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環境汚染 「淮河衛士」と「癌の村」を訪ねて

河南省

 淮河の汚染に取り組む環境NGOを訪ねた。そのNGO「淮河衛士」の活動現場は、最近のテレビで中国全土に「癌の村(腫瘤村)」と報道された汚染被害地だった。

 1990年代半ばに中国の環境汚染対策が急加速した発端が、淮河の汚染だった。その後、何度も強制措置がとられ、汚染の改善も伝えられたはずの淮河だが、近年では、当局の目を盗んだ汚染排出などによる汚染の「リバウンド(反弾)」が度々問題になってきた。

 今年7月中旬、また淮河の支流に黒い汚水塊が出現した、と伝えられた。この第1報を伝えたのが「淮河衛士」の霍岱珊(Huo Daishan)氏。淮河汚染に取り組む環境NGOということに興味をひかれ、誘われるままに訪ねてみた。

 決して軽い気持ちで訪ねてよい現場でないことがはっきりわかったのは、既に現地滞在も2日目になってからだ。現状を知るために、と見せてもらったのは、8月9日に中央テレビ局が放映した報道番組「新聞調査」。この回の題は「河と村(河流与村庄)」で、淮河最大の支流、沙穎河を飲料水源としてきた村でここ10数年、消化器系を中心とする癌で死に至る人が急増し、先天障害を持つ子供も増えていることが紹介される。そして、その原因が沙穎河の汚染にあり、この村は深井戸を掘ることで解決の糸口が見いだせそうなものの、この河の流域には似たような村が他にも多数あることが示唆される。フォト・ジャーナリストとして写真と文でこうした状況を世間に広く知らしめたのが霍岱珊氏だった。

 しかし彼は、沙穎河流域の各村の家々を訪ね、家ごとに異なる事情を把握し、それに配慮しながら癌の発生状況を記録するという地道な作業も行っている。癌患者のいる農村を案内してもらった際、訪ねる患者ごとに、病気の自覚の有無や、撮影の可否などの説明・注意を受けた。珍しく癌の自覚があり、母親とともに撮影にも応じてくれた女性の患者は、別れ際、止めるのも聞かずに門の外まで見送りに出てきた。「母は私の病気が癌とは知らない」ことを伝えたかったのだ。最後に訪ねた、足に先天異常を持つ男の子は、机を使って歩いていた。その楽しそうな笑いが、心なしか痛ましかった。

 霍岱珊氏には、沙穎河が美しく、また人々の生活文化と密着していた少年時代の記憶がある。その愛着が活動の原動力なのだろう。「淮河衛士」は数百名の会員を擁するというが、ほとんどの活動は彼が1人で、家族や友人・知人に支えられながらやっているようであった。しかし、彼が望みを寄せるのは市民(公衆)の参加であり、市民が昼夜全ての排出口を見張り、少しでも基準超過があれば通報される、という状態になれば、汚染企業も態度を改めるだろうと考えている。

 帰国直後に霍岱珊氏からメールが届いた。地元の新聞「大河報」が淮河汚染処理を美化する記事を載せた、これは「河と村」への反動の最初のシグナルだろうか、と。日本公害史で見られた情報合戦が中国でも始まっているようだ。

(参考URL)※何れも中国語
・淮河衛士
 http://www.lwlsw.com/hhwsw/zhuye.htm
・新聞調査・河流与村庄
 http://www.cctv.com/news/china/20040810/102281.shtml
・「大河報」の当該記事
 http://www.hnby.com.cn/papers/dhb/200408/30/232006/232007.html


淮河支流の沙穎河

沙穎河からの用水路、黒い水が岸を染めている

「淮河衛士」事務所入口。右側の人物が霍氏
記事執筆、翻訳
日付 2004-09-15
筆者 相川 泰 (AIKAWA, Yasushi)
媒体 寄稿
団体名 東アジア環境情報発伝所
URL http://www.eden-j.org/
翻訳者

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