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△温暖化防止に向けたNGOの取り組み

エネルギーシフトを地域から


~市民版グリーン電力証書と省エネ家電買い替え~

NPO法人 足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ 山﨑 求博氏
1.はじめに
地球温暖化問題は21世紀における人類最大の問題であり、日本政府は1997年12月に京都で開催された気候変動枠組み条約第3回締約国会議(京都会議)において、温室効果ガスの6%削減を国際公約したところである。その温室効果ガスのひとつに、電力等のエネルギー消費に伴って排出される二酸化炭素が挙げられるが、地球温暖化対策として二酸化炭素の排出を削減するには、再生可能エネルギーの導入や電力使用量の低減は有力な対策となりうる。

私たち「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ」(以下「足温ネット」と略す)は、京都会議の開催をきっかけに設立された環境NPOで、1996年12月の設立以来、地域で市民が主体的に取り組むことのできる地球温暖化対策を考え、実践してきた。2002年6月には、環境省が募集した「平成14年度 NGO/NPO・企業環境政策提言」において「地域における省エネ意識醸成と自然エネルギー推進」をテーマとした政策提言を行い、優秀提言に選ばれている。

2.市民立・江戸川第一発電所
(1) 設置と資金調達
まず、私たちが取り組んだのが「市民立・江戸川第一発電所」の建設である。これは、学校のような地域の公共空間に市民出資による太陽光発電設備を建設することで、市民主体で二酸化炭素を出さないエネルギー生産の手段を手に入れようと計画された。
市民立発電所は、1999年7月から区内の寺院の屋根を借りて発電を開始した。出力5.4kWの設備設置に要した費用590万円。国や市民団体からの助成金、設置場所からの電気料金徴収、借入金や寄付でまかない、資金集めから設置、その後の管理まで全て市民の手によって担われている。ただし、自己資金が十分でなかったため、未来バンク事業組合から借り入れせざるをえなかった。

<導入経費>=5.900,000円
・補助金および助成金:2,200,000円(新エネルギー財団、自然エネルギー推進市民フォーラム)
・電気使用料 :2,100,000円(設置寺院より徴収)
自家使用分と余剰電力の売電収入を合わせた月々15,000円を
12年分一括前払いすることで捻出。
・寄付金 : 425,000円(会が集めた1口5,000円の寄付「太陽かわら寄進」)
・借入金 :1,175,000円(未来バンクより。年利3%)

発電された電力は、寺院の自宅と寺務所を兼ねた客殿の使用電力をまかなっている。年間発電量は約6,000kWhであり、その半分が自家消費され、残る半分を電力会社に販売している。電力によるCO2排出量は、一般に0.3kg/kWhと言われているが、これはCO2を排出しない原子力を含んだ量であり、火力のみの場合0.7kgとなる。後者の計算では、年間4,200kgの排出抑制効果があると言える。

(2) 市民版グリーン電力証書「EDOGA-WAT」

さて、借入金の返済という事態に自己資金の無い私たちは新たな収入源を作らなければならなくなった。そこで考え出したのが「グリーン電力証書」という手法である。太陽光発電による電力の環境への貢献という付加価値分について、証書の形で市民に買い取ってもらおうというものだ。

現在、電力会社による余剰電力の買い取り料金はkWh当たり22~23円である。ところが、太陽光発電は初期投資コストの高さから発電単価が高く(同70円程度)、買い取り価格に全く見合わない。一方、ドイツでは高値での買い取りが法律によって保証されており、その価格は同55円である。私たちは、55円から22円を差し引いた33円が、電気そのものの値段と言うよりも二酸化炭素を排出しないことによる環境への貢献度のプレミアム分である。kWhあたり33円として、証書は30kWhを1枚として1,000円で販売、年間発電量が6,000kWhとして200枚発行。その収入をもって借入金返済に充てている。

しかし、証書自体は環境への貢献分を手に入れるアイテムではあるものの、具体的な見返りに乏しい。そこで、証書購入者の間だけで通用する地域通貨を発行することで配当に代えることとした。証書1枚につき10kWh券が3枚付与され、円貨で買うことにできない財やサービスと交換する手段としている。

3.省エネ家電買い替えモニター事業
(1) 節電所という考え方
しかし、市民側が再生可能エネルギーの発電所を増やしても、社会全体が前と変わらずエネルギーを消費するだけでは、エネルギー起源の二酸化炭素排出は止まらない。そんな時に出会った本が『ネガワット』((財)省エネルギーセンター)である。そこには、ドイツにおける「節電所」づくりの事例について述べられていた。具体的には、地域の電力公社が、電力消費のピークを下げた企業や省エネ型の家電製品を購入した消費者に報償費を出すなどの施策を講じており、省エネに力を入れることによって新たな発電所建設にかかるコストを回避できるとする姿勢に驚かされた。
つまりはこうである。地域のエネルギー自立を考えるならば、まず消費を減らすことで、再生可能エネルギーの導入量を少なくすることができ、少ないコストで導入することが可能となる。第一義としての省エネの実施は、多くの人たちにエネルギー自立の可能性を示すことにつながるのではないか、と。そのためには家庭レベルでの省エネ促進が鍵になると考えた。

(2)プログラムの概要
私たちは2003年度事業計画において、省エネに関して「普及・啓発」から「実践」に向けたシステムの構築を目指すことになった。そして、実際の生活における省エネ施策として考え出したのが、「省エネ家電買い替えモニター事業」である。家庭で使う家電製品を電力消費のより少ない機種に買い替えることで、経済的インセンティブを与えながら家庭レベルでの省エネを促進するものだ。
プログラムで取り上げた家電製品は冷蔵庫である。家庭の電力消費の17%を占める冷蔵庫について、電力消費の少ない機種に買い替える際に、未来に生じる電気料金の節減分相当額を無利子で融資し、融資実施家庭では、買い替え後に節減できた電気料金相当額で融資額を返済していくというものだ。どのような手順で進めるのかを以下に詳述する。
(3)プログラムの手順
A)募集対象
まず次の要件に該当する者を公募する。(1)電力消費量の大きい冷蔵庫をお使いで、(2)省エネルギーに貢献したいと考えており、(3)事業終了までの期間(概ね5年間)報告を含めて事業に参加でき、(4)無利子融資に対して返済の意志がある、家庭である。

B)募集申込および選考
マスコミへのプレスリリースやインターネットを通じて告知を行い、省エネ家電(冷蔵庫)への買い替えを希望する家庭からの申込を受け付ける。申込にあたっては、使用している冷蔵庫のメーカー名・型式・容量・年間電力消費量等について申告させる。そして応募家庭の中から、家電の消費電力量の大きさ等を基準に融資対象家庭を選考する。選考結果を通知後、対象家庭は足温ネットが推奨する省エネ型冷蔵庫(年間消費電力量200~190kWhの機種)を購入する。

C)融資実施
選定結果を受けて対象家庭に対する事業説明会を開催する。その際に領収書等で推奨機種の購入を確認のうえ、買い替え後に節減できる電気料金相当額の概ね5年間分の融資契約書を家庭と足温ネットとの間で取り交わす。例えば、年間電力消費624kWhの冷蔵庫を同192kWhのものに買い替える場合、融資額は432kWh×23円×5年で49,680円となり、各家庭は毎年節減できた電気料金相当額9,936円を5年間かけて返済する。なお、融資にあたっての金利は非営利事業の観点から無利子としている。 私たちが推奨する省エネ型冷蔵庫は店頭価格が10~11万円であるため、融資額が数万円であっても、家庭にとっては融資を受けることで自己資金を圧縮でき、十分メリットを感じられると思われる。

D)公表および認定
融資後の債務不履行の危険性を担保するため、融資の返済状況及び実際の省エネ結果状況をホームページ等で公表すると共に、省エネ関連情報の提供を随時行う。融資実施家庭は、買い替え後の電力消費量を申告し、買い替え前との電力消費量と比較する。この結果、電力消費量が当所予想より下回った家庭については「コミュニティー節電所」として表彰する。

(4)プログラムの実践
このプログラムに従って、足温ネットは2003年8月に「省エネ家電買い替えモニター事業」の参加家庭募集を行った。電子メールやタウン紙等で募集告知をしたところ、合計7件の申込があったが、購入時期が先であったり、融資を受けることに家人が反対した家庭もあったため、最終的に3件の家庭に合計25万円の融資を行った。融資額の算定にあたっては、買い替え前後の年間電力使用量の差に家庭電力料金単価23円を乗じたものの5年分としたが、「1999年以前に生産された製品については、検査方法の変更により表示されている電力使用量が現在の1.6倍になる」との情報が寄せられたため、融資額は当初予想よりも大きなものとなった。

契約前に、事務局でそれぞれの家庭を訪ねてみたが、ある家庭では今回融資の対象となる機種の情報を広告で見たことがないと話していた。後者の場合、情報を得るためにインターネットを活用してはと勧めたものの、居間にはインターネットに接続できるパソコンがあるにもかかわらず検索の仕方が分からず、事務局がパソコンを使って検索方法を教えるといった場面もあった。今後プログラムの実施にあたっては対象家庭へのきめ細かなアプローチが求められよう。

4.まとめ
21世紀に向けて、持続可能な地域社会を子どもたちに手渡すためには、地球温暖化問題から目を背けずにはいられない。エネルギー起源の二酸化炭素を減らすためには、エネルギーの使用総量を減らしながら再生可能エネルギーを導入し、従来の化石燃料から「省エネルギー+再生可能エネルギー」にシフトするエネルギーシフトが必要不可欠である。私たちは、今後も足元の地域から市民の取り組めるあらゆる努力を惜しまないだろう。できる範囲で楽しみながら。

※上記の内容は、2004年2月に開催された日中韓ワークショップ「温暖化対策を進める地域の社会システムの構築を目指して」(主催:持続可能な都市のための20%クラブ)で発表されました。

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