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開発で生息地を奪われゆく「ヒメタイコウチ」
皆さんはヒメタイコウチという昆虫をご存知だろうか。写真を見ていただきたい。わずか2cmほどのこの水生昆虫は中国東北部、朝鮮半島、そして日本の愛知県、兵庫県などに隔離分布している。手のひらに載せてみると足は達者だ。どんどん歩いて逃げていく。そのかわり空を飛べない、水中を泳ぐことも出来ない。呼吸管が短いので下手をすれば溺れてしまう。
しかしその特徴が決め手となって、日本が大陸と地続きであったことを物語る生き証人とされている。この虫があの足で東アジアを席巻していたことを思うと感慨深い。ところがこの昆虫は売買目的で採取されたり、生育場所の湿地が次々に乱開発されたりして、愛知県ではレッドデータブックに記載されるようになった。
おりしも愛知県では自然との共生を掲げて「愛・地球博」が開催されている。呼び物のひとつは絶滅した動物との出会いだ。ところが皮肉なことに開催都市の瀬戸市でも、ヒメタイコウチの重要性を訴えるどころか、その自生地が奪われようとしている。彼らの棲む県有林で、愛知県珪砂鉱業協同組合が大規模な伐採と土砂採掘を始めてしまったからだ。このままでは湿地は消滅し、ヒメタイコウチも全滅する。
この問題で際立っているのは、瀬戸市長の関与だ。増岡錦也(ますおか・きんや)市長は土砂採掘企業の2代目経営者で、しかもこの開発業者のトップを15年も務めた人物である。「あの人が瀬戸市長でなければこの開発は存在しなかった」。そう評する住民は多い。
そもそもこの森は瀬戸市環境基本計画で保全されることが決まっていた。その基本計画を定めた市長が、それを覆し、今では自然破壊の擁護者になっている。ヒメタイコウチ保護よりは、わが業界の利益が優先というわけだ。悲しいことだが、これが「愛・地球博」開催都市の現実の姿なのだ。少しでも、ヒメタイコウチが生き永らえる環境の保全を呼びかけていきたい。
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