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増え続ける認定申請者に対する行政の不作為は解消されるのか。
国の認定基準に基づき水俣病かどうかを審査する熊本県の認定審査会が約2年半ぶりに再開される見通しになった。04年10月の関西訴訟最高裁判決後、新たに補償救済を求める被害者が急増し水俣病問題は混迷。環境省や関係国会議員は事態が前進したと歓迎するが、国の基準を維持したままの再開に被害者切り捨てを警戒する被害者団体もある。
最高裁判決は、国と熊本県の責任を認め、新たな医学的知見を基に国の基準より明確で幅広い救済基準を容認。基準が行政と司法で異なり、審査会の棄却処分が司法の場で覆される可能性が出てきた。審査会委員たちにしてみれば、司法の場に証人として引っぱり出されるおそれもある。委員全員が判決直後、任期切れとなり再委嘱を拒んだ。
判決直後、国の基準に疑義をはさむような潮谷義子知事の発言もあり、国の基準の妥当性を確信する委員たちの説得は難航。その間、認定申請者は増え続け、熊本、鹿児島、新潟三県で5千人近くまで膨らみ、行政の不作為による違法状態が続いていた。
06年秋以降、再開に向けて大きく二つの状況変化があった。小池百合子・前環境相の私的懇談会の提言と、与党水俣病問題プロジェクトチーム(PT)による政治決着(未認定患者救済策策定)への動きだ。潮谷知事は07年1月5日、岡嶋透・前審査会長らからようやく再委嘱の内諾を取り付けた。
岡嶋前会長は内諾した理由を「懇談会が国の基準を一応認めるという認識の下に、恒久的な救済策と審査会再開が必要と提言した。PTも新たな救済の方向性を示し、国の基準に合致しない人も救われる見通しとなった」と語った。委員たちの懸念が一応整理されたというわけだ。しかし早速、「私的懇談会の提言を都合よく利用している」との批判も出ている。懇談会は当初、国の基準見直しに踏み込もうとしたが、環境省が猛反対し、初心を曲げざるを得なかった。この経過を無視するかのような受け止めには、懇談会委員はじめ多くの関係者が違和感を持つだろう。
熊本県は3月中にも認定審査会を再開したいとしている。ただ、審査の前提として必要な検診は、現体制の専門医の数では年間100人もできないと言われ、医師の確保が急務だ。審査会が頼りにするPTの救済策は今夏にもまとまる予定だが、これも課題が山積。認定申請者のうち訴訟を提起した原告らは政治決着を拒んでおり、火種を残した一時的な「事態鎮静化策」にならざるを得ないことは明白。救済内容次第では訴訟に踏み切る構えの被害者団体もあり、原因企業チッソも救済策に伴う費用負担に難色を示している。
国の基準が維持されたままでは大量の棄却者が出ることも想定される。長期間にわたりさみだれ式に出てくる棄却者をどう救済するのか。PTの中には、救済には国の財政出動を伴う以上、救済受け付け窓口をいつまでも開けておくのは無理との意見もあり、認定申請を続けるか、申請を取り下げて救済策に乗るかの二者択一を迫られる可能性も考えられる。混迷の闇はまだ深い。
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オレンジ鉄道「水俣」駅前正面に位置する水俣本部・水俣製造所
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