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問題の場所のPhは10前後。この不安が杞憂に終わればいいが……。
吉海町は現在、広域合併によって今治市の一部となっており、尾道・今治ルートの中に位置する。インターチェンジが島内に2ヶ所あり、合併前は二町があった大きな島である。問題の吉海町津倉は、古くから海上輸送に従事する住民が多く、経済的には潤っていたそうだ。
桜井を後にして午前9時半、吉海町(大島)に到着、出迎えを受けて津倉地区へ。問題となっている鉄鋼スラグ「一時保管」場に隣接する集会所には約20人の住民の方が既に集合してくれており、いささか恐縮。約2時間半、車座になって住民の方と懇談した。
鉄鋼スラグとは製鉄の過程で出るゴミのようなもの。業者・行政は海砂の代替骨材として利用するための一時保管と主張しており、昨年11月ごろから、海岸に隣接ししかも住宅地の真ん中にある塩田跡地に搬入され始めたようだ。この跡地からわずか20~30メートル離れたところには住宅があり、密接して地区の集会所がある。
この一時保管場から強アルカリ水が検出され、スラグからは、成分不明のガスが出ているという。さらに、風による粉塵の飛散で呼吸器系への異常などの体調不全が、住民の苦情として多々あがった。例えば、咳が激しい、子どもたちに急に黄色い鼻汁が出だして止まらない、など。子どもたちを別の土地へ避難させたら数日で治まったという。当然のことだが、民家の室内には粉塵が侵入し、洗濯物が汚れるなど、日常生活にも影響がでているという。
2006年2月3日、『愛媛新聞』が「鉄鋼スラグからPh12.5の強アルカリ」と報道した後、搬入は止まっているとのことだが、地元住民によれば、既に搬入された鉄鋼スラグは、塩田跡地約1.6haの面積に3万t以上と推定され、その厚みは2mを越すとのこと。11日の視察で私が見た限り、沿っている道路の路肩より既に高くなっていた。業者はこれまでの搬入を一時保管所の造成と主張しているという。
鉄鋼スラグは海砂の代替骨材として、グリーン購入法でも指定されている。この3月末、愛媛県が海砂採取の全面禁止措置をとったことで、瀬戸内海全域で海砂採取禁止が実現することとなった。そのために鉄鋼スラグのストックがビジネスとなっていると見られる。無論、鉄鋼・製鋼メーカーにとって大量に発生するスラグは、もはや自社処分が限界に来ており、中国での需要の増大で搬出は必要不可欠になっているのではないかと推測される。さらに増加していく可能性もあるが、かといって、住宅近接地にこんな一時保管があってよいものだろうか。しかも今回のケースは強アルカリの代物である。
搬入されたスラグは見たところ、「徐冷スラグ」と業界で呼ばれているもののようであるが、形状からは明確には判別できない。鉄鋼スラグ協会のパンフレットで見る限り、協会のいう規格に合致した「徐冷スラグ」ならば、直径2~3cmの玉砂利状のはずなのだが、今回の場合、玉砂利状のものにずいぶんと多量の砂状のものが混ざっている。手にとって臭いを嗅いでみると、わずかに硫黄の臭いがした。今のところ、搬出元も不明である。
行政の言い分では、当該鉄鋼スラグはグリーン購入法に基づく特定調達品目であり、廃棄物でなく有価物である、しかも自社地内での一時保管であるから、廃棄物処理法による立ち入り検査や、取締りの対象とすることはできないとの事のようだ。
2月3日の報道で搬入は一時ストップしていたが、「保管所」造成は続けられていたようで、11日に行ったときもブルドーザーやダンプカーで地ならしのような作業が行われていた。また、下流側=元塩田の海水導入路との境には、たまった底泥で堰止めを造り、鉄鋼スラグを土止めするかのようなブロック積みのノリ面造りの途中であった。底泥をかきあげてできた水溜りの底は黄色く沈着していた。また、新聞報道があって、道路沿いにだけ「飛散防止」のフェンスが造られたが、全体を囲むには至っていない。
■リトマス試験紙による検査
大島での視察をいったん終え、再度津倉に戻り水素イオン濃度調査を試みた。前日からの大雨は降り止み、集会所と「一時保管所」に沿う道路、海側からすると反対方向(上流側)、大雨の中現地に着いた頃よりはるかに水かさが増していた地点でリトマス試験紙を浸してみた。折からの雨で希釈されていたとはいえ、それでもPh10前後を確認した。
他方、海に続く用水路(元塩田への海水の導入路)には、硫黄と思われる黄色の沈殿物が、水路の底にべったりと沈殿していた。ここは雨で滑りやすくなっており、水面に近づけなかったので、Ph調査を断念せざるを得なかった。
調査終了後の4月23日、地元住民によると、20日頃から搬入が再開されたとのこと。島内の海岸沿いの砕石場跡地に、やはり鉄鋼スラグを持ち込んでいるという。陸部からは地被くのは難しい場所で、海上から船で直接搬入しているが、住民も寄り付かない場所なので問題とされていないと聞いた。これまで瀬戸内海の島嶼部では、砕石場や塩田の跡地が、産業廃棄物の最終処分場とされてきたケースは枚挙に暇がない。
廃棄物か有価物かの議論は、大問題に発展した豊島の例がある。今回の吉海町の鉄鋼スラグを廃棄物と即断することはできないが、行政は住民の健康被害の訴えが起きている現実を直視し、実態の調査が必要であり、住民に充分な納得を得る説明をすべきであろう。仮にも豊島のように、業者が「脱法行為」をしていたら、行政の責任は免れ得ない。強アルカリの原因は鉄鋼生産の過程で投入される石灰(CaO)と思えるのだが……。
私たちの疑問が杞憂に終わればそれに越したことはないが、私たちにも鉄鋼スラグに関する知識・資料・情報が全く蓄積されていないため、どんなことでも、鉄鋼スラグについての資料・情報をお寄せ下さい。
(追記)4月25日、鉄鋼スラグが持ち込まれた地区の住民が愛媛県に対し、健康被害を訴え嘆願書を提出し、鉄鋼スラグの撤去を要請した。
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「最終処分場の再展開」計画への疑念―06年4月11日今治視察報告(上)
http://www.enviroasia.info/news/news_detail.php3/J06042801J
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