|
ヨウスコウカワイルカが生息する可能性はすでにわずかなものなのかもしれない。
淡水に長きにわたって生活しているイルカは、全世界を見渡してもアマゾン川と長江だけだといわれている。しかし、このような名誉は、すでに今日の長江にはふさわしくないかもしれない。ヨウスコウカワイルカが生息するという可能性がすでにわずかである以上、スナメリ(中国では「江豚」と呼ばれる)――このまるい頭部の、活発な性格で、笑顔をたたえているようなクチバシ――も、専門家の予測によれば、向こう100年以内に絶滅の危機に瀕するという。
私たち人間による破壊が一番の元凶だ。人間が地球上にすでに2500万年にわたって生きてきたこの2種類の生物を絶滅の危機に直面させている。中国科学院水生生物所の研究員であり、イルカ類の研究では“中国の第一人者”と言われている王丁氏。彼は今日、「洞庭湖スナメリ、水鳥、シフゾウ(中国に生息するシカの一種)の科学調査」のスタートにあたり、悲痛を交えてこう警告した。「絶滅に瀕するスナメリ、このままでは第二のヨウスコウカワイルカになってしまう」。
2年前、長江イルカ類に関する中国最大規模の野生調査(王氏も参加)が実施された。ここで出された最終結論は人々を大きく驚かせるものとなった。これによると、「長江の女神」と言われているヨウスコウカワイルカはすでに「絶滅危惧」といえ、すでに種として生存できる基本的な条件を喪失している――というのだ。その後2年が経過した現在、王氏はさらに心配することとして、スナメリ生息数の急激な減少をあげている。
世界自然保護基金(WWF)の資料によると、1993年に長江には少なくとも2700頭のスナメリが生息していた。だが15年後、生息数は半分近くに減少し、今では1400~1800頭といわれている。そのうち150~200頭は洞庭湖に生息。王氏は保護を強化しない限り、スナメリの絶滅はますます早まると考えている。
スナメリは小型の歯クジラ亜目も海棲哺乳類で、アジアの沿海地区に比較的広範囲に分布している。海洋性、淡水性に分けられるが、このうち長江に住むスナメリは地球で唯一の淡水性で、ヨウスコウカワイルカよりも地球上に早く現れた。
昔の漁師はスナメリを「河神」としていたが、今では親しみを込めて「江猪(豚)」(長江の豚)と呼んでいる。スナメリはこのように丸みを帯びた身体で水中を自由自在に泳ぎ、飛び回り、うなずき、水を飛ばし、そして船の波しぶきを追うのが好きなのだ。
しかし人間の活動がスナメリの自由自在な生活を破壊し、そして彼らの生存を深刻に脅かしている。王氏によると、違法な漁業、ひっきりなしの船の往来、ダム工事、深刻な汚染などがスナメリにとっての「脅威」となっており、流れてくるスナメリ死亡というニュースは氷山の一角を映し出しているに過ぎないという。WWFによると、2004年、湖南省岳陽市は全国住血吸虫病対策会議を誘致するため、洞庭湖に約5000トンものミヤイリガイ駆除薬をまいた。これにより1カ月以内に6頭のスナメリが死亡したという。
王氏は「これまでの長い経験を通じて私が痛切に感じるとことは、絶滅危惧種の保護に動く人そのものの存在が、まるで絶滅危惧種であるということ。こうした人々は少なく、社会に訴える声も小さく、勢力も弱く、孤立していて助けがない」と話す。科学者としてできることは問題の研究に励み、政府に対して解決手段を提言することであり、「問題解決には政府と人々の支持が不可欠だ」と訴える。
現在のところ中国では6カ所のスナメリ保護区を設けており、このうち洞庭湖は市レベルの自然保護区となっている。ある人が王氏に「どの保護区が比較的に良い?」と問いかけたところ、王氏は厳しい表情で、「あまり聞きたくはないし、誰が良い・悪いかも言うことはできない。ただ問いたいのは実際に行動に移すかどうかだ」と答えたという。
スナメリは国家2級の野生保護動物であるが、王氏によると1級保護動物になるという。人間がスナメリの生活を破壊しており、彼らを保護する必要がある――このような認識はすでにはっきりしており、王氏は「難しいのはどう実効あるものにするかだ」と語っている。たとえば「電打魚」(電気ショックによる漁法)という違法な漁法は、長い間ずっと見られている。
WWF長沙事務所の支援を受けた今回の調査活動は20日間に及び、王氏と5名の同僚が洞庭湖でスナメリの数量、分布、生息、移動状況などについて調査を行っている。
|