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「患者に線引き」を続ける限り、救済される人とされない人の不公平は続く。
この年末年始、日本で大きな話題となったニュースの一つは薬害肝炎訴訟をめぐる動きである。原告となった患者側の要求を頑なに拒んできた政府側が一転、議員立法によって、国の責任を認めて謝罪し救済を進めることになった。この問題で患者側がこだわり、勝ち取った成果は「患者に線引きをしない」ことであった。
関連の報道を視聴して、すぐ思い浮かべたのは水俣病のことである。原因となったメチル水銀の汚染が存在した時期に、汚染された水域でとれた水産物を食べ、共通する健康被害を持つ人たちは全て患者として扱うのが「患者に線引きをしない」ということのはずである。現実には「患者に線引きをしない」どころか、認定患者や医療手帳対象者、保健手帳対象者、裁判で勝訴は勝ち取ったけれど認定されない人、その何れの対象にもならない人など、制度だけでも複雑に線引きされている。さらに諸事情から、汚染の影響を受けていても気づいていない人、気づいてはいるけれども名乗り出られない人など、対象にならない人々の状況も様々である。
2004年秋に水俣病関西訴訟の最高裁判決が出て以来、水俣病をめぐっていろいろな動きが起きてきた。それまで名乗り出なかった人たちが新たに認定を求めるようになり、新たな裁判も起こされた。2007年には、最高裁判決で勝訴した関西訴訟の原告が、それでも認定されないので、新たな裁判を起こした。そのほか、新たな患者の認定や第2世代の提訴など、新しい動きも見られた。
筆者の記憶違いでなければ、新たな患者の認定と第2世代の起訴では、新潟が熊本に先行した。熊本県南部の水俣を中心とする不知火(しらぬい)海沿岸で起き、熊本県と鹿児島県にまたがる被害を出したのが最初の(熊本)水俣病で、それとは別の汚染源が原因で新潟県の阿賀野川流域で起きたのが新潟水俣病である。新潟水俣病については、今回はじめて新潟県も被告になった。
こうした様々な動きに対し、与党プロジェクトチームが2007年秋に新たな救済策をまとめた。これは、1995年に当時進行中だった訴訟の原告が関西訴訟を除いて和解した政治決着と同様、一時金と医療手帳か保健手帳で政治決着を図ろうとするものである。ただし、一時金の額は1995年の半分程度になっており、厳しい面もある。一部の患者団体はこれに応じる姿勢を示す一方、加害企業は訴訟が進んでいてこれで決着とはならないことを理由に今のところ受け入れを拒んでいる。しかし、もし新たな救済策が実施されることになったとしても、一方で訴訟を続けたり、新たに訴えを起こす者が医療手帳や保健手帳を持っている場合、その資格を停止するという話もあるため、患者の間にまた新たな線が引かれることにしかならない。従来のさまざまな「患者に線引き」をしてきた複雑な制度が正しいという前提のもと、さらに新たな線を引こうとするから話がどんどんおかしくなる。
この際、救済策は白紙に戻し、「汚染が存在した時期に、汚染された水域でとれた水産物を食べ、共通する健康被害を持つ人たちは全て患者として扱う」という一律の制度を作る必要がある。
薬害肝炎訴訟をめぐり政府内部で「患者に線引きをしない」ことに抵抗があったのは「救済対象が際限なく広がる恐れ」だったという。しかし、「患者に線引き」を続ける限り、救済される人とされない人の不公平、そしてそれに対する異議申し立てが際限なく続く。その解消こそが求められているのではないか。
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