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環境ニュース > 生態系 (韓国 発)

生態系 世界自然遺産を飲み込むダム建設計画

中国全土 中国、13のカスケードダム開発により生態系と住民の生存、脅威に

 中国西部雲南省一帯を流れる怒江に13の水力発電ダムが鈴なりに建設され、秀麗な景観と豊富な生物多様性を誇る三江併流世界自然遺産地域一帯が破壊され、5万人余りの住民の生活の基盤が水没の危機にさらされている。

流れの激しい怒江(Nujiang)
 チベット高原を源流とし、タイとミャンマーの間を通り、南側のアンダマン海に流れ出る3,200kmのサルウィン川(Salween River)上流を中国では怒江(Nujiang)と呼ぶ。怒江/サルウィン川は東南アジアで第2の長さの重要国際河川であり、中国ではダムの建設のない、水が自由に流れるわずか2つの川のうちの一つだ。

三江併流 世界自然遺産(Three Parallel Rivers World Heritage Site)
 雲南省一帯を流れる怒江は、世界の温帯地域で最も生態的に豊かな場所のひとつ、三江併流(Three Parallel Rivers)世界自然遺産地域にある。

 三江併流は中国雲南省北西部の山間地域にあり、チベット高原を源流とした3つの大きな河川、怒江(サルウィン川)、瀾滄江(Lancang River; メコン川上流)、金沙江(Jinsha River; 揚子江上流) が、400㎞余り並んで流れることからこの名前がついた。

 東方大渓谷とも呼ばれるこの地域は、高い山と曲がりくねった渓谷が調和する大変美しい地域だ。川の周辺の森と湿地には絶滅の危機にある稀少な野生動植物が多く生息し、“中国固有の生物種の中心地”として知られるほどで、この地域の生態的価値は非常に高い。

 ユネスコ世界遺産委員会は2003年7月、この地域をユネスコ世界自然遺産地域に指定した。中国内の世界遺産地域の中で最も大きな規模である。三江併流世界自然遺産地域には6000種以上の植物が生息しており、世界の動物種の25%以上、中国の動物種の半数以上が住んでいるが、このうちの相当数が絶滅の危機にある。また、この世界遺産地域にはそれぞれ異なった13の少数民族30万人が暮し、文化的にも大変多様性に富んでいる。

中国西部大開発

 人口増加と経済発展にともない、増加し続ける電力需要を充たすために、中国は西部地域の重要河川である怒江(サルウィン川)と瀾滄江(メコン川)、金沙江(揚子江)に集中的にダムを建設し、2020年までに水力発電量を今の3倍に増加させるという野心的な計画を立てている。「西部大開発」と呼ばれるこの計画を通し、西部地域で電力を生産し、人口と産業施設が集まる東部地域で使用するというものだ。

すでに始まっている怒江ダム建設

 世界遺産に指定されてわずか2ヶ月の2003年9月、雲南省政府は三江併流一帯の怒江に13の水力発電ダムを建設するという計画を発表した。これらがすべて完成すれば、世界最大の水力発電である三渓ダムよりさらに多い、2万メガワットの電力が生産できるという。

 しかし、この計画は中国のNGOやメディア、国際環境団体などの猛烈な反発にあう。その結果、2004年2月、温家宝(中国国務院)総理は怒江の水力発電ダム建設計画をすべて中止し、綿密な環境影響評価を出すよう命令した。

 それにも関わらず、雲南省政府は依然としてダム建設を強力に推し進め、最近では当初の予定を縮小した4つのダム建設について話している。中国政府はこの新しい計画を承認したとされており、具体的な環境影響評価の内容は「国家機密」という理由で非公開のままだ。

 すでにマチ(Maji)、ヤビルオ(Yabiluo)、リウク(Liuku)、サイガ(Saige) の4つのダムについては、移住と地質調査が始まったという報道があり、世界遺産地域の内外で掘削や道路建設が進み、この地域の生態系に悪影響を及ぼしている。

生態系の破壊を招くダム建設

 ダムが建設されれば、三江併流地域の動植物に非常に深刻な悪影響が及ぶことが予想される。怒江の隣接する低地帯が水に浸かれば、多くの稀少な野生動植物の生息地が消えることになるだろう。魚類の生態系にも致命的な影響を与え、河川に生息する75種の魚類のおよそ1/3の生存が脅威にさらされる。

 世界遺産の隣接地域に大型ダムが作られるとなると、道路などの関連施設も建設されるだろう。これにより密猟者や違法伐採者はますます容易に世界遺産地域に入ることができ、この地域の生態的な統合性を脅かすはずだ。 建設作業により斜面の地域の土壌は流失し、川には堆積物が積もることとなる。

人々の移住と生計の破綻

 13のダムが建設されれば、5万人余りのわずかな少数民族は先祖代々暮らしてきた故郷を離れなければならない。彼らが守ってきた独特な生活様式や伝統は次第に消えていくだろう。移住先の高地帯の土地は川の周辺の渓谷ほど肥沃ではないため、暮らし向きは厳しくなることが予想される。

 世界遺産の近接地域では、生存のために薪や各種林産物の採取が進み、少ない資源をめぐって競争が増加していくだろう。これが地域の共同体と少数民族の間に敵対的な関係を招くという懸念もある。

 当局はダムが怒江地域に発展と現代化をもたらすと主張するが、中国での過去の事例を調べると、移住民は正当な補償を受けるどころか、新しく移住した地域での定着に失敗することも珍しくはない。

 さらに、下流のミャンマーとタイに住む数百万の人々は、漁業と農業を通じて怒江/サルウィン川に依存している。彼らは上流から運ばれてくる栄養物質を活用して農作物を育て、また、怒江の魚は重要な蛋白質の供給源であり、収入源となっている。ダム建設はこのような自然資源利用に致命的な脅威を招くであろう。

 おりしも7月8~16日にかけて、リトアニアの首都ビリニュスでユネスコ世界遺産委員会年次会合が開催される。そこで、新しい世界遺産の指定を審議し、既存の世界遺産の保全がうまくなされているか議論する予定だ。この席で中国の三江併流世界自然遺産地域のダム建設問題が提議され、それにより人類共有の資産が長く保全されることを願う。


険しい山岳地形の間を流れる怒江 ⓒ Wang Yongchen

三江併流世界自然遺産地域と怒江のダム建設計画 ⓒ International Rivers Network

子供たちはこれからも怒江で水浴びができるだろうか? ⓒ Wang Yongchen
記事執筆、翻訳
日付 2006-07-06
筆者 マ・ヨンウン (Ma Young-Un)
媒体 寄稿
団体名 環境運動連合
(KFEM)
URL http://kfem.or.kr/
翻訳者 朴 裕美

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