の状況
△温暖化防止に向けたNGOの取り組み
地域を変える省エネ事業
NPO法人 循環社会研究所 中村 修氏
1章 解決の手法としての環境教育
「知る」だけの環境教育から解決の手法としての環境教育へ
「家庭やアパートのエアコンと蛍光灯のワット数を書いてください。」この質問に対して、例えば蛍光灯が100W、エアコンが200Wと答える学生が多くいる。 こういう認識の学生が温暖化防止のために、実際の行動としておこなっている省エネとは、部屋中の電灯を消して、薄暗いなかで読書をすることだ。一方、薄暗い部屋で、エアコンを一番強くして部屋中を冷やしている。 しかし、蛍光灯は30W、エアコンは1200Wである。
温暖化防止のために省エネが必要と考えて行動するのであれば、まずやるべきことは必要な蛍光灯まで消すことではなく、エアコンを弱にすることである。これだけで電気の消費量は半減する。無駄な蛍光灯を消すのは必要な作業だが、必要以上に薄暗くする一方でエアコンを強で動かしているなら「省エネ気分」という自己満足でしかない。 理念だけで技(スキル)をもたない人は、このように自己満足しかなく、問題解決に至ることはない。
いまや環境問題に関心を寄せる市民は多数派になってきた。しかし、関心を寄せるだけで、どのように行動すればいいのかを理解している人は少ない。効果的な方法、技を知っている人の割合はさらに少ない。こうした市民の啓発のために環境教育の意義はあるが、残念ながら現在おこなわれているほとんどの環境教育は「環境問題を知る、理解する about environmenal」であって、「環境問題を解決する for environmental」ではない。
知る、理解する、というのは最低、必要な作業である。しかし、いまや環境問題は理解する対象でなく、解決すべき課題としてある。解決するために「知る」という過程がある。「知る」で終わるなら、それは環境教育の本来の目的ではない。そこで、筆者が各地でおこなっている「問題解決のための環境教育」としての省エネ授業を紹介する。
◆2章 大木町の省エネ授業
(1)動機付け
最初に、未来を考えてもらうため、40年後の暮らしを自由に描いてもらう。子どもの絵を用いて未来について論じる。 ここでは、「ロボットや空飛ぶ車の未来はない。逆にエネルギーがもっと少ししか使えず、汚染された環境の中で、みなさんは未来を迎えなければならない」と、データを示して説明する。 多くの子どもはかなりのショックを受ける。このショックが次の行動につながるための重要な鍵となる
2000年度大溝小学校5年生の描いた絵
「40年後の未来はどうなっているのだろう」
撮影 山口龍虎 2000年1月
(2)エネルギーを調べる
課題2では、各家庭のエネルギー消費について調べる。各家庭にある電気メーターの数字の変化を見ることからはじめる。家庭の電気製品のW数、使用状況なども調べる。1,2週間もすれば、子どもたちは家庭での電気製品の使われ方、家族の省エネへの協力状況などから毎日の電気消費量を推測することができるようにまでなる。
(3)省エネの実践
課題3で、省エネの具体的な目標を掲げて実践する。
授業3では、クラスの保護者、環境活動をしている市民にゲストとして教室話してもらうことで子どもたちの活動の励みにする。また、省エネをごく身近なものとして見つめるようにする。
(4)見直し、再挑戦 発表会
課題4では、これまで自分が取り組んだ省エネ活動を振り返り、また、保護者による省エネの成功例や失敗例を聞いて、どうしたらもっと合理的に省エネができるのかを考え、もう一度省エネにチャレンジする。また、その成果の報告会を行う。
(5)地域へ飛び出す 子ども地域監査
最後は、子どもたちが地域に働きかける対象をあらかめじ準備しておき、そこに子どもたちが出かけて省エネのチェックをしてもらう。役場や商店街では大変盛り上がる。
こうした作業を通して、子どもたちは、いままでの授業を通してすでに十分な技を持っていることを自覚するだけでなく、技を持って地域を変えるという実践の面白さを体験することができる。
従来の環境教育は環境問題に関心をもたせるだけで終わっていた。 一方、この省エネ授業で、子どもたちは家庭で合理的な省エネを実践するだけでなく、地域をも変えていく経験を積む。 ここに従来の環境教育とのちがいがある。
3章 温暖化防止政策手法としての省エネ授業
残念なことに、各地の自治体の省エネ政策は、ハード事業ばかりである。太陽光発電、省エネ機器の導入などである。しかも、これらは数千万円から数億円と高価である。 価格が比較的安くランニングコストもかからない太陽光発電でも、10kWの発電施設でおよそ1500万円はかかる。 こうしたハード事業をすべて否定するわけではないが、多くの自治体は安易に大きなお金を使う温暖化対策を選択している。
一方で、市民全体の啓発につながり、省エネ効果としても有効な省エネ授業にはなかなか取り組もうとしない。せいぜい単発の講演会を開催したり、環境家計簿を印刷して配布するだけというソフト事業が中心である。 しかし、大木町での省エネ授業が自治体の省エネ政策として有効であることは証明された。大木町には3つの小学校があり、5年生は150人ほどいる。省エネ授業を実施した大溝小学校には36人の5年生がいたが、36人のうち9割以上が電気の消費量を1割以上も減らしている。この36人の省エネ授業の実践だけで30kWの太陽光発電(費用としては4500万円以上)を上回る省エネ効果をもたらしている。
人口1万4千人の大木町の規模であれば、毎年50万円ほどの町の予算で省エネ授業は実施できる。役場の環境課の担当者は兼任で忙しいので、地元の市民グループに省エネ授業を事業委託し、授業のコーディネート、役場と学校の連絡役を委託する。小学校に対しては「フィフティ、フィフティ」を導入し動機付けとする。これは小学校や役場で省エネに成功した分の半額を環境教育の費用として小学校に還元する、という手法である。この手法では役場は一切の負担をすることなく、省エネ、温暖化防止を促すことができる。高額なハード事業に比較して、きわめて費用対効果の高い政策手法として省エネ授業がある。 また、地域循環研究所では高校向けの簡易EMSと、それを普及する政策を提案している。 さらに、各地で取り組まれた省エネ授業を総括するものとして「省エネ発電所」の準備もおこなっている。これはWEB上で各地の取り組みを集計するものである。
費用対効果の明確な啓発事業、教育の場での啓発事業を、NPOが事業として展開できるような準備を行っている。
※上記の内容は、2004年2月に開催された日中韓ワークショップ「温暖化対策を進める地域の社会システムの構築を目指して」(主催:持続可能な都市のための20%クラブ)で発表されました。
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