|
ハイラル河―アルグン川下流の生態環境へ及ぼすダメージは明らかである
→(1)(http://www.enviroasia.info/news/news_detail.php3/C09061501J)からの続き
2.「昨日の生態危機」再び
1)なぜ用水路プロジェクト(ここでは、アルグン川から水をダライ湖に引いて、湖を保護する事)が必要か?
用水路プロジェクト支持者によると、このプロジェクトの目的は、降雨量減少の影響を受けたダライ湖の生態環境を保護する為であり、特に草原の極度のアルカリ化、湖水の富栄養化、草原の退化を抑止することを目的としている。また支持者は、水位が上がることで、ダライ湖の低迷する漁業が活気づくことを期待しており、その上、引き入れられた水は、4万頭の家畜と2,000haの牧草地帯の水源となる。
調査中、我々は興味深い情報をつかんだ。1つ目は、ダライ湖から満洲里市へ用水路を作る“市のための用水路プロジェクト”についてである。この工事は2006年に始まり、2期に分けて行う計画で、第1期に賚諾尓工業区への用水路が、第2期に、満洲里市区への用水路が建設される(中華人民共和国水利部ホームページより)。2つ目の情報は、2008年に中国黄金グループの鳥木努格吐山にある銅モリブデン鉱山へ、ダライ湖保護区内から水を引く工事である。我々はまだ他にも公表されていない水利プロジェクトがあると考えている。「ダライ湖は本当に水不足だろうか?水を引くのは湖保護のためだろうか、それとも大量の水を使い、生態環境を破壊する工場や鉱山区のためだろうか?」
2)用水路プロジェクトに潜在する影響
最も明らかな影響は、ハイラル河-アルグン川下流の生態環境への影響である。ハイラル河湿地は東アジアの水鳥が移動する上で重要な中継地であり、また多くの絶滅の危機に瀕する野鳥の繁殖地となっている。毎年春と秋には、19種のIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに載っている鳥類を含む、約100~200万羽の野鳥がこの場所に集まり、サラツラガン、丹頂鶴、真鶴、ノガン、トウネン、キリアイ、ヒシクイなども確認された記録がある。ロシアのオレガ・ガラシカ博士はアルグン川中流の生態を長年研究しており、彼の研究結果によると、アルグン川中流の湿地群はラムサール条約の基準:1a、1c、2a、2c、3a、3c(ガラシカ、2006)及びIBA(重要野鳥生息地)の規準:a4(i)、a4(ii)、 a4(iii)、 a4(iv)にかなっている。さらに重要なのは、乾季には、達鳥尓区域に生息する大部分の野鳥は、アルグン川の湿地の生態環境に依存する必要があるということである。
2001年から、アルグン川の年間流入水量は15億~17億立法mまで減少しており、アルグン川から毎年10億㎥の取水を他へ行えば下流に大きな影響を与えてしまう。我々はこのプロジェクトが、地下水の水位低下、湿地の蓄水能力の低下、平瀬湿地の後退、浅い湿地の消失などの影響を及ぼし、多くの貴重な水鳥や数えきれないほどの野鳥が生存する環境を失うと確信している。
もう1つの潜在する影響は、ダライ湖の自然水文への影響である。資料によると、達鳥尓区域は30年周期の雨の多い時期と少ない時期の気候変化サイクルの途中である、と示している。ダライ湖と達鳥尓区域は、他の湖と同様に、渇水期と増水期があり、多くの湖は渇水期に干上がってしまうだろう。現在の渇水期は、2010年まで続き、その後ダライ湖の水位は再度徐々に上昇する。人為的な水位のコントロールにより、自然の循環を壊し、ダライ湖にどれだけの破壊的影響を与えるかを正確に予測することはできないが、取り返しのつかないことになることは容易に想像できる。また、その他の比較的大きな懸念は、ハイラル河の汚染は深刻で、周囲に多くの製紙工場やその他の工場があり、これらの水がダライ湖に流れ込むと、水生生態系と漁業にとって大きな脅威となる。
(参考情報)“内モンゴル自治区フールン湖用水路プロジェクト”についての状況報告
URL:http://www.nujiang.ngo.cn/Dynamics/2007/200703/2007032802/
筆者:東北林業大学 野生動物資源学部 西蒙
首都師範大学 生命科学学部 郭玉民
日付:2007-03-25
|