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「私にとっては水俣病は終わってないと思います。私にとっては水俣病は解決していません。病院に行くけれど、水俣病の病院はありません(※注)。原田(正純)先生にお願いがあります。ゆっくり安心して話のできる病院をつくってほしいと思っております。私はどうしてチッソがあるかおかしいと思っております。毒を流してどうしてチッソがあるかとっても不思議に思っております。お父さんもお母さんもお姉さんも水俣病でした。お姉さんは亡くなったけど幼児水俣病でした。これからも若い人が水俣病のことをきちんと知ってほしいな、と思っております」。胎児性水俣病患者の坂本しのぶさんは、東京や札幌・神戸・同じ熊本県内などから熊本県・水俣市に集まった研究者・学生30名ほどの調査グループを前にこう語った。
現地の案内役となった原田正純教授(水俣病研究・熊本学園大学)と谷洋一氏(アジアと水俣を結ぶ会)によると、坂本しのぶさんがいう「ゆっくり安心して話のできる病院」とは、医師が、話をするのに時間がかかる水俣病患者のペースに合わせて、何十分・何時間でもゆっくり話を聞いてくれる病院のことであり、また、症状ごとに縦割りになっている科をいろいろ回らなくて良い病院のことである。これは水俣病患者にとって特に切実な要望であるが、水俣病に限らず、どのような病気の患者にとっても実は望ましい、当然の要望である。
今、水俣市では「負の遺産をプラスの資産に」と、水俣病を教訓に環境保全・配慮型まちづくりが進められ、水俣市民や他地域の人々・自治体などにもこれを高く評価する声がある。実際、水俣市にはエコショップ、エコタウン、エコパークなど「エコ」を冠した言葉があふれている。「エコ」とはエコロジー(生態学)、生態系(エコシステム)に配慮することを示す。だがそれなら、最優先課題のはずの、この地域の生態系全体の汚染問題としての水俣病の全体像の調査が行われていなければならないし、汚染被害を受けた患者をとりまく生態系=生活環境の改善もなされていなければならないのだが、いずれもが不十分である。
20種以上のゴミ分別が水俣市行政の自慢となっているが、こうした作業が重度の胎児性水俣病患者にとって困難であることは配慮されていない。また、他地域の新幹線公害の教訓が活かされずに、水俣病患者支援施設の庭先に九州新幹線建設が強行されている。水俣病患者の生態(いきざま)に学び、その環境改善から出発することが真の生態学(エコロジー)ではないか。
※注:実際には水俣病を扱う病院として水俣協立病院がある。
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